迷いを減らして、勇気を出して演奏できるコツ

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楽器を演奏するとき、音のイメージが明確だと、

・迷いが少なくなり
・勇気が出て
・余計な力は抜けてきて
・力強く正確に奏でる

そんな方向へと進んでいくことができます。

【音のイメージが身体の動きをスムーズにする】

音・音楽のイメージは、奏でたい音を奏でるために何をすべきかを身体に伝えています。このイメージを形成する作業と能力のことをソルフェージュといいます。

このイメージには、

聴覚的な音のイメージ
視覚的な演奏している自分自身や、聴衆、空間、音楽のストーリーに関するイメージ
身体感覚的な演奏をするイメージ
精神的な音楽そのもの意味や自分自身にとっての音楽の意味に関するイメージ

などが含まれています。

【シチュエーション、場面を選ぶ】

これらがより明確かつ豊かになる方法はないでしょうか?

あります!

それは、

音を奏でるシチュエーションを想像する

ことです。

奏でようとする音を、ただ音やリズムなどだけでイメージしようとするのでなく、その音を奏でるシチュエーションや場面にまつわるあらゆることに想像を膨らませていくのです。

・どこで演奏しますか?
・誰と演奏しますか?
・聴衆は誰ですか?何人くらいですか?
・どんなスタイルや雰囲気で奏でますか?
・どんな衣装ですか?
・どんな経緯で演奏していますか?
・どんな音楽の、どんな意味の、どんなキャラクターや性質を持つ音/フレーズですか?

こういうことに想像を広げていきます。

すると、そこには

-演奏のシチュエーションに関する視覚的イメージ
-音楽以外の音も含む聴覚的イメージ
-温度、湿度、空気感などのイメージ
-精神や感情のイメージ
-そのとき体験している身体の感覚
-会場、聴衆、演奏者、作品から流れ込むエネルギー

などたくさんのものが含まれています。

【イメージの力でやる気と集中力をアップ】

会場の雰囲気やざわめき、残響、ワクワクする緊張感や温かみ、集中力が高まった空気、作品が垣間見せる言葉にならない美しさや力。

そういう豊かなイメージが生まれてきます。

すると、その状況全体においてこれから奏でようとする音をイメージすると、ただ音だけをイメージしようとしたときに比べ、はるかに鮮明で、リアルで、あなたのオリジナルであなたにしっくりくる、やる気の湧く音のイメージになってきます。

そうすることで

・迷いが少なくなり
・勇気が出て
・余計な力は抜けてきて
・力強く正確に奏でる

ことができる方向 に進みます。

【あなたの想像力と創造性を檻から放とう】

こういった想像力、創造性、イメージ主導の練習をしようとすると、それまで培ってきた機械的、統制的でちょっと自分に対してスパルタな感じの練習の仕方との間で矛盾を感じるかもしれません。

たとえばわたしの場合、あるとき

・自分が(なぜか)ウィーンフィルの一員で
・オーケストラの中に座り
・びわ湖ホールに演奏旅行に来ていて
・スーツを着ている
・でも使っている楽器はウィンナーホルンではなく自分のアレキサンダー200周年記念モデル(マニアックなところですみません)

という想像をしながら音階練習をしたり、そのあとソロ曲の練習をしたりしていました。

すると、ウィーンフィルのホルンらしいサウンドのイメージをとてもリアルに具体的に自分の中に感じました。

そしてそれは、どうしてもホルンのF管を使って創造したくなりました。F管でないと表現しきれなかったからでしょう。その日は、全ての練習をF管で行いました。とても学び、気づき、手応えに満ちた楽しい時間でした。

【創造性を前提にした論理】

しかし、途中でこんなことを考え始めました。

「きょうはF管ばっかりで練習したるけれど….バランスが悪いんじゃないだろうか….巡り巡って下手になってしまわないだろうか….」

この思考は、ずっと以前、高校生のころに「Bb管もF管も均等に練習しよう」と考えたころのものでした。当時の自分なりの論理でした。

この昔の考え方が急に頭をもたげて、せっかくの

・クリエイティブで
・手応えがあり
・成果があり
・楽しい

練習のやり方に自信をを持てなくさせてしまったのです。

この昔の論理は、いま探求している創造性を基盤にした成長法とは相入れません。

なぜなら、当時組み立てた論理の前提が、

「うまくなるとは、ありとあらゆる技術的な練習を死にものぐるいでやり、そしてあらゆる欠点を直していくことだ」

という発想にあったからです。

ここで言いたいことは、均等にやることが良いとか悪いとかいうことではなく、どんな論理も、根っこに持っている哲学といいますか発想法によって決まってくるということです。

新しくやってみた練習方法は、過去の方法とその根っこの哲学・発想がぶつかり合っていました。

「うまくなるとは、ありとあらゆる技術的な練習を死にものぐるいでやり、そしてあらゆる欠点を直していくことだ」という哲学は、

・日本で育ち
・部活経験があり
・向上心がある

ひとであればかなりの割合で持っているのではないでしょうか。

この哲学が正しいのか間違っているのかをわたしが判断することはできません。

しかし、あなた自身やあなたの生徒さん、あるいは後輩などにとってより効果的で健康で、かつ楽しく充実する発想と練習方法は何か、を確かめることはできると思います。

ぜひ、音楽の練習や演奏に関しては、創造性や想像力を発想と哲学の基礎に置いたものを実践してみてください。そしてどんな変化、成長、気づき、疑問などが生まれるかメールやコメント欄などでぜひ教えてください。

Basil Kritzer

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迷いを減らして、勇気を出して演奏できるコツ」への4件のフィードバック

  1. こんにちは。高校でホルンを吹いています。
    私は約3週間後に本番を控えているのですが、どうも練習が上手くいきません。
    曲を演奏する上で正しい息遣いができていないから音が響かないし、発音が
    遅れて聞こえると言われました。
    いまさらこんなことができないのではもう手遅れだとも言われたので、本当に
    どうしたらいいか分かりません。
    どうか知恵をお貸しください。お願いします。

    • ななせさん

      この記事を読んで、あるいは他の記事を読んでみて、何か練習のやり方のモデルとして役立ちそうなものはありましたか?

  2. 音を出すときにいつも失敗することばかり考えて身体が硬直してしまうので、
    音のイメージを明確にして演奏しやすい状態にするということはとても参考に
    なりました。
    でも、合奏になるとそれができなくなってしまうんです。
    私たちのパートはいつも先生に「発音が遅い」「音が聞こえない」と
    言われるので、「今日も怒られるのかな・・・」と委縮して余計に吹けなく
    なってしまいます。
    他のパートの人に、「またホルンか」という目で見られているのも怖いです。

    合奏でそのように感じてしまうので、一人で練習しているときも
    音のイメージよりも周りの人がどう感じているかが気になってしまうんです。

    • なるほどー。

      合奏での状況、よくわかります。
      みーんな、ホルンのこと全然分かってないんですよね。
      ただtだ追い詰めてくるだけ。

      ちょっと突飛かもしれないけれど

      「こいつらは何もわかっていない。こんなの気にするのは損。好きなように練習して、好きなように合奏でも吹こう。何を言われても、心の中では無視!」

      と思いながら合奏を過ごすとどうなるでしょうか。

      わたしは高校生のとき、これに近いことをやって、そのときはすごく効果がありました。
      実際に、ホルンに対して言われていたことが全然ホルンのことを分かっていない、「嘘」にちかいものだからだと思います。

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