力みが抜ける「ワード」

きょうは、生徒さんの「力み」をどう扱うかということについてお話しします。

 

直裁的に「力を抜こう」と指導する場合がもちろん多いのですが、生徒によって、または状況によってはこれが逆効果の場合もあります。

 

結果として起きている力みをただ消そうとするだけでなく、そもそもなぜその力みが起きていて、どうしたらその力みが発生しなくてすむのかということも併せて考察します。

 

  • 力みが抜けるキーワード
  • 逆効果になる指導法
  • 身体の現実にマッチしたイメージ作り

 

どうぞお楽しみに。

 

 

 

 

【力みの問題】

 

音楽指導の現場では、「力み」という問題が常に大きな壁となって立ちはだかります。

 

楽器や身体がフルに響いてくれるためには、当然口先だけで適当に吹いたり歌ったりするだけでは全然鳴りません。

 

かといって、身体をガチガチに固めていては、音の響きが固くなったり音程が吊り上がっていく一方で美しいハーモニーがなかなか作れなかったりします。

 

身体を存分に使って、息もたっぷり使って、豊かな音で楽器を響かせてほしい。それを要求しようにも、「弱々しさ」と「ガチガチ」の両極に触触れてしまうー。

 

この事態をいかに回避するかということを今回は考察したいと思います。

 

 

 

 

【逆効果ワード】

 

 

力を出せない系

 

まず、弱々しい身体の動きを引き起こしやすく、実際のところなかなか演奏の改善につながりにくいワード。

 

・「リラックスして吹こう」

・「力まずに吹こう」

・「肩の力を抜いて吹こう」

 

これらは、望んでいる状態を直接言い表す言葉です。

 

ですが、そこに至るための「ツール」としては効き目がなく逆効果やずれた効果になるケースが多いようです。

 

つまり、「そんなの、リラックスできるもんなら最初からしているよ!」ということになってしまうのです。

 

 

力みすぎてガチガチになる系

 

次に、「力み」や「ガチガチ」につながりやすいワード。

 

・「しっかり吹こう」

・「体を安定させて」

・「ぶれないように」

・「無駄な動きはやめて」

・「ちゃんと吹こう」

・「外さないように:

・「ずれないように」

・「高く(低く)なり過ぎないように」

・「速くならないように、遅れないように」

・「もっと鳴らせ」

・「頑張らんかい」

・「根性見せろ」

 

これらは、身体の固定を想起・示唆するワードや、身体の運動とは相性の悪い否定形のワードであり、「ガチガチ」にさせやすいワードです。

 

 

 

 

【身体と言葉の調和】

 

では、ダイナミックで良い意味での力感があり、でも決して無理矢理やガチガチでもない、そんな目指したい状態につながりやすいワードはどうやって選択できるでしょうか?

 

それは結局、

 

「身体の現実にマッチした奏法・やり方を的確に言い表したワードを使用する」

 

ということになるように思えます。

 

 

もっと音量が欲しいとき、何と言いましょう?

 

 

もっと出せ?

リラックスして大きい音出せ?

しっかり吸ってしっかり吐け?

 

 

どれもあまり効果が無さそうですよね….

 

 

 

 

【力まずでも力強く演奏できるワード】

 

私が提案するのは、

 

「吐くときにお腹の力を積極的に使ってみよう」

 

という言い方です。

 

 

管楽器や歌の場合、音量は100%、吐く息の量で決まります。ですから、音量がもっと欲しい場合は、吐くことを担当する「お腹」を「もっと使ってみよう」と促すとよいのです。

 

これは具体的な指示であり、実際に音を大きくする仕組みにマッチします。すると、音の出し方が身体的・技術的に効率的になりますから、大きく吹いても無理な力みをせずとも良いで出しやすくなるのです。

 

 

 

 

【ガチガチにならずに pp を演奏するには】

 

もっと静かな音が欲しいときは?

 

ついつい

 

「抑えろ!」

「出過ぎずに!」

「極力静かに!」

「シーッ!」

 

と言いたくなります。

 

 

でもこれは反射的に身体を縮めたくなるワードです。ずいぶん演奏を妨げてしまいます。

 

 

では、音量を減らすにはどうすればいいのか?管楽器や歌の場合は、実際に息の量を減らすのです。

 

 

しかし、ここで一工夫挟むとよいでしょう。

 

息を減らす、ということは、お腹で使う力も「大きい音」に比べて少なくてすみます。なので、この「力が少なくて済む」ところに着目しましょう。

 

 

一度大きい音を吹いてもらって、お腹の力を「使う」ことを体験させたあと、「その力をもっと少なめに使ってごらん」と言ってあげるのです。

 

こうすれば、お腹の力を使うんだという意識は継続したまま、「力を減らす」ことも指示できていますから、必要な支えや力はちゃんと使いつつも、必要な「リラックス」もできるわけです。

 

 

 

 

【要求を実現する方法まで責任を持って伝える】

 

このように、地道かつ回りくどい指示にも思えますが、要求していることが「実際に起きる仕組み」に沿って具体的に言ってあげると、教えてもらっている側は、「目的に至る手段」を実行しますから、直接目的を達成しようとして過度に緩んだり、ガチガチになったりせずに、より的確に実行できる可能性が高まります。

 

 

まずは、お試しアレ!

 

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力みが抜ける「ワード」」への2件のフィードバック

  1. 言葉って本当にむずかしいですね。でも今日の内容は今までのもやもやが吹っ飛んで行くような内容です。ありがとうございます。

  2. 阿部真美さん

    言葉は、身体や感情に比べれば、進化の中でとても新しい機能。その割にわたしたちはコミュニケーションの多くを言葉によって為します。それ故の齟齬や難しさがあるのかもしれませんね。

    でも、自分の使っている「言葉」を客観的に「聴く」と、もっともっとシンプルで的確で、「為になる」言葉を使えるようになる気がします。

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