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合唱や合奏などにおいて、指導者ができるちょっとした心遣いで、
・演奏者の健康や
・集中力、
・健全な唱法・奏法
に寄与することができます。
そのひとつが、
演奏者が歌っていない時/奏でていない時や、数小節以上の休みがあるときは
手に持っている譜面や楽器を『置く』ように促す
ことです。
【譜面や楽器を支えるエネルギーは甘く見れない!】
譜面や楽器を持ち上げ、支えるのにはエネルギーが必要です。
譜面や楽器を持ち上げて構えると、心身が「演奏モード」になります。
この「演奏モード」に入っていると、これ まで積み重ね訓練して来た演奏のための心身のセッティングにスイッチが入ります。
演奏モードは、休まるものではありません。かなりアクティブで集中している状態です。これが続くと、疲れます。また、演奏モードの真っ最中に意識を変えたり新しいことをやろうとするのもなかなか難しいものです。
そこで、機会を見つけては、指導者の方から「譜面(楽器)を置いていいよ」と合唱・合奏のメンバーに声をかけてあげるとよいでしょう。
テンポの速い曲の、短い休符や2〜3小節だけの休みではさすがに難しいですが、
・数小節間の休みを利用して
・しばらく出番が無いとき
・他のパートに指示・指導中
といった演奏していない時間を利用して、「演奏モード」スイッチをOFFにする ように工夫するとよいでしょう。
いちばん簡単でまず最初にやるといいのが、前述の通り譜面や楽器を横に下ろして、演奏の構えをなるべく解くことです。
【まめに休むと、想像以上に効果的!】
歌ったり演奏したりしなくていい場面や時間でも、演奏者たちは思いのほか「演奏モード」になっていてエネルギーを消費しています。
ですから、指導者の側からこまめに、譜面や楽器を置いて演奏モードを解除するよう働きかければ、その総和として、想像以上に「休んで」いられる時間があるのです。
「楽器を置いて休んでね」
「この5小節間は休みだから、楽器を持ち上げずに膝に置いて待ってみて」
「ここからここまで、トランペットパートは音符が無いから、一回演奏モードをOFFにしよう」
というように促してあげると、演奏者はたいていその通りにしてくれます。
これが演奏者に休息とリフレッシュの機会をこまめに供給することになり、体力面でも集中力の面でも持続性が増すでしょう。
そうすれば、「いざ」という箇所や、「このフレーズこそは」という場所でエネルギーを発揮して迫力あるサウンドを作ることが出来ます。
【姿勢の無理や崩れの予防にもつながる】
とくに中学生高校生にとっては、楽器はまだまだ「重い」ものです。
未完成でアンバランスな身体で長時間、楽器を支えさせるのには、根性や気合いでは決して乗り越えられない構造的な無理があります。
そのため、時間が経つにつれて、姿勢が崩れたり、突っ張ったりして痛みや疲れを覚えます。
これを「避ける」ことが指導者の力量でかなりできるのではないでしょうか。
【演奏モードの解除が新しい変化を生み出す】
もう一点、「演奏モードのスイッチOFF」にすることの効果があります。
一度OFFにすることで、再度ONするときに、なにか新しい変化が生まれやすくなります。
「可能性の隙間」を作れのです。
たとえば、
・3回連続で同じ音を外してしまった
・どうしても指がこんがらがってしまう
・どうしてもタンギングが転んでしまう
というときに、譜面や楽器を膝に置いて、演奏モードをいったんOFFにしてみると、そのあともう一度演奏 したときに
・音がちゃんと当たる
・指がちゃんと回る
・テンポや音型値がすっきりハマる
といった良い変化が起きる場面が増えてくるでしょう。
こまかく指示したり、叱責したりしなくても、ただ「OFF」の時間をこまめに増やすだけで解決・改善されていくことが想像以上にあるものなのです。
ぜひ、試してみてください。
Basil Kritzer
演奏モードをOFFにするという言い回しはとても良いですね。そういう状態に陥ったときの上手い言い方って難しいなあって思っていましたが、素晴らしいですね。ありがとうございます。
阿部真美さん
これ、実はドイツで習っていた Renee Allen 先生の考え方なんです (^^)/