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高校生のホルン吹き Nさん より質問をいただきました。
【Nさん】
はじめまして。
私のホルンの悩みを理解してアドバイスをしてもらえる方が誰もいないので、質問させてください。
私は、高校の音楽科でホルンを専攻している高校3年生です。
毎日の練習、週1回のレッスンを3年間続けていますが、今だに苦しくて音が出ません。
鼻から息が漏れて、無理をして音を出しています。なので、曲も吹けません。
試験を前にして、(音が出ないので)曲が吹けない焦りと、この3年間は何だったのだろう?と思うと悲しくてしょうがありません。高校に入る前の6年間は、楽しんで曲を吹けていました。(基礎はなっていなかったかもしれませんが)
どうしたら、鼻から息が漏れず、無理をしないで自然に吹けるでしょうか?
もし、何らかのアドバイスをいただけたら助かります。
【バジル】
鼻から息が抜けるんですね。
病気のようなもの(口や鼻の息の通り道の調節をする筋肉がうまくはたらいてくれない)だとしたら治療が必要ですが、
もし勘違いやちょっとした技術的なことであるとしたら、以下のエクササイズを使っていくと効果があるかもしれません。
エクササイズ候補A
① 息を多めに吸って
② ほっぺを膨らませるような感じで強く吐きます
③ すぐに口を閉じます
④ 口を閉じながら吐く力をONに続けていると、顔が赤くなるような感じで圧力が溜まってきます。
⑤ そのとき鼻抜けを起こさずに吐くことができています。
⑥ ホルンを吹くときにその感覚を思い出してください(思っているより、パワーを使うものだ、というのがポイントかもしれません)
エクササイズB
① 「んがー」という発音で、柔らかい静かな声で、長〜く声のロングトーンをします。
② 声をとにかく長く伸ばせるだけ伸ばします。
③ 苦しくなって首や上半身をかがめたり曲げたりせず、ずっと前を見ていてください。
④ そうするとお腹や下腹部、脇腹、みぞおちなどが強くはたらきます。
⑤ このとき、鼻抜けしていなければ、鼻抜けせずに息を吐く(=音を鳴らす)ことができています。
⑥ その感覚でホルンを吹いてみてください。
どちらも共通しているのは、強く息を吐く(ホルンはそうです)ときの感覚はある種「いきむ」感覚に近いことです。
なお、もしそれでのどに負担を感じれば、
・強い力につられて首や上半身を縮めない
・前を見続けることを意識する
・息は口の天井の硬いエリアに向かってはくことを意識する
ようにしてみてください。
試してみて、またどうだったか教えてください。
【Nさん】
アドバイスありがとうございました!
エクササイズA,B両方試してみました。
のどには負担は感じませんでした。
また、鼻から息は漏れませんでした。
その感覚で、ホルンを吹いたら、前ほど鼻から息は漏れないようです。音を出すのが随分楽になりました。
でも、曲を吹くと、まだ、前の無理な吹き方になってしまいます。
エクササイズAを続けて少しずつ曲を吹くようにしています。
【バジル】
すばらしいです。その調子で続けていけば、曲でももっと続くようになっていくでしょう。
❇︎追記2015.8.31❇︎
鼻咽腔閉鎖不全という、病理学的に定義された機能障害があるということを最近知りました。
原因や程度により、機能訓練、言語聴覚士による治療、装具、手術などで治療が行われます。
この記事で紹介したエクササイズは、後で知ったのですが、治療で用いられる訓練とポイントが似ているとある方から教えていただきました。
この記事の方は幸い、病的な状況ではなかったからこのように文字のやりとりで自分でやってみてすぐ改善が始まったのでしょう。
しかし、中にはちゃんとした医学的治療を受けることが早道の方がいらっしゃるはず。気になったらぜひ、医師の診察を受けてください。
中学校で外部指導員をしております、ソウケマモルと申します。
バジル先生の動画を見て、これは使えると思い実践して効果を実感している毎日です。
さて話は変わります。今回はブレスについて質問がありましてコメントさせていただきます。
以前どこかのレッスンで腹式と胸式の呼吸を合わせた呼吸法をチューバ奏者の方から教えていただきました。方法としては腹式で吸いきってその後胸式で息を吸うというものです。お腹が膨らんで凹むような形で吸います。
この吸い方は結果的にはかなり多くのブレスが吸えるのですが、本当に楽器を吹く上で有効なのか知りたいです。メリットデメリット、行う上での注意点など考察可能であればコメントいただきたいです。
よろしくお願いします。
総毛さま
こんにちは。
どんな吸い方をしようが、息が入るのは肺以外になく、また肺はお腹ではなく胸部にあるという認識は大切だと思います。
そうしますと、腹式/胸式という区分は、「どこに息が入るか」ではなく、「肋骨にどのエリアが、どの程度、どのようなタイミングで動かされるか」
により変化する動きの見た目にあてはめた区分が実態であることがわかります。
息を吸うとき、肋骨の下部の動きが優位的だとお腹が膨むような見た目になることが多いのだと思います。
反対に、肋骨の中部〜上部の動きが優位的だと、胸の動きが印象として目立つため「胸式呼吸」と言われるのだと思います。
それらがコントロール可能、選択可能、組み合わせ可能であるというところが、着目したいところです。
つまり、胸式呼吸と呼ばれているものであれ腹式呼吸と呼ばれているものであれ、どちらも肺に空気を入れる「吸気」の動きですから、
どちらかが悪いということにするのも、どちらかだけしかやらないようにするのも、「もったいない」のです。
どちらも可能なので、どちらも場面やフレーズの要請や趣味・完成、個人的な特性や身体的条件にあわせて使っていきたいものです。
このように考えますと、おっしゃっている吸い方は、「肋骨を最大限に動かして目一杯吸っている」吸い方だと思います。
チューバ奏者はこれが必要になる場面が多いでしょうね。
目一杯吸いたい時に、目一杯吸うことに躊躇したくありませんし、よりたくさん吸う能力を拡大していくことを目指すならば
おっしゃっているような吸い方はその過程として適切だと思います。
つまりは「全式呼吸」なのです。
注意点としては、「いつも全式呼吸でなければいけない」という強制や押し付け、選択の幅を狭めるようなことにならないようにする、
ということだと思います。
目一杯を最善とし、少ししか吸わずに吹くことを悪とする、そういう優劣や善悪の軸にあてはめていかないことです。
腹式/胸式が、本来どちらも自然で人体の動きのグラデーションに連続している(分割的でない)ものであるのに分割して扱われ、つづいて
それに優劣善悪が付加されたことで呼吸法の考え方や教授法は不幸にも混乱したものになっていますから、「目一杯/少し」に関してもそうなって
しまわないようにしたいですね。
こんばんわ。
高校一年でトランペットをやっている者です。
同じような疑問があり、質問させて頂きました。
僕もこの頃、鼻から息が出るようになり、このサイトに出会いました。
このエクササイズをやったときには、鼻から息が漏れませんでしたが、
楽器を吹いた時にはどこの音域でも鼻から息が漏れます。
病院にいった方が宜しいでしょうか。
はい、念のため行った方がよいと思います。
Basil
ピンバック: なぜ、支えてくれるひとたちの応援がプレッシャーになって緊張してしまうの? | バジル・クリッツァーのブログ
こんにちは!長文になります。
「鼻抜け」について調べていたら、このサイトに辿りついたのでコメントさせていただきます。
私は現在、高校2年生でクラリネットを吹いています。クラリネット歴は、中学校1年生から始めているので、約5年です。
実は私も、Nさんのように、楽器を吹いていると息が鼻から抜けていくという現象が起こり、いつも困っていました。その鼻抜けが起こるようになったのは、私が中学校2年生の時からです。誰に相談しても理解されなかったので、Nさんの気持ちがよくわかります。この気持ちは、なった人しかわからないんだと思います。
病院にも、鼻抜けになってからすぐに行ったことがあります。その時は、耳鼻科に行きました。レントゲン検査もしてもらいましたが、
「健康な鼻だね、問題ないよ」
と褒められて終わりです。
でも、このサイトで「鼻咽腔閉鎖不全」という病気があることを知ったので、もしかしたらこれかもしれないと思えて、今は気が少し楽になりました。
その病気か知るために、もう1度病院に行ってみようと思います。
行くとしたら、何科に行けばいいですか?やっぱり耳鼻科でしょうか?それとも、大学病院とかの大きな病院の方に行ったほうがいいのでしょうか?
回答よろしくお願いします。
ミヒャエルさん
コメントありがとうございます。
本来は、何科に行っても、その科のお医者さんが適切な科を紹介するのがお医者さんや病院の役割です。
「鼻咽腔閉鎖不全」という名前を出しても知らない、取り合ってくれない感じなら、また別のお医者さんや病院を訪ねてみるといいかなと思います。
ひとまずは耳鼻科だと思います。
理想的には、家に近い、ちゃんと長期的に話を聞いて、様子を見てくれる町医者の先生ですね。
ダメなら大きな病院、なのかもしれません。
Basil
返信が早くてびっくりしました(笑)
回答ありがとうございます!
まずは、もう1度耳鼻科に行ってみようと思います。