無力感

きょうホルンの練習をしていて、「無力感」というものに改めて触れました。

いま、新しい曲を練習しています。

それで、まだどうにもうまくできない箇所があるのです。

そこだけを抜粋して演奏するぶんにはだいぶできるようになってきました。しかし、通しだとまだできないのです。

この箇所が近づいてくると、怖さ、焦り、無力感が忍び寄ってくるような感じがします。

そして、その箇所の直前には正直、

「これはできないな….」

という予感のような、絶望感のようなものが、その箇所を音楽的、技術的にどうやって演奏しようかというプランや意図を喰ってしまいます。

身体的には、パワーがなくなるような感じ。たどり着く余力がもう無いな….という感覚です。マウスピースや指が滑るような感覚もあります。

「ああ….もう無理だ….」という無力感です。

この無力感、きょうははっきりと感じ取ったわけですが、そういえば本番であがってダメになるとき、根っこには同じ感覚があるな、と思いました。

無力感に抗ってガチガチになるときと、無力感に呑まれて虚脱してしまうときと。両方とも、結果は非常に辛く悲しいものになります。

この無力感には、心理的なこと(過去の体験も含めて)も、技術的・身体的な何事かも両方絡んでいる「何か」だろう、という気はしています。

だから、メンタルなアプローチだけでも、練習だけでも、どちらか一方だけでどうにかできることじゃないと思います。

きょう、自分にとって気づきだったのは、無力感を練習の段階から頻繁に感じているんだな、ということです。

いままでは、本番だけだと思っていた。

あるいは、普段はそれを感じたら見ないように、感じないように、無視したり覆い隠したり抗ったりすることが当たり前だったみたいです。

けど、実際にはちゃんと、普段から経験していること。

そして、そういえば新しい曲に取り組み始めているときは、過去にも似た様な状態になっていたな、と気づきました。

これまで3ヶ月ほど取り組んでいた曲も、はじめはそういえば何箇所かできない箇所があって、チャレンジするたびにダメで、無力感に呑まれていました。

しかし、曲に慣れ、できない箇所の音楽的・技術的な道筋が明確になってきて、そこを演奏可能にする技術的能力を獲得するにつれて、その箇所を通るときの感覚はだんだん変わっていったのでした。

無力感がやがて「怖さ」に変わり、でも怖さのわりには意外とうまくいく。

つぎは「怖さ」が、ほんとうに自分はできているんだろうか、という「疑い」に変わる。

疑いながらも成功体験が重なるにつれて、その箇所は「できる」「みせどころ」に感じられるようになってきて、むしろ他の箇所のほうが練習が必要に感じられてくる。

そういう、「無力感→怖さ→疑い→できる」という変遷があったように思います。

そうすると、いま取り組み始めた曲の、うまくいかない箇所もきっと変わっていくだろう。

そう思い直すことが、気持ちの立て直しにはとっても重要ですね。

「無力感→怖さ→疑い→できる」という変遷ですが、できなくなっていくときはもしかしたら逆向きなのかな?

と書いていてふと思いました。どうなのかはまだわかりませんが、興味深いところです。

無力感、つらいものです。

楽器やめたくなります。

自分がやる意味がわからなくなります。

でも、無力感を感じても、次の日に楽器を練習することはやりたい。それは確かです。

そして、無力感を感じた数日後には、何か上達や成長が必ずいつものようにあって、そういうときは喜びを感じます。

無力感を感じた曲や、フレーズや、状況も、さらに何度か経験/チャレンジしているうちに、必ずよい変化やブレイクスルーがみえてくるのです。

無力感を感じても、そこで歩みを止めるようなことではなく、また良いことが必ずある、ってこと。

そして自分は明日も続けるぞ、ってこと。

それが無力感という現象と長い年月向き合ってきて、もうはっきりしていることです。

今回もまたひとつ、明らかになりました。

ブログでは読めない話もたくさん!ぜひメルマガをGET♪

レッスンの申込や出張依頼などについては、こちら!

無力感」への7件のフィードバック

  1. こんにちは!今回の記事をみて、無力感はすごく感じていることなのでそれについて理解することができました。

    ですが、ここで一つ質問です。
    曲のある部分ができない時の無力感が今回の内容でしたが、では、基礎練や初歩的なロングトーンなどの曲ではない時に無力感を感じている人はどうすれば良いのでしょうか?

    私は今高校3年で、引退前に部活に負けてやめてしまったので、こんなことを質問するのは野暮かもしれませんが、よろしければ返答が頂けるとありがたいです。

    • 上原さま

      あまりにも難しいことや、現実的にはあり得難いこと、いまの自分にとって高いレベルのことを

      なかば

      『クリアすべき』
      『クリアできて当たり前』
      『できないのはおかしい』

      と思っていると、基礎練習やロングトーンでも無力感や焦りに苦しめられるでしょうね。

      心当たりありますか?

      • 返答ありがとうございます!

        メルマガでもそうですが的確すぎて怖いですw

        とてもあります。曲ならまだしも基礎練なので毎日積み重ねているものなのに一向に出来ない。でも基礎だから出来ないと曲が出来ない。だから基礎ばっかりやって曲が進まない。でも出来ない…

        たかがロングトーンもまともに出来ないのかとすごく落胆する毎日でした。
        どんどん後輩が上手くなり抜かされ、さらに焦りが増加し後輩と上手くいかず辞めたって感じなんですね。

        では当時の自分はどうすればよかったのでしょうか…

        • まず、

          「基礎が出来ないと曲が出来ない」というのは必ずしも本当ではないのです。

          1:まず曲に取り組み
          2:その曲において難しい箇所を取り出し
          3:その箇所を基礎「的」なパーツやパターンに還元し
          3:還元された「型」にいろんなバリエーションを加えて練習し
          4:少しづつ元のフレーズへとかたちを戻していき
          5:曲をクリアしていく

          というやり方の中で「基礎練」ができます。

          これをしていると、

          ・端からみるとロングトーンをしているように見えても、本人は曲の具体的な箇所の練習としてやっている
          ・端からみていると基礎的な練習をまったくしていないように見えても、本人は「曲形式の基礎練」を行っている

          ということがあり得るわけです。

          追記:これも参照してください。
          http://basilkritzer.jp/archives/3780.html

  2. なるほど、無意識のうちにやったことがありますね。これを現役の時に知っていれば….

    とてもすっきりしました!本当にありがとうございます。

上原史哉 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です