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ステージの上ほど、安全な場所はない!
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【なぜ、ステージ上で身体を固めてしまうのか?】
そもそもなぜ、私たちはステージ上で全身を硬くさせてしまうのでしょう?
これは自分を守る反射的な防御反応であると見られていますが、それにしたって難病でもない限り「勝手に」起きたりはしません。
防御反応を誘発しているのは、自分自身なのです。
【危険を感じさせているのは自分自身】
防御しているということは、つまり何かを「危険」として認識しているからに他なりません。
危険に対して、わたしたちを含む生き物は
・逃げる/闘うべく力をがむしゃらに出す
・動きを止める(=身体を硬くする)
・息を止める(=身体を硬くする)
というようなことをやります。
【ステージは危ない場所か?】
私たちは音楽を演奏するときや舞台に立った時、さらには人間関係においても上に挙げたようなことを頻繁にやっています。
少し冷静に考えてみましょう。
わたしたちは本当にそんな反応をするだけの「危険」に接しているのでしょうか?
いいえ。
理性的に考えれば舞台の上ほど、これから何が起るかほぼ予測出来る安全で守られた場所もなかなかありません。
少なくとも街を歩いているときよりよっぽど安全です。誰かに教われる心配なんてまずありません。
それなのに、私たちはさも大きな危険にさらさているかのごとく、身体を硬くします。
それはなぜでしょう?
【身体を硬くしているのは誰?】
「身体が硬くなっている」ではなく、「身体を硬くしている」と考えてみましょう。
自分の身体を硬くしている自分がそこにいます。その「硬くする」という身体の動きを作っているのは何ですか?
そう、あなた自身なのです。
あなたが思考や認識が、緊張と硬さを生み出しているかもしれないのです。それは意識的であるときも無意識的であることもあるでしょう。
あなたが思っていること、考えていること、感じていること。
あなたの心が身体が硬くなるような緊張を生み出している麺があるとすれば、むしろその方が、ステージ上で身体が硬くなってうまくいかないという悩みに は突破口が見えてきそうではありませんか?
ついつい、「身体が言う事を聞かない」と感じがち、思いがちです。しかし、もしかしたらあなたが思っている以上に、「身体はあなたの言う事を全て逐一その通りにやっている」かもしれません。
もちろん、なんらかの生理学的、病理学的な原因があって、あなたの意志に反して身体が硬くなったり震えてコントロールが効かないということもあります。
ですから、お医者さんに相談したり、助けを得ることも、決して厭わないでくださいね。
【あたりまえになっていることこそ、見直そう】
自分では当たり前になってしまっている何らかの思考のどこかに、身体を緊張させるメッセージが含まれているかもしれません。
それは表面的なレベルでは「身体についての思い込み」のことがあります。
本来、関節のない場所から無理矢理動かそうとしていたり、本来はカーブがある背中を「まっすぐ伸ばさなきゃ」と思っていたり。
あるいは、いまの技術や能力ではできないことを「出来ねばならない」と考えて強迫的にやろうとするのも身体を硬くさせます。
【自己否定は必ずやめよう】
さらに深層の内面においては、自己否定が緊張を生みます。
「こんな自分ではダメだ」
「自分は下手くそと思われているにちがいない」
「これが出来ないのは、いけないことだ」
etc….
そういった思考は、心身一体である自分という存在に、存在してはならないというメッセージを送っているに等しいのです。
現実に存在しているのに、存在してはダメだというメッセージを受け取ると、それは現実に逆らっていることに他なりません。
身体についての間違った思い込みが身体を硬くさせぎこちなくさせたのと同じように、現実とずれたメッセージは心身一体の自分、身体にも感情にも大きな負荷をかけます。
【プロ演奏家も苦しむ自己否定】
わたしのレッスン経験の中でも、何度か次のような場面がありました。
すでに音大や芸大で学び、楽器の先生やプレイヤーとして立派に活動している人たちが、頭のどこかで
「こんな自分ではプロに値しない」
というような思っている事があるのです。
学生時代にまだ先輩のレベルや激しい競争について行けなかった頃の自分の「想い」がまだ習慣化して残っているかのように。
そんな人たちにBodyChanceにレッスンにいらっしゃると、身体的なことやテクニカルなことに関するレッスンの成果があって、緊張がゆるんで演奏が改善しても、ふとした拍子にまた硬くなってしまうことがあります。
それは、緊張を起こす『思考』が変わっていないからです。
そんなケースでは、本人とひとつひとつ確認していきました。
・大学に入学したときよりうまくなっているか?
・大学を卒業したときよりうまくなっているか?
・なんだかんだ言って、ある程度練習時間や楽器に触る時間を取れているか?
・フェアに見て、同僚や後輩には自分はどう見えているか?
そうやって現実を確認してみると、「自分がプロに値しない」というような「想い」の方こそ現実とずれているのです。
だから、緊張したり、どうにも解消されない不快な問題が続いたりするのです。
現実をひとつひとつ確認していくと、
現実はあなたもあなた自身に対して自信を持ってよいはずだということ、あなたの有り様を肯定してよいはずだということ
が必ず見えてきます。
その現実に触れて、思考が変わった時、緊張は消えて行くのです。
Basil Kritzer
私は中学から吹奏楽でホルンを吹いてきました。21歳の時、仕事に就くまでずっと吹いていました。アマチュアのバンドに入っていましたが、仕事で忙しく、何度も中断。そして結婚。十数年もブランクが開いてしまいました。そして現在46歳、ホルン再開。しかし五線譜から上の音が出なくなってしまいました。所属バンドは全国大会に行くほどの実力のあるバンド。自分は何の役にも立たない、ステージに立てば吹き真似ばかり。ホルンのここぞというときに音は出ない。そのうち自信を無くし、今ではチュウーニングでもビビッて合わなくなってしまいました。そこで私はもう、ホルンはやっていかれないと退団することを考えました。でも本当は昔みたいに吹きたい。
佐藤様
吹き真似は、辛いですね。
わたしも中学か高校の時にありました。落ち込みますね。
Basil