一昨日、第20回浜松国際管楽器アカデミーにて、『管楽器のためのアレクサンダー・テクニーク』と題した講座を行いました。
わたしもずっと前から当然のように存在を知っている、この浜松国際管楽器アカデミーで講師としてレッスンをすることができたのは、よくよく考えてみればちょっと夢のような貴重な機会でした。
講座は2時間半だったのですが、6名のアカデミー受講生へのレッスンを、130名ほどの聴講者の前で、マスタークラス形式で行う、というものでした。
130人….
あの有名なアカデミーで….
すごい先生たちが来ているなかで….
ほかにもいろんなひとが来ているかも…..
辛口のひとがいたらどうしよう…..
考えてきた筋書きがすっ飛んで頭が真っ白になったらどうしよう….
不安をかき立てる妄想を刺激する材料は十分に揃っておりました(笑)
実際、前日から、「明日、浜松だなあ」と思うと、身体がゾワッとしました。
全身の筋肉がすこし締め付けられて、感覚が無くなるかのような感触がありました。
当日の移動中は、胃の調子がちょっと変になりました。
会場についてからしばらくは、セッティングを手伝ってくれている関係者の顔を見て挨拶するのも忘れてしまいました 笑(みなさますみません)。
始まる直前は、身体がふわふわして、いわゆる地に足が着かない感じ。重心がひたすら上がってくる感じでした。
しかし、そういうさまざまな身体的な変化、感情的な経験や非日常な感覚に支配されながらも、どこかで
「まあでも大丈夫」
と思っていられました。
実際、いまの自分の年齢と経験、力量からすると、講座はとてもうまくいきました。
これはひとえに、自分がアレクサンダーテクニーク教師になるために 養成学校である BodyChance で受けてきた教育のおかげです。
BodyChance のアレクサンダーテクニーク教師養成コースでは、はじめて公式に「教える」ことを経験する前に、それが成功体験になる可能性が限りなく高まるように教育してくれているのです。
クラスで教える練習をするのですが、教え方の諸側面のどこかひとつの要素でも、間違えそうになったり、パニックになりそうになったら、そこでクラスを受け持っている先生が訓練生を優しく止めて、そこまでの過程を確認し、理解させるのです。
その日のクラスはその止められたところまでで、「教える」ことの練習は終わりになることもしばしばです。それが、次のチャレンジのときには、同じ失敗はほとんど起きないし、次へと成長できるようにさせてくれるのです。
また、クラスでは多数のクラスメイトがいる中で、「教える」ことをやってみます。
ですから、最初から大人数が見て、聴いて、参加してくれている状況「込み」で、「教える」ことを学び、経験し、身につけていきます。
(BodyChance 音楽専門アレクサンダーテクニーク教師養成コースに関してはこちら)
わたしは、音大に進学した一番の理由が、
「楽器を教えるひとになりたい」
というものでしたので、小さいことから「教える」ことそのもに関心が向いていたというアドバンテージは多少はあるかと思います。
しかし、アレクサンダーテクニーク教師としての「本番」も、ホルン奏者としての「本番」も、経験する緊張や、身体に起きることは全く一緒なのです。
にも関わらず、アレクサンダーテクニーク教師としての自分と、ホルン奏者としての自分は、本番の強さや、本番という状況下における自分自身への信頼があまりにも対照的なのです。
そのちがいは、ひとえに
・アレクサンダーテクニーク教師になるために受けてきた「教育」とその「環境」
・ホルン奏者になっていくために受けてきた「教育」とその「環境」
の質のちがいにあると今は考えています。
自分というひとりの人間なのに、しかもどちらも「パフォーマンス」なのに、アレクサンダーテクニークを教えるという行為と、ホルンを演奏するという行為とでは、こうも自分の本番に対してのスキルや信頼がちがっているのは、自分でも不思議です。
だから、うまくいっている側面が、うまくいっているその理由や経緯を理解して、それを少しづつホルン奏者としての自分に還元し、ホルン奏者としての自分自身を「再教育」しています。
ゆっくりではありますが、確実に役に立っています。またホルン奏者の自分の「再教育」が少し進むと、アレクサンダーテクニーク教師としての自分のスキルに関してはもっと大きな進歩につながります。
だから、浜松に行く日も、帰ってきた日も、ホルンの練習は欠かしていません。自分にとってはどちらも大切で、支え合い高め合うものだからです。
浜松での講座が、6人の受講生にも、130人の聴講者の方々にも、役立ち、音楽をさらに素晴らしいものにする力となっていれば本望です。
そして、きょうから引き続き、音楽に貢献することを通じて世界に貢献するアレクサンダーテクニーク教師としての仕事を力一杯やっていきたいと思っています。
浜松国際管楽器アカデミー関係者のみなさま、受講生、聴講者のみなさま、ありがとうございました。いつもレッスンやブログで関わって下さっているみなさま、ありがとうございます。