『息を吹き込もう』とするより、もっと効率のよい方法

先週出席したアレクサンダーテクニーク教師養成プロコースの授業で出て来たはなしが、管楽器演奏にとても役立つことだったので自分なりにまとめてみます。

それは

『自分でやること』と『結果的に起きる事』の区別の重要性。

身体は、脳に「やれ」と言われたことをやります。つまり「思っている通りに」動こうとします。筋肉を使って。

楽器を吹くということは、身体の動作があって始めて実現する行為です。

楽器を持ち上げる然り。アンブシュアを作って息を吐いて音を出す然り。フィンガリングももちろん然り。

これらはいずれも、身体が動く=筋肉が能動的に働いて起きる事。

その動きの元は、脳からの指令です。

「動こう(息を吐こう/楽器を持ち上げよう)」と思うこと=身体への指令です。

そうして起きた動きの結果として、音が鳴ったりキーを動かしたりできます。

ここで重要なのは

「身体がやること」と「結果的に起きる事」は同じでない

ということ。

具体的な例では、「楽器に息を吹き込む」という意識。

実はこれ、脳と身体の動きの関係で言うと、ロスを生む意識の仕方です。

なぜなら、息は勝手に楽器に入っていくのであって、自分で入れるものではないから

息を吐いていれば必ず楽器に入っていくものを、わざわざ入れようとしても特に効果はありません。

どういうことか。

息は腹筋と骨盤底を主とする胴体の筋肉により、気管を通って上へ押し上げられます。

そして、最終的には硬口蓋(口の天井の硬い部分)に当たって前へ進みます。口の形状が、息を必ず前へ方向転換させる構造になっています。

a-711.jpg
教育用画像素材集より

だから、「息を楽器に吹き込もう」という意識は、気をつけていないと関係のない力仕事を生んで演奏の邪魔をしかねません。

・頭を前や下に突き出す
・みぞおちまたは腰のあたりから胴体を曲げる

という無駄で邪魔な動きを生み出すときが多いのです。

前者は、首の筋肉をたくさん使い、息が通る場所に圧力を加えたり不安定にしたりします。後者は、息を絞り出す主要なエンジンである腹筋や骨盤底のはたらきを邪魔します。

構造が必然的にやってくれることを「自分でやろう」とすると、土台無理だから身体は混乱してとりあえず力もうとします。

もちろん、演奏にプラスではありません。

これは「息を吹き込もう」という意識自体が問題なのではなく、結果的に起きることを自分の力だ能動的にやろうとしているというミスマッチが問題なのです。

おそらく「息を吹き込もう」という意識は、「息を吐く」ことをしっかり意識するためのものなのです。

身体は、現実にマッチした指令を送られた方がよりよく機能します。

ですので、この場合

自分でやること=腹筋と骨盤底を能動的に使って息を上に押し上げる
結果的に起きること=息が気管を流れ上がり、口の形状に沿って前へ流れ出ていく

と明確に区別してイメージするとよいでしょう。

もし、「息を吐こう」という意識が何らかの力みを生んでいたとしたら、こういうイメージが役に立つかもしれません。ダーツをするとき、もちろん的はよく見て狙います。そしてダーツが辿る軌道もイメージしておくとよいのでしょう。そして後は腕を振って投げます。

この作業の中で、「自分が筋肉を使って」やることは腕を振ることだけです。その他を「頑張って」やろうとしても何にもできませんよね。

辿る軌道と最終的に的に当たるかどうかは、自分の投げ方で全て決まっています。

管楽器演奏で同じように考えてみると

的=音
軌道=気管/口の中の形状/アンブシュアで作られている経路
腕の振り=息を押し上げる胴体の筋肉

となりますね。

「楽器に吹き込む」こと自体には力はいらないのです。

奏法や吹き方を色々研究し、テクニックを磨いていく過程で、「自分が能動的にやること」と「結果的に起きること」を明確に判別していくことは、効率よい理想的な奏法を作り上げていくことにとても+にはたらくでしょう。

どんな教則本を見ても書いていない上達のヒントは「いま自分がどう考え、イメージしているか」にたくさん隠れています。

この区別をできそうなことをどんどんピックアップしてみましょう。そしてもし、自分が混同していたところが見つかったら、結果的に起きることはもう除外しちゃって「自分のやること」に基づいたもっと純粋な指令を出してみましょう。

きっと、意外な効果的と手応えが得られるでしょう!

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『息を吹き込もう』とするより、もっと効率のよい方法」への2件のフィードバック

  1. 15年ぶりにトロンボーンを始めました。どうやるとトロンボーンの音が出るのか⁈
    始めから知りたいです。

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