キャシー・マデン先生との学び備忘録 その3:唇と共鳴の関係

3:唇と共鳴の関係

キャシー・マデン先生から学んだことの中で印象深く、かつ役立っている話があります。

それは「唇」の使い方。
これは全ての管楽器に基本的には共通する話です。

金管なら唇を閉じ合わせることが、音を出す為のアンブシュア形成の大事な要件です。

木管は、唇でリードを挟む事。
金管は唇自体を振動させますが、木管はリードが振動するように、
唇でリードの振動できる状態をコントロールしています。

どちらも、唇を互いに近づけることと、そして息の出て行く方向をコントロールしています。

この「互いに近づける」方法は多種多様です。
顔面のさまざまな筋肉をさまざまなバランスで使う事ができ、
無限の選択肢があります。

しかし、音を出す事そして音をより豊かに響かせることに適した構造的なやり方もあります。

それは、鼻腔空間の共鳴 ( Resonance )や頬骨、頭骨などの骨の振動を得ることです。唇やその周辺で実際にリードやマウスピースそして楽器が振動していますから、それに近い身体の部位も振動が伝わります。

この際、唇が横や後ろに引かれる傾向があると、これは唇と週周辺の顔面の筋肉や組織が骨に強く貼り付き、これによりその周辺の骨の振動が止められる傾向があります。そうすると鼻腔も共鳴しにくくなる。

管楽器は、響けば響くほど、吹き易くラクで、コントロールが容易になり、音程も合わせ易いです。

私たちは、この唇?鼻?頬?頭あたりのせっかくの振動をカットし響きをうしないがちです。

反対にこのあたりの振動と響きが起り易いのは、唇が前に息の出て行く方向に沿う様に動き、結果的に前の方で唇が重なるあるいはリードを挟むような動きでやることです。

これは、アンブシュア全体でやろうとするより、もっと局所的で繊細な動きと考えて下さい。

唇の先の方、唇の赤い部分での動きと思うとよいでしょう。
(実際には、他の筋肉も連動するでしょうが)

よくある正しい/悪いアンブシュア論で思ってしまうと、アンブシュアの支え方や使い方をまるっきり「変えよう」としてしまって、「アンブシュアの作り直し」「フォームのやり直し」的に捉えられてしまいます。

それよりは、もっと繊細で微妙なものです。どんな楽器のどんなアンブシュアの人でも、ちょっと意図的に考えながら唇を前方向に動かすようにすればいいのです。

きっと音がよく響き、体感的にも吹き易く感じるでしょう。

ここで大事なのは、唇の横や後ろにひきつける傾向が出たとしても、直接的にコントロールしようとしないこと。

アンブシュアや唇の何らかの動きを「させないように」コントロールしても、うまくいきません。必ず身体が硬くなります。

ひきつける傾向は、頭の動きや腕の動き、呼吸に置ける胴体の全体的な力の使い方、心理状態と結びついています。全体的なコンテクストがあるのです。

だから、唇の結果的な動きだけ「直そう」と思わなくて大丈夫です。
代わりに、「唇を息の方向に沿って前へ繊細に重ね合わせる/閉じる」というようなプランを意図的に練習してみましょう。

繊細さが大事です。

唇はとても敏感で鋭敏で高性能な身体の部位です。
精密なものですから、そういうものこそ、考え方の段階から繊細にあるいは優しくやっていくことが役立つでしょう。

まとめ
自分の頭が繊細に動き、全身が協調して動き、
能動的に骨盤底から息を押し上げ、腹筋を働かせで胴体を絞り、
横隔膜が押し上げられ、肺の空気が押上げられ、
少し前方に角度のついている気管を空気が力強く流れ、
硬口蓋まで送られ、硬口蓋に当たって口の天井に沿って前へ流れ、
その方向に沿ってデリケ―トに前へ閉じ合わされた唇の間を流れ出ていく

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キャシー・マデン先生との学び備忘録 その3:唇と共鳴の関係」への1件のフィードバック

  1. キャシー・マデン先生との学び備忘録 ?その2:息は仕事である etc?

    キャシー・マデン先生との6回のアレクサンダー・テクニーク&ホルンレッスンで学んだことの備忘録。 2:息は仕事であること。 いつの間にか忘れていました。 管楽器では、(あるいは歌や俳優・声優など専門的技能的に「呼吸」を使う活動で)、 息を吐くということは、本当に一仕事なんです。 ときには大量の、ときには強い圧力で、 意図したとおりの継続時間で吐く。 望みどおりに音が出るように唇を後ろから動かすコントロールも必要。 息は、硬口蓋にあたって前に出ます。 (これはすなわち、「息は上に」と意識するのです。前に行くのは結果だから、前に下に吹き込もうとすると、余計な力みになります。上に送ろうとする力が必要なのです。参考記事:「空気は上へ行く」) だから息をそこまでしっかりと能動的に力を使って押し上げる必要があるんです。 前回も書きましたが、胴体の一番底である骨盤底から息を上へ押し上げる力が働いています。 (参考記事:キャシー・マデン先生との学び備忘録 ?その1:骨盤底?) むしろ、「働かせる」と言ったほうがいいのかもしれません。 私は「空気は上へ行く」と思っているうちに、使いたい力を使わず別の力みで代用しがちになっていました。 だから、 「息を力を使って能動的に上へ送る」 単純に言うと、 「骨盤の底からしっかり押し上げる」 と考えたほうが私にはよかったのが分かりました。 アレクサンダー・テクニークは、「脱力法」ではありません。 でも結果的にすっごくラクになる場合は多いです。 それは、 アレクサンダーテクニークが、管楽器演奏で使うべき力を使うための理解と方法を得るメソッドだからです。 息を吐くとき、 骨盤底を能動的に働かせ、腹筋群(詳細:『息の支えの秘密』へ)をしっかり使うと、内臓が押し戻され横隔膜が押し上げられます。 そのおかげで、肺の空気が力強く気管を流れ、口内部の上側の硬いところ「硬口蓋」にぶつかり、口の天井を沿って前へ流れ出ていく。 そのとき、喉やベロの能動的な力は、息のパワーという点では必要ありません。 (タンギングや口腔内の形状操作には能動的にベロを使います。) 最後に前へ流れ出ていく息の方向に沿って、唇自体は前方向へ互いに動き閉じ合わされます。 その3:「唇と共鳴の関係」へつづく Basil Kritzer ホルン&金管トレーナー。 BodyThinking認定コーチ Thin…

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