中学生の指導と、高校生の指導。その微妙だけれど大事なちがい

学校吹奏楽部の部員たちの演奏をサポートし、指導するにあたって、中学生と高校とで指導にあたってやり方を変えるとよいであろうことは何でしょか?

わたしが指導するなかでいちばん明確に感じるちがいは、

中学生がそんなに自分の音に対して客観的な評価を加えようとあまりしていない
のに対し、
高校生は楽器の経験が高校からでもかなり客観的かつ辛口の評価を自分の音に対して下している

ということです。

わたしは指導する際、このちがいを認識するようにしています。それにより、指導のなかで強調するポイントが変わってくるからです。

ある言い方をすれば、

・中学生に対しては、その中学生本人にとって有意義でさえあれば、即座の結果が出なくても指導者として気にしない

のに対し、

・高校生に関しては、あるアプローチやアイデアを提案する際、その効果が本人が実感できるかたちでポジティブにその場で現れるように気を配る

ということです。

もちろん、中学生/高校生 という区分は大変大雑把なものです。個人々々を見て行けば、前者に当てはまる高校生もいますし、後者にあてはまる中学生もいます。

しかしながら、総体的にはそういった傾向のちがいがあると分かっていれば、あらかじめ異なる教え方や臨み方を準備できますから、実際に指導を行う際にスムーズになります。

この傾向のちがいを別の言葉で表現すると、

中学生:実感、体験をしてもらうこと
高校生:理屈を理解してもらい、結果を得てもらうこと

とも言えます。

指導者としてこうやって対象に即した目標にしておくと、コミュニケーションが図りやすく、また教えたことが定着しやすくなります。

この傾向のちがいから生まれる、指導者に求められるチャレンジとしては

中学生を指導するとき:

どんなに精巧な理屈を述べても、そして音にその結果が現れていることが指導者としては感じられても、中学生たち本人が明確に

「なんだか吹きやすくなった!」
「いままで揃わなかったことがバッチリ揃った!」
「いままでよりとても音が良くなった!」

と感じていなければ、教えたことはなかなか定着しません。

そのため、指導者としては、

「正しさ」

を追究するより、

「どうすれば目の前のこの中学生が、本人の実感として変化を感じられるか」

という問いを自分自身に投げかけながら教えることが大変役立つでしょう。

また、中学生にはお題目はあまり通じません。

ですから、言葉や理論で教えるより、

・身振り手振り
・ゲーム形式
・擬音

を活用することが有効です。

ある意味、直接感覚にはたらきかけるわけです。

なぜ、良くなるか/悪くなるか」

より

どうすれば、良くなるか/悪くなるか」

を直接的に教えてあげるのがよいでしょう。

これをするには、教えたいことを簡潔・明快・実用的な「形式」に整理していくことが、指導者として求められるわけです。

高校生を指導するとき:

高校生を指導する際は、中学生とは対照的に、「理屈を分かってもらう」ことの重要性が高まります。

ただし、理屈だけではなかなか受け入れてくれません。その理論に基づいて何かをした場合、実際に「良くなる」という効果があることを信頼してもらう必要がありますから、効果があることをデモンストレーションしていくことも大事になります。

「いいから言う通りにやってみろ」

が通じないのが高校生です。

同時に、

「理論はこうだ」

だけでも信用してくれないのが高校生です。

なかなか手強いですね(笑)

しかしこれは、彼ら/彼女らが、大人である証拠です。つまり、高校生の指導のポイントは、身体や精神はまだ未成熟であっても、知性や意志の面では大人同様に向き合う必要があるということです。

大人であれば、納得すれば実践します。高校生はそういう面があります。

つまり大事なのは、実感以上に「納得」なのです。

効果があると分かっていても、別の先生に言われたことや、これまでの自分のやり方と矛盾するアイデアであると、なかなかすんなりとは取り入れてくれないことがあります。

ですので、本人が主体的に「これなら納得できる」と思えて、自らの意志で指導者であるあなたの提案を実践してくれるように持って行きたいわけです。

そのための「手段」が

・理論
・効果
・実感

ということになります。

中学生の場合は「実感」が大きなポイントになるのに対し、高校生の場合は「実感」もまた、本人の主体的な成長のための「ツール」として位置づけられるのです。

これは裏を返せば、「納得」にさえ至れば、実感がまだ伴わなくても、高校生ならばしばらくあなたのアドバイスを実践してみてくれることを意味します。

まさにそこが大人であることの良さなのです。

*便宜上、中学生/高校生という区分をしていますが、当然のこととして実際のひとりひとりにより発達段階が異なります。この区分が該当しないように思える場合、その区分を外して、目の前の子供がどのような段階にあるかで考えていただければ幸いです。

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