インナー・スコアカード〜内なる成績表〜

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きょうは、自己評価と自己肯定について書いてみたいと思います。

まず、提案したいのが「インナー・スコアカード」に基準を置くという事。

「インナー・スコアカード」というのは、
自分で自分を評価するときの基準を、自分で自分のために決めるということです。

まずその反対の「アウター・スコアカード」がどんなものかというと、
要は、「他人にどう思われるかで自分の価値を決める」ということです。

これを楽器との関係でみると、

「コンサートで音を外す」
→「人に下手と思われるからダメ」「人に下手と思われたくないから練習」

とか

他人にウマいと誉められる
→舞い上がる

他人に辛口批評される
→落ち込む

というパターンです。

ほとんど普通にあることだし、むしろ一般的で支配的ですらあるかもしれません。

でも、このアウター・スコアカードは、自分のためになりませんよ、ホンマ。

優れた音楽家は一様に、コンサートで全力を尽くします。
しかしそれは他人の評価を得るためだと思いますか?
違います。

音楽を最大限に良いものにすること、誠実に音楽に向き合いベストを尽くすことを「自分の使命」と捉えているから、全力を何十年も尽くし続けます。

米大リーグの松井秀喜選手やイチロー選手の試合後のコメントを見聞きしてもよく分かります。

松井選手は満塁ホームランを打っても、チームが勝たなければそれほど喜びませんし、
逆にチームが勝っても自分が活躍しても自分のバッティングやプレー内容が満足いかなければやはり喜びません。

松井選手が「チームの勝利を目的とし、自分のベストを尽くす」ことを自己評価の基準しているからです。

これは揺るぎない「インナー・スコアカード」です。

イチロー選手は、チームがどれだけ低迷しようと、毎打席ひたすらヒットを打とうと集中し、どれだけ点差が開いても素晴らしい守備のプレーを見せます。5打数5安打しても、10試合ノーヒットでも、試合後の会見では一喜一憂せず、毎日同じ時間にグランドに出て自分で考えたエクササイズや練習をします。

これもやはり、

「自分のベストを尽くす」という厳格な「インアー・スコアカード」

です。

自分自身の価値、存在意義を決めるのは他人の評価ではなく、
自分が自分の価値観で自分に対して評価に基づくのです。

他人の評価で自分が浮き沈みするのでは、地に足が着いていません。
他人に思われる事を理由に自分の行動を選択していては、それは自分の人生ではありません。
他人に支配されています。

長期間に亘る地道な取り組みを支え、大きな実を結ぶまでの努力を継続させてくれるのは、
「インナー・スコアカード」です。

自分が自分の価値観と責任に基づいて努力するのです。
他人が何と思おうが、何を言われようが、何が起ころうとも、飽くなき努力を重ねられるのです。

他人を振り向かせようとしていては、本当に意味ある実を結ぶための努力をやるモチベーションは得られません。

これを読んでいるあなたは、

「これをやれば自分で自分を認めてあげれる」

というものは、何か思い浮かびますか?

私には、二つあります。

「体力と時間のあるときは、毎日必ず、楽しくそして誠実に、クリエイティブにホルンの練習をする」

そして

「コンサートのときは、どんな結果になろうとも、それまでの準備がどんなものであろうとも、きれいな心で聴衆を迎えて、前向きに演奏しよう」

ということです。

ひとつめは大学1年目を終えた夏休みの間、アンブシュアの変更もあってまったくうまく吹けなくなり、
なかなか思ったように能力の育て直しが進まず劣等感に苛まれていた時期にみつけた「自分の存在意義」です。

これを見つけてからは、どれだけ物事がうまくいかなくても、どれだけ本番でひどい失敗をしても、どれだけ「あいつはもう吹けない」という目を向けられても、心の芯では負けずに練習と成長をゆっくりと続けられるようになりました。

これが「自分の存在意義」なのだから、他人になんと思われようとも関係なくなるのです。
だから、感情的には色々あっても、結局それほど苦なく練習に向かえるのです。
モチベーションが途切れないのです。

そのおかげで、成長が止まりません。
そうするうちに、だんだんと周りからの評価ももらえるようになります。
もちろん嬉しいですが、それで舞い上がることはありません。
「自分のためにやっているから」です。

二つ目は、演奏の仕事をするようになった頃から段々はっきりしてきたものです。

わたしが演奏するのは、自分が演奏したいから。だから、なるべく心を清らかにする。

そうすると、コンサートでの直接の結果や他人の評価/批評はそれほど気にならなくなります。

もちろん、感情的には、意識の表層ではすごく気になるしついつい誉められること、良く思われることを求めてしまいます。

ですが、どれだけうまくいかなくても、次のコンサートで手を抜いたりはしません。他人の評価は自分の「インナー・スコアカード」と関係ないからです。だから、やるもやらないも自分で決められます。自分なりの全力を尽くしたかどうかも、感情に左右されずに把握できます。

みなさんはどうでしょうか?

「インナー・スコアカード」を見つけると、自分に自信が出ますし、同時に厳しくもなれます。

自分の価値を自分で損ねたくなる人はどこにもいませんから。

なんとなく、自分に甘くて嫌な気分になる、そんな感じを経験する事が多いうちは、おそらく他人の評価を自分の行動や採点の基準にしすぎている面があるでしょう。

「インナー・スコアカード」が定まれば、興味深いことに、結果にこだわらずして結果がひとりでについてくるようになります。結果に振り回されなくなるからです。

コメントや感想、みなさん自身の「インナー・スコアカード」の例をお待ちしています。

Basil Kritzer

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インナー・スコアカード〜内なる成績表〜」への1件のフィードバック

  1. くまさんのインナー・スコアカード
    こんにちは
    私はエレキギターやベースを弾くので…
    こんな風に考えてみました。

    ①毎日、身体や心をご機嫌の流れの中におき、自分に集中し、曲になる喜びを感じて練習する。
    ②ライブの時は、そこにいる全ての人とつくられる音楽にワクワクして自分を解放する。

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