身体に通じる言葉をえらぼう

音楽演奏の「基礎」は、

①やりたいことを決めて
②そのやりたいことをやるために
③頭を動けるようにしてあげて
④そうすることで身体全体を動けるようにしてあげて
⑤やりたいことをやる

ということになります。

(もちろんこれだけでは意味がよく分からないこともあるでしょうから、より詳しくはこちら→アレクサンダーテクニークの使い方

さて、きょうの本題は、「身体に通じる言葉」。

なぜ、「頭を動けるようにしてあげようと」思った方が、力を抜こうとしたり筋肉を緩めようとするよりうまくいくのでしょうか?

それは、一見ピンとこないこの言い回しが、実は身体にはより的確に通じるからです。

それを実感できるゲームをしてみましょう。

まず、利き手じゃない方の手を強く握りしめてください。

グーッと、強く強く。

さあ、この時点で手は

・指が丸まりこんで動けなくなっている
・強く力が入っている

ことと思います。

この手の状態を変えるためには、どんな言葉を使うのが有効か探っていきましょう。

【パターン1:手を開こうとする】

手が握りしめられ指が丸まっている状態に着目して、それを「なんとかしよう」という発想を試してみます。

「手を開こう」としてください。

さて、どうなりますか?

おそらく….

・握りしめる力に逆らって、手を開こうとしたぶん、もっと力が入った
・手はラクになるどころか、もっと大変になった

と思います。

このことから、身体の見た目の形に着目して、それを「力ずくで修正」しようとするような考え方は身体をもっと力ませ大変にさせてしまうだけだということが分かります。

このやり方、意外なことにあなたも普段よく使っているかもしれません。

・猫背をむりやり背スジを伸ばす事で直そうとしていませんか?

・楽器を吹いていてアンブシュアが緩んだり頬がふくらんでしまうとき、口元を動かないように押さえつけにかかっていませんか?

・息がたくさん吸えない気がしているときや、吸えていないと指摘されたとき、とにかく力ずくでもっと吸い込もうとしていませんか?

いずれのケースも、うまくいきませんね!

【パターン2:手の力を抜こうとする】

手に力が入っていることに着目して、直接的に「その力を抜こう」という発想を試してみます。

「手の力を抜いてリラックスさせよう」としてください。

さて、どうなりますか?

おそらく….

・力が抜けるまで少し時間がかかった
・手や手首に、疲れや痛みのようなものがずっと残る感じがする
・手をぶらぶら振ったり動かしたりした

と思います。

このことから、感じている力みに着目して、直接的に「その力を抜こう」とするような考え方は、実際のところどれくらい効き目があるか分かりにくいことが分かります。いちいちぶらぶらさせたりほぐしたりと、作業が増えてしまいますね。

このやり方、きっと普段からよく使おうとしているのではないでしょうか。

・肩に力みを感じたら、肩を回したり下ろしたりするけれど、すぐまた力んでしまいませんか?

・音を鳴らすときに力みを感じるから、力を抜いて吹こうとすると、今度は高い音や大きい音を演奏しようとするとどう演奏したらいいか分からない感じがしてうまくいかないことが多く有りませんか?

・息を吸うときに力んでいる感じがして、力を抜こうとすると、こんどは全然吸い足りない感じがして困ってしまいませんか?

いずれのケースも、うまくいきませんね!

【パターン3:手や指を動けるようにしてあげる】

手や指が固まって動けなくなっているのに着目します。

「手や指を固めるのをやめて、動けるようにしてあげよう」と思ってください。

さて、どうなりますか?

おそらく….

・瞬時に力みが抜ける
・変な力みや痛みが残らない
・すぐにでも手や指を動かせる感じがする

と思います。

このことから、身体について考えたり、身体になにかやってほしいときは、身体の動きを考えたり思い浮かべたりすると分かります

力みを抜きたいときは、「動けるようにしてあげよう」と思うのがいちばんうまく通じるのです。

というのも力みは

・やろうとしていることに対して力を入れ過ぎている
・やろうとしていることに対して力を入れなさ過ぎている

そのどちらの場合も起きます。

やろうとしていることに対して力を入れ過ぎている場合、「動かそう」としたり「形や見た目を変えよう」とするともっと力んでしまいます。

やろうとしていることに対して力を入れなさ過ぎの場合は、「力を抜こう」とするともっと力んでしまいます。

したがって、

「動けるようにしてあげよう」

と思うことが、いちばん身体に通じやすいのです。

ぜひ、試してみてくださいね!

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身体に通じる言葉をえらぼう」への4件のフィードバック

  1. バジル先生こんにちは。

    ATを学びだして1年ちょっと、おかげさまで体の不快感もほぼ無くなり、また使える音域も去年と比べて上下合わして4音位広がりました。
    本当にありがとうございます。

    今日はまた新たな質問です。
    リップトリルなのですが、一般的な練習法としては、ゆっくりなテンポから徐々にあげていく、「ド~レ~ドレ~ドレド~レ~」みたいな感じで音を増やしていく、などのやり方がありますが、どうも自分の体にピンと来ません。

    何か良いアイデアはないでしょうか?
    ご教授の程宜しくお願い致します。

    • だぁ!! さま

      こんにちは。

      ロンドンの超一流フリーランスホルン奏者で、実はアレクサンダーテクニーク教師の資格も持っている、Pip Eastop という方がいます。

      2005年、わたしはその方に習うために2日間イギリスへ行きました。

      その方が仰ったのは、ホルンの演奏技術は突き詰めると

      1:発音
      2:跳躍
      3:リップトリル

      という3つの異なる技術のみから成り立つと仰っていました。

      その考え方では、リップトリルというのは、別個の「特殊」な技術ということになるわけです。

      そうすると、ゆっくりやるのは実質リップスラー(跳躍)ですから、リップトリルにはつながってこない、という考え方もできるのです。

      Eastop さんが言っていたのは

      「リップトリルはいきなり目標速度からやり始めなさい」

      ということでした。

      つまり、

      できる速度から上げていくのではなく、最初から速い速度で取り組み、はじめはリップトリルにならなくてもいいから段々、もしくはあるとき急にリップトリルができるようになる、と。

      ここからはわたしの観察ですが、リップトリルを目標速度でやってみようとするとき、

      1:かなりキツイ、強めのタンギングで発音する(そうしても汚くは聴こえないので大丈夫)
      2:普段より口は強めに閉じる
      3:頭や楽器がとくにはじめは動いたり揺れてもいい(それでもうまくできれば、段々と動きが集約・洗練されていきます)

      というこを意識するとよいでしょう。

      参考になれば幸いです。

  2. アマチュアクラリネット吹きです。いつも興味深く拝読しております。
     楽団メンバーから「体に余計な力がかかっているみたい」と指摘され、それを何とかしようとしてバジルさんの別記事「力みとは、必要なところの力が足りない場合も起こる」→「必要なのはお腹の力(違う表現だったかもしれません)」という考え方を適用してみたら、かえって肩や首に力が入るようでした。
     たまたま楽に吹けたとき、体の各部分は自由に動いていました。そこで「動くべき場所、動いてはいけない場所などはない。体全体が演奏に参加していい」と考えると、とても楽に気持ちよく吹けました。自分の体に通じる言葉を発見できたかもしれないです。
     最初のときは、団員に指摘された自分の「悪い」部分を「改善」するためにブログの情報を使って体に「ここは動け」「ここは動くな」と命令していたみたいです。同じ言葉でも本人の使用動機によって体への働き方がぜんぜん違うようですね。

    • yukaさま

      なるほど!

      つまり実は「あそく動くな、ここ動くな」という命令を実質的にはしていたわけですね。

      それが、「どこでも動いて良い。どうぞ動いてね!」と言ってあげれるようになったことで、身体が本来できることをやりだし、すごく助けてくれるようになったわけですね。

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