演奏するとき、体のことに首をつっこむと調子が悪くなる

きょうは、わたしが尊敬しているアレクサンダー・テクニークの恩師、キャシー・マデン先生のレッスンから。

キャシーさんがどの場合も大事にしていたのが、やっていることの「目的」。

アレクサンダー・テクニークのレッスンでは楽器演奏や歌唱以外にも、日常の体の使い方も扱いますが、日常の動きにおいてもその目的が、教える側にとって大切です。

レッスンにおいて、

「歩く」ことを題材に質問している人には「どこへ向かうのか」。
「発声」に関する質問を持って来た人には「歌や声で何を伝えたいのか」。
「お箸の使い方」を見てもらいに来た人には、「お箸で何をつまみ、どこへ持っていくのか」。

をよくよく意識させていたのが印象的でした。

「目的」が重要な理由は、人間を含む動物は目的に向かって方向性を持って動きが組織されるから

動物は獲物を見つけたら、「足をどれぐらい動かすか」なんて考えませんよね(笑)
獲物を見据え、その動きに視線を合わせ、あとは獲物に向かっていきます。
「獲物に向かう」という目標がはっきりしていて、自然に走ったり跳んだりするわけです。

人間も同じで、「あちらへ行こう」という意志に従って身体が動きます。
その目的・目標がはっきりすればするほど、そこへ至るために必要な身体の動きは形成されやすくなります。

逆に言うと、「あっちへ行こうか、こっちへ行こうか」と迷いながら歩いたり走ったりしていると、バラバラな動きに段々なってくるのです。動きの向かい先が定まらないから、違う方向に同時に行こうとして動きに葛藤が起きる。

わたしにとっては、自分が演奏しているホルンでもこれはかなり重要なポイントのようです。

ホルンを吹くときに、「出したい音のイメージを」持たずに呼吸法やアンブシュアをコントロールしようとしても、あまり意味がないようです。

なぜなら、身体は「やろうと意図していること」を実現すべく動きを用意します。

それならホルンという楽器の機能である「音」の意図があいまいだと、身体は何をしたらいいのかよく分からず効率的な動きが形成されません。

目的と指令が明確であればあるほど、身体はスムーズに動ける。
つまり、ホルンの演奏技術の質も良くなるということです。
ホルンを演奏しているのは身体だから。

その身体がやることを指令しているのが、意識。

でも直接「おい脚、あれやれ」「おい唇、これやれ」と直接指令しているのではなく、

「こういう音をこんな感じで出したいので、よろしくお願いします」

と「お任せ」する感じでしょうか。

このことを僕はアレクサンダーテクニークを本格的に学び始めた大学3年目まで知らず、よく「正しいアンブシュア」を作ろうとして唇を引っ張ったりすぼめたりしたり、「正しい呼吸」をしようとしてお腹を突き出したり胸を押し上げたりしようとして、全く成果なしに終わり調子が悪くなるだけ、ということを繰り返していました。

「身体をコントロール」しようとして音を出すときに「音」のことを充分に考えていなかったのだから、いまとなっては当たり前に思えるんですけどね。

実験としてやってみると面白いことがあります。静かな場所に行って、すこし身体をリラックスさせます。そして、

①「普段のよう楽器を演奏しているところを思い浮かべる」

このときに、身体の感じが何か変わるか、呼吸や唇に動きやさっきまでとは別の感覚が生まれてくるかどうか観察してみます。指も動こうとする感じが出てくるかもしれません。

これは、「考えていること」を身体が行なおうとしている証です。

②「理想的な音で理想的に音楽を奏でている様子を思い浮かべる」

どんな感じがしてきますか?
きっと、さっきとは異なる感じがするでしょう。

それは、「考えていること」が変わったから、それをやるべく身体が色々と用意を始めているのです。

「理想」を「実現する実際の動き」が作られようとするまさにその動きです。

「身体の動き」は直接コントロールするのは大変です。
たいてい、力んでうまくいきません。

でも、「考えていること」を変えるのは簡単です。
だって、別のことを考えれば良いのだから。

練習しているときに大事なのは、「考えること」を何度も繰り返し新しく選択するところにあるのかもしれませんね。

Basil Kritzer

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