学生指揮がもっと楽しくなる方法

吹奏楽部で部活動をしながら、チューニングや基礎合奏の指揮を担当する学生の方々の悩みに接することがときどきあります。

「どうみんなをまとめたら良いかがわからない」
「どう言ったら音程がよくなるかわからない」
「どう言ったらリズムや縦が合うかわからない」

といったことが代表的な悩みです。

そういう悩みを抱える方々のために、試してみるとうまくいくかもしれないアイデアをいくつか提案します。

【指摘をやめてみる】

みんなの前に立っていると、バンドの音がよく聴こえます。

そうすると、音程が合っていないところや、縦がずれているところが、次々と耳に飛び込んできます。

そこでわたしたちはどうしても、

「音程がずれているので、合わせて下さい」
「縦がずれているので、揃えて下さい」

と、どこがダメだったかを「指摘」してしまいます。

しかし、ただ「指摘」するだけでは、正直言うとほとんど何の役にも立ちません。

指摘された側は、

・音程や縦が合っていないことを、大抵気付いています。
・仮に気付いていない場合、ただ指摘されても、その「修正方法」はさっぱり分かりません。

なので、気付いていてもいなくても、「ダメだったところを指摘される」だけでは、

「こっちだって合わせたいんだけれどうまくできないんだよ!」と内心イライラするするか、「なんでうまくいかないんだろう、いつも同じ事を指摘されてしまうなあ….」と自信を失ってしまうか、そのどちらかになってしまいます。

これでは、バンドのやる気と力をむしろ削いでしまいますね。

そこで、よりよいバンド指揮の第一歩は、「指摘をするのはやめてみる」ということです。

では、指摘する代わりに何をしたらいいのでしょうか?

【バンドで演奏しているメンバー自身のアイデアや意見を募る】

ついつい指摘してしまうのは、指摘をしている自分自身が、「どうやったらもっと良くなるかイマイチ分からないから」という面が少なからずありますね。

なので、「指摘をやめる」ということにしてしまうと、それこそ何を言っていいか分からずちょっと怖く感じるかもしれません。

しかし、助けてくれる仲間が目の前にいっぱいいます。

バンドの中で演奏しているひとたち自身にご登場願えばいいのです。

たとえば音程がずれているなあ、というとき。

もちろん、なんとかしたい。でも、「音程を合わせて下さい」と言えば合うかというと、もちろん事はそう単純ではありません。

そこであなたが「解決方法」を教えてあげれればベストなのですが、はじめはなかなかアイデアが浮かばないでしょう。自分自身でもきっと、音程を合わせたいのにうまく合わないがどうすればいいか分からなく困っていることもあるはずです。

そういうときは、指揮をしているあなたが、みんなに尋ねれば良いのです。

「ここが音程が合わないんだけれど、どうしたら良くなると思いますか?」

…….たぶん最初はみんな無反応でしょう。でもそこでめげるのはもったいない。

「わたしもよく音程がずれてしまって、どうしたらいいか分からないことがあります。誰か、良いアイデアがあるひとはいますか?いれば教えて下さい。」

これでもまだ、みんな遠慮して何も言ってくれないかもしれません。実際のところ、誰にも分からないのかもしれないですね。そういうときは、

「ここの音程が合う方法が見つかれば、もっともっと良い演奏ができるようになりますね。いまはどうしたらいいか分からないけれど、これからも引き続きみんなで考えていきましょう!」

という感じで「前向き」な言葉で終えると、みんなやる気になります。言っている自分自身も、やる気になります。

前に立って指揮しているあなたがこういう前向き雰囲気と言葉でみんなの意見を募れば、その姿勢は間もなくみんなに伝わっていきます。そのうち、みんなが自分の意見やアイデアを言ってくれることでしょう。

そうやって段々と、先輩後輩関係なく、「もっと良い演奏をするためのアイデア」をお互いに出し合っていくことがバンドの「当たり前」の風景になれば、一緒に演奏することがすごく楽しくなり、チームワークが良くなってきます。

誰かが実際に意見やアイデアを出してくれたら、

「ありがとうございます。ではいま〜さんが言ってくれたことをみんな意識してもう一度吹いてみましょう!」

と「実験」に移しましょう。

その実験がうまくいけば、

「すごい!これはいいアイデアですね!これはぜひみんなで覚えておきましょう」

もしうまくいかなければ、

「残念ながら今回はこのアイデアはフィットしなかったみたいですが、きっと何かの場面で役立つと思います。みなさん、〜さんのアイデアが役立ちそうな時があったら、積極的に発言して下さい」

というように、どんなアイデアや意見にも「やってみる」価値があることをバンドの「常識」にしましょう。

なかなか解決しない問題や困難を乗り越えるうえでいちばん大切なのは、色々新しいことを試してみることです。

バンドのみんなで演奏する事の強みは、ひとの数だけそれぞれの意見やアイデアがあり、実験材料が豊富にあることです。

なので、メンバーの意見やアイデアを「実験してみる」ことが当たり前のバンドになっていけば、どんな難しい問題でも、ほかのバンドよりはるかに速いスピードで乗り越えていけることでしょう。

しかも、バンドのメンバーそれぞれの力のおかげなので、指揮をするあなたは、とってもラクなのです!

【常に良いところを探す】

チューニングや合奏を指揮しているとき、あなた自身がみんなの音や演奏の「良いところ」を常に探していることがとても大切です。

たとえば、トランペットのソロを木管セクションが伴奏しているような箇所を練習しているとしましょう。

そこで、トランペットがミスをしたとします。

そのとき、どんなアクションを起こすのが指揮をしている側として上策なのでしょうか?

わたしは次のように考えます。

ベスト:伴奏組の演奏の良さを見つけ、それを口に出して褒めて、もういちどやってみる。
次点:とくに何も言わずに先に進める。
イマイチ:トランペットに対しアドバイスを与えて、もういちどやってみる
ワースト:トランペットのミスを指摘して、もういちどやってみる

トランペットを吹いているそのひとは、自分がミスしたことぐらい、当然分かっています。それにソロはすごくプレッシャーがかかっています。なので、「ミスがあったからもう一回やらせる」というのは、余計にプレッシャーをかけるだけで、そのときその場での本当の改善はあまり期待できません。

もちろん、二回目はもっと正確に慎重に演奏した結果「ミス」は回避するかもしれまでんが、そのときの吹き方は緊張したものになっています。これでは「改善」や「成長」にはなっておらず、むしろ萎縮させてしまいます。

なので、「ミスしたからもう一度やる」よりは、「何も言わずに先に進める」方がマシなのです。それぐらい、「ミスを指摘する」のは有益なことより害が多いと思います。

しかし、「何もしない」のがベストではありません。

いちばん良いのは、「伴奏組の良かったところを褒めて、もう一度やってみる」ことです。そうすることで、まずトランペットが救われます。バンド全体の注意が、ミスより伴奏の質に向くからです。

そして、伴奏組は意外にも自分たちが認められ褒められたことで、もっと伴奏に意欲を持つようになるでしょう。そうやって伴奏が前向きで一生賢妹になると、ソロをやるひとにとってはかなり「吹きやすい雰囲気」になります。

「ミス」があったときでも、「良かったこと」を探す。

たったそれだけのことで、このようなバンドにとってプラスの展開に持っていけるのです。いま述べたソロ+伴奏以外のケースでも、毎回毎回、まずはそのときの演奏のよかったことに着目し、探し、ちゃんと口に出すことで、良いところはもっと良くなりますし、そうなるとまだ改善したいようなところに対してもじわじわとよい影響をもたらします。

うまくいけば、良いところに着目していくことで、悪いところが段々とひとりでに改善してくることもあります。そうなれば理想的です。

「ミスしたからやり直す」のではなく、「良かったからもう一度やってみる」という発想は、指揮する側にとっても、演奏する側にとっても、大きな+作用があることでしょう。

ですので、常に「いまの演奏でよかったこと」に耳を傾け、レーダーを張りましょう。そして、ミスや気に入らないことがあったときは尚更意識的に、「良かったこと」を探すようにしてみてください。

そうすれば段々とチューニングや基礎合奏、指揮がやりやすくなってきます。そして、バンドの音もどんどん良くなっていきます。

【遊び感覚を大切に】

もう一つ、学生指揮を担っていて苦しくなってきてしまう要因のひとつに、「クソ真面目になってしまう」ことがあります。

正しい音程
正しいリズム
縦をきっちりそろえる
テンポを守る
ブレスを統一する
構えの見た目を揃える

…..なんだか読んでいるだけで息が詰まってきませんか?

吹奏楽部でやっていると、毎日がこういう「唯一の正しい型」「出すべき結果」にひたすら向かっていくだけの練習を延々と繰り返すだけになってしまいやすいですね。

もうほんのちょっとのズレも許さないような、守らなければならない規則とかルールとかでがんじがらめになっていってしまうのです。

しかし、ひとつの曲を理解し、練習し、ものにしていくためには、先ほども書いたようにいろいろな「実験」を盛り込んでいくのがむしろ楽しいし、学習効果も高いのです。

なので、学生指揮のあなたの方から積極的に、いろいろな「ゲーム」をやってみましょう。音量、リズム、テンポ…楽譜に書いてある事と異なる事をあえてやってみるのです。

・「ここはフォルテと書いてあるけれど、音程や音色が汚くなってしまって構わないので、いちど思いっきり吹いてみよう!」と提案する

→ 音程や音色を注意され起られる不安を取り払うことで、フォルテを出す効果的な練習になります。

・「ここのアレグロのところ、試しにいつもよりすごく速いテンポにしてみます。ミスして構わないので、とにかくみんなで一緒にゴールを目指して突っ走りましょう!」と提案する

→ 速いフレーズへの冒険心を刺激できます。そうやって思いっきり速くやってみれば、速いパッセージへの苦手意識が取れてきますし、本来のテンポでやったときに余裕が生まれて走ったり転んだりが減っていきます。

「チューニング管を適当に思いっきり抜いたり入れたりしてから演奏してみましょう。どれぐらい音程がとっても不安定になりますので、そこから良い音程に近付いていく工夫をいろいろしてみましょう」

→ あえて楽器のチューニングを狂わせることで、その結果出ている音自体への意識を高めます。そうすると、「音程を合わせる」ことを自発的に自然にやるようになりますので、チューニングを通常に戻したとき、とても音程が合わせやすくなります。興味や好奇心を刺激する事で、これまで漫然としてできなかったことが、とても素早くできるようになることがよくあるのです。

上達と成長のカギは、

・実験精神
・興味と好奇心
・楽しさ

にあります。以上はいずれもそれを刺激するアイデアです。

このようなアイデアは無数にあります。果敢にいろいろな実験を仕掛けてみましょう。そうすれば合奏が楽しく、しかも成果が挙がるものになるにちがいありません!

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