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先日レッスンに来た音大生ホルン吹きの悩みは、高い音を吹くにつれて左手がズレてくる、というもの。ズレるし、小指にどんどん負担がくると。
これは割とよくある悩みだと思う。今回のケースで有効だったことはこの音大生の状況をふまえたものなので普遍的ではないかもしれないが、それでも一部のケースには援用できる解決策だろうから振り返る。
ちなみに左手のズレは、吊り革付きプロテクターの使用で解決することもある。握って楽器を安定させる必要を少なくし、また重さが左手の人差し指第2関節の骨と手の甲にかかるようになるからだと思う。しかし今回の音大生の場合は、プロテクターも使ったが状況が変わらなかったとのこと。手は大きく体格的にも楽器の保持に問題ないはずなので、より持ち方そのものが原因であろうと推測して観察した。
いきなり結論を述べると、
『楽器の保持に右腕をもっと参加させる』
ことで即座に大きく改善した。
状況としては、右腕が楽器を持ち上げておらず、右手に楽器を載せているだけで、高音への移行に伴うアンブシュアモーションやプレスのコントロールを左腕だけでやっていたということだ。
ホルンは重さの多くが右手側のベル寄りなので、左手だけで楽器がベル側に落ちていくのをくい止めつつコントロールしていたということだ。これはかなり大変だ。
楽器保持への右腕の参加を促し増やすためにやったことは、まず右腕を胴体の前側に持ってくる練習をした。最初は右腕を胴体の前側に持ってこようとすると腰をひねっていた。腕じゃなくて背骨が動いていたということ。なので背骨の動きと右腕の動きを区別するようにしてもらった。
右腕を胴体の前側に持ってくる動きがわかったところで、ホルンを構えてマウスピースを口に運ぶときにその動きを使ってもらった。
すると、右腕が左方向へ向かう分、マウスピースの位置は変わらないので胸が少し狭まるということが起きた。これは胸筋の働きで、物の保持においては有益だ。
◎右腕と背骨の区別
↓
◎右腕の胴体前側への移動
↓
◎胸筋の活用
↓
◎楽器保持のパワーの増大
↓
◎左手の疲れ・ズレ問題の解決
という流れになった。ある程度テンプレートとして援用可能なことが多い気がするので今後が楽しみだ。
Basil Kritzer