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先日レッスンに来た高校生ホルン吹き。
・音がなかなか響かず、音量あまり出せない
・発音時に口元がブレる
・発音時に狙いとはちがう音に引っかかりやすい
という傾向があった。とくに発音の問題が色濃い。舌で唇をノックする感じで発音を補助している。
まずはこの発音の問題にアプローチしてみた。
タンギングをせずに、フーっと吐き出す息で唇を振動させて音を生み出すというのをやってみてもらう。
するとこれはすぐできた。このときの音色は素直でキレイ。楽器の鳴り方が良い。ちょっと意外なほどいい感じ。
次に、そうやって出した音をクレッシェンドで膨らませる。これもすんなりできた。音色もふくよかになる。
そのあとは、息で発音してから膨らませた音にソフトにタンギングを加える。・・・これもすぐできた。鳴り方も良い。基本的に吹き方に問題がないようにすら見える。
じゃあ、タンギング付き発音。
ここでうまくいかない。元の感じのことが起きる。
観察していると、息を吸ったあと、発音するぞというときに喉がウッとなり、そのあと舌で唇を叩いている。
どうも、息を吐き出すということができないでいるみたい。そういえば先ほどの音膨らましも量は少なかった。
息を吐き出せないでいるということだ。
そこで教えたのが『息を吐くには体の形を変える必要があるよ』ということ。
息を吸うとき、体は膨らむ。息を吐き出すには、体がしぼむ必要がある。
唇を振動させるような勢いや量の息を吐き出すには、これを『わざと』やるのがポイント。
息を吸ったときに膨らんだお腹や胸を、自分でわざとちからをかけてエイッと凹ます。
すると、息が流れ出てきょう一番の鳴り方をした。
この『からだ凹まし息吐き』を『お菓子のパピコと同じ』ということに、
“パピコして音出す!”
“パピコして音出す!”
と連呼してまずタンギングなしで発音練習。
とても有効だったので、次に
“タンギングするときもパピコ!”
“タンギングするときもパピコ!”
と連呼して練習。すると見事にタンギング発音がハマりはじめた。音も良い感じで出る・鳴る・伸びる☺
舌で唇を叩いていたのは息が出ず振動しない唇をなんとか振動させようとするもので、咽のウッはなんとか息を吐出そうとする補助・代償行為ということだろう。
だからだと思うが、“パピコで息吐く!”で息が吐出せるとそれらが起きなくなる。
そして、それらがないと口元のブレも減るから発音がキマる。
つまり、『息を吐くことで全部解決』となったのだ。
この高校生の場合は、技術的には息の吐き出し方を学び、それを意識的に実行することをやるのが肝要だったということだ。
Basil Kritzer