『わたしは吹けなくて当然だから、努力を怠ってはいけない』

ホルンの演奏活動をされている A さんより、あがり症の相談をメールで頂きました。思考の毒抜き作業を、メールでお手伝いできましたので、その様子をご紹介します。

【Aさん】

おはようございます。

数年前からオケ等、ソロの部分があると体が固くなってドキドキして音が震えるようになり、バジルさんのブログやメルマガを参考に何とか改善しようとしてきました。

ホルンを教えている立場なので、失敗してはいけない…という気持ちが余計にそうさせるのか…と思い、意識しないようにしようとしてきました。

先日、やはりアガッてしまいました。周りにはあまり気付かれてないようですが、ある人に相談すると、よっぽど自分のこと上手いと思ってるんじゃないの?と言われて、ショックで……もう吹くのはやめた方がいいのかな…と思い悩んでいます。

【バジル】

相談する相手を誤ったかもしれませんね(−_−;)

そういうアドバイス、よく聞きますけれど、役に立つのは10回に1回くらいで、大抵傷付きますよね。

さて、本題。

『ホルンを教えている立場だから失敗できない』

・これは本当ですか?
・そう思っているとき、身体はどうなりますか?どんな気持ちや感情になりますか?そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?

【Aさん】

内心では「大丈夫かな?私…」と思いながら、平気なふりをしていると思います。吹けて当然、緊張なんかしないでしょ!って言われ続けてきたので、そうしなきゃいけない…そうあるべきだ!と思ってしまい、本心を話していません。いつもいつも嘘ついてる感覚で、自分に嫌悪感を覚えてます。

【バジル】

『私は吹けて当然、緊張してはいけない』

・これは本当ですか?
・そう思っているとき、身体はどうなりますか?どんな気持ちや感情になりますか?そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?

【Aさん】

私も人間だから、失敗すると思います。でも、緊張しちゃダメだ!と思うほどに体は固くなり、少しでもマウスピースを口から離すと2度と吹けなくなる気がして必死に押し当ててしまいます。そうして吹いた後は、自分の演奏を聴いて周りがどう思ってるか気になって仕方なくなり、聞かれもしないのに言い訳を考えてます。周りの人からは、何も言われたりはしないのですが…

【バジル】

『私は吹けて当然、緊張してはいけない』
・これは本当ですか?
・本当でないとしたら、本当でない理由を三つ考えてみて下さい。

【Aさん】

本当ではない理由

1:緊張してはいけない…と、言われた訳ではない。
2:今まで一度も失敗せずにやってきた訳ではない。
3:当然…なんてことはない。機械ではないから。

【バジル】

素晴らしい!

では

①いまから演奏するところだと想像してみましょう。舞台袖とか。

②『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』と思ってみてください。

③身体はどうなりますか?どんな気持ちや感情になりますか?そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?

④では、もし同じ場面で、『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』という思いが一切頭をよぎらなかったとしたら、なぜかは分からないけれど、全く思わなかったとしたら、とゆっくり想像してください。

⑤身体はどうなりますか?どんな気持ちや感情になりますか?そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?

【Aさん】

③体が固くなる。鼓動が速くなって息が吸えない感じ。失敗したらどうしよう…という気持ちで一杯。皆は立派で自分だけがダメな気がする。すごく暗い気持ちなのに、平気な振りをしている。

⑤リラックスして深く息が吸えてゆっくり吐ける。何も考えず音楽に集中できる。皆との音の重なりを楽しめる。音楽をやってる喜びを感じることが出来る。

【バジル】

素晴らしい。

では、

『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』

という思考を、これからもキープしたいですか?

あるいは、自分の為になるような理由でキープした方がよい理由はありますか?

【Aさん】

ありません。そんな事考えずに音楽に集中したいです

【バジル】

素晴らしい。

では、

『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』

の原文の「〜してはいけない」を逆にして、あとは原文ままの文章を書いて、声に出してみてください。

【Aさん】

私は吹けて当然、緊張してはいけないなんてことはない。

【バジル】

そう、吹けて当然だから、緊張してもよい。これも真実です。

では、

『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』

の原文の「吹けて当然」を逆にして、あとは原文ままの文章を書いて、声に出してみてください。

【Aさん】

私は吹けて当然ではないから緊張してはいけない。

【バジル】

そうです。決して「吹けては当然」ではないから、緊張してはいけないんです。緊張したら、吹けないでしょう?これもまた真実。

では、

『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』

の原文の「吹けて」を逆にし、また「緊張」も逆にして、あとは原文ままの文章を書いて、声に出してみてください。

【Aさん】

私は吹けなくて当然だから、リラックスしてはいけない

【バジル】

そうです。本当に考えているのは、それに近くありませんか?

【Aさん】

……はい。何か今、そう言われてドキッとしました。

【バジル】

『自分は吹けなくて当然だから、努力を怠ってはならない』と信じていれば、それは本番で吹けなくなっても不思議ではありません。

『自分は吹けない』

それは本当ですか?

①これは本当ですか?

②本当でないとしたら、本当でない理由を三つ考えてみて下さい。

③いまから演奏するところだと想像してみましょう。舞台袖とか。

④『自分は吹けない』と思ってみてください。

⑤身体はどうなりますか?どんな気持ちや感情になりますか?そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?

⑥では、もし同じ場面で、『わたしは吹けない』という思いが一切頭をよぎらなかったとしたら、なぜかは分からないけれど、全く思わなかったとしたら、とゆっくり想像してください。

⑦身体はどうなりますか?どんな気持ちや感情になりますか?そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?

【Aさん】

①本当ではないです。

②実際に吹いている。誰かに吹けない…と言われた訳ではない。ちゃんと演奏会に出演している。

⑤体がこわばって手が震える。絶望的な気持ちになる。人に接したくなくなる。

⑦体は心地よく、音楽の事で頭が一杯になる。皆の笑顔を受け入れる事ができて、幸せな気持ち。

【バジル】

素晴らしい。

『自分は吹けない』の逆を考えてみましょう。

吹けない、の逆
吹けない(のは悪い事だ)、の逆
吹けない(のはダメだ)、の逆
自分は、の逆

【Aさん】

自分は吹ける 吹けるのは良い事だ 吹けるのは楽しい
自分の逆は他人……

【バジル】

『自分は吹けない』の逆の例

・『自分は吹ける』→事実ですよね。

・『自分は吹けない、のは良い事だ』→その可能性はありませんか?

・『自分は吹けない、それでいい』→その可能性はありませんか?

・『みんな吹けない』→それもある程度真実ではないでしょうか?

どれか、すとんと胸に入る物はありますか?

【Aさん】

自分は吹けない…それでもいい…ホルンが好きなんだから…と思います。

【バジル】

それならばそれが、いちばん真実に近く、ストレスが少ないのです。そして、それを繰り返し思い出して行くことが、緊張を起こさなくさせ、力を発揮できるいちばんの近道です。

【Aさん】

はい。わかりました。今朝からの緊張がほぐれて泣けてきちゃいました。長い時間使わせてしまってすみません。ありがとうございます。

【バジル】

涙は、とてもとても良い事です。たぶん繰り返し泣いて、自分の中の真実に何度も触れ直し、発見し直す必要があります。涙は、筋肉に溜め込まれた感情が、筋肉が緩んで解放されたためです。

【Aさん】

本当にありがとうございます。これからレッスンしに行ってきます。ありがとうございました。

【バジル】

ありがとうございます。またいつでも、言ってください。この作業なら、時間あるときにお手伝いします。
行ってらっしゃい。

後日談 :Aさんよりメッセージを頂きました。

こんばんは。先日は本当にありがとうございました。

今日、本番がありました。

今朝、家を出るときは少しドキドキしたので、頭の中でずっと「自分はダメなホルン奏者でもいいんだ」という言葉を繰り返していました。そうすると、他の余計な考えが頭をよぎることなく、演奏会を終えることができました。

ドキドキが体の震えにつながることもなく、何より唇の疲労感が今までより半減した感じがしました。

完全に……とまではいってないかもしれないけれど、自分をちゃんと認めて、前に進んでいける気がしています。

久しぶりに気持ちよく吹けたので、ご報告いたしました。

本当に本当にありがとうございました(*^^*)

*とくに遠くにお住まいの方で、このようなメールサポートをご希望の方は、ご連絡下さい。時間のあるときに、サポート致します。basilblog@bodychance.jp

ブログでは読めない話もたくさん!ぜひメルマガをGET♪

レッスンの申込や出張依頼などについては、こちら!

『わたしは吹けなくて当然だから、努力を怠ってはいけない』」への4件のフィードバック

  1. 本番のステージで、「気持ちよく吹けた」「疲労感が少なかった」という体験が、よいサイクルになって、音楽に取り組む気持ちをぐぐーっと後押ししてくれるんですよね。自分の場合は震えはきちゃいましたけど、「震えても(息の支えがあれば)吹けるんだ」という発見がありました。

    • そう、本番での「変化」とか「手応え」は、大きな大きな自信になりますね。やはり演奏を続けるのは大事ですね。

  2. 打楽器を学んでおります。
    以前知人がアレクサンダーテクニークのレッスンの話を聞き、
    興味を持っておりました。
    メールの内容を吹くから叩くに変えて
    読むことで、すごく身近に感じました。

    • もっさん様 コメントありがとうございます。役だって嬉しく思います。この内容は、とても重要に思っています。

basil へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です