【チャンスは突然やってくる。でも、準備は長年重ねる。】起業家的音楽家Vol.6〜ディアンナ・スワボーダ第四回〜

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ボストンブラスなどで活躍したチューバ奏者、アンドリュー・ヒッツ氏が主催するプロジェクトが『The Entrepreneural Musician』。日本語にすると、『起業家的音楽家』です。

オーケストラの団員になる、ソリストになる、学校の先生になる….音楽家として食っていく・生きていくうえで、標準的な音楽教育の場で前提になる将来イメージはごく限られています。

しかし、現実にはそのいずれにも分類されない音楽家や、いろいろな仕事を組み合わせて真の自己実現をしている音楽家でちゃんと食べていけている音楽家、さらには経済的にかなり成功している音楽家がたくさんいるのです。

こうして、音楽を中心にして起業をし、あるいは起業家的精神でキャリアを形成している人物たちにインタビューで迫るのが、アンドリュー・ヒッツ氏の同名のポッドキャスト『The Entrepreneurial Musician』なのです。

今回は、なんとチューバとラップミュージックを融合させた女性チューバ奏者でアリゾナ州立大教授のディアンナ・スワボーダさんのキャリアから学びます。アメリカ全土の学校で2年間にわたり休む暇もなく上演されることなった”金管ラップ”のプログラム誕生の背景、そしてチューバだけでなく音楽ビジネスと音楽商品開発の講義も大学で受け持つデアンナさんの勇気と挑戦の精神に溢れた生き方から大いに刺激をもらいましょう。

それでは、どうぞゆっくりお読みください。

前回【クラシック音楽家もテスト開発をしないと!】はこちら

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【チャンスは突然やってくる。でも、準備は長年重ねる。】

Andrew
『音楽関連のビジネスをしているひとのコンサルティングを請け負うことあるのだけれど、カメラの前に立つのが苦手なひとは、当たり前だけれどSNSを活用する第一歩としてYoutubeチャンネルを作ろうとするのは得策ではない。君も覚えているかもしれないけれど僕の親友のラッセル・B.B.はいま演奏活動はしていなくて、ニューハンプシャー州で病床数が100を越えるような薬物中毒治療施設の運営をしているんだ。その彼が、「最愛のひとのためのベストの治療施設を見つける方法」という電子書籍を書こうとしているところなんだ。それを書くにあたって、「対象顧客層」となるのは当然ながら入院するヘロイン中毒患者本人ではなくて、そのパートナーや親族、ということになるよね。僕は電子書籍のフォーマットや値段付け、amazonの仕組みとかに詳しいからラッセルの相談に少し乗っていたんだけれど、最終的には必要なのは本じゃなくてしっかりとしたオンライン学習コースを作ることだということに行き着いた。というのも、最愛のひとの治療のためにこれから何百万円と使う準備ができている人にとっては数千円の電子書籍なんて大して意味が無いんだ。それに、ラッセル自身も執筆は不得意ではないけれど優れているという程でも無い一方で、話すのは得意なんだ。だから、動画を撮ってしまった方が良いというわけさ。….余談だけれど、その相談に乗ってあげた後、ラッセルは「すごいコンサルティング能力があるじゃないか!これは有料でやるべきだよ、アンドリュー!」と言ってきた(笑)。ぼくは言い返したよ、「普段は有料だよ!親友だからお金を貰うわけにはいかないだけさ」とね(笑)』

Deanna
『あっはっはっは!』

Andrew
『自分の強み、長所を分かってなければいけないね。君が子供達の前でパフォーマンスしている様子や、スクールバンドの勧誘映像での話しぶりを見ていると、君が何のために生まれてきたか一目で分かるくらい、君がこういうことが上手なのが明らかだ。だから、まさに君はそういうことをやるべきなんだ!』

Deanna
『ちょうど昨日、教授として勤務しているアリゾナ州立大学のチューバ・ユーフォニウム専攻科のアンサンブルで小学校に出張演奏に出かけたの。いま3月で、3月ってスクールバンドの勧誘シーズンなの。それで終わってから午後に小学校の教務室にいたら学校の関係者たちから、「なんであんなに上手に小学生たちを楽しませることができるんだい!?すごかったよ!」と言われた。….自分としては、ただただ自分のやるべきことをやっているつもりで、当たり前すぎて、それがどれくらい意味のあることなのか忘れてしまいがちだから、そういう反応に接すると新鮮だったりする。でも一方で、そういう水準に達するのにかかる年数に想いを馳せるのも大事ね。何年も、設計・改善・実践を重ねていった先に育っていくものだから。自分自身であること、そしてより自分らしく成長していくうえでの学びの過程ね。』

Andrew
『何者かになる、ひとかどの人物になる、肩書きを得るにしても、それはある日突然ふと任命されるものじゃなくて、そこに至るまでの様々な段階を経ているということは当然だし、誰でも分かっていることだ。でも芸術家である私たちは時にそのことを忘れがちかもしれない。他の仕事とちがって、昇進や肩書きなど分かりやすいものはあまりないからね。でも、君のやってきたことを見ると、何年も計画と開発をしてきているんだ。ある日突然幸運に恵まれて有名なチューバメールに偶然にも紹介してもらえたその日からうまくいきはじめたんじゃない。綿密な準備を重ねてきていたから、チャンスをつかむことができたんだ。』

Deanna
『そうね。』

Andrew
『さて、君の作った「ブラス・ラップ」は、2年間大忙しだったんだよね。他のすべての仕事を休止して、年間のほとんどをツアーして回る状況だったんだね?』

Deanna
『そうね。ブラス・ラップの上演活動は、ダラス・ブラスのツアーと大学の非常勤教授としての指導活動と並行して足掛け10年やっていた。本当に忙しい時期だった。』

Andrew
『そんな折に、大学での専任の仕事の話がきたわけだ。どういう経緯だったんだい?』

Deanna
『師事したメンターの一人、ダン・ペラントーニの推薦があったおかげね。現在はインディアナ大学のチューバ・ユーフォニウム科教授の彼からある日電話がきた。その一ヶ月位前に、ゆくゆくはどこかにしっかりと根を下ろすような働き方がしたいという話はちょっとしてあったのもあって、ウェスタン・ミシガン大学の専任教授と大学専属ブラスクインテット兼任の空席告知が出ているよ、と知らされた。きっと楽しめる仕事だよ、と勧められて。トントン拍子で話が進んでミシガンに引っ越すことになった。』

Andrew
『すごいね。起業家的な意味合いで「常に準備をしておく」という意味でも、演奏の機会に常に備えておく、という意味でもちょうど重なる話がある。君がいま勤めている大学のトランペット科元教授のスコット・ソーンバーグのことだ。ぼくがボストンブラスのメンバーだったころ、あるとき遠くアラスカまで演奏しに行く直前にメンバーのホルン奏者が体調を崩してしまって参加できなくなってしまった。そのときのプログラムのホルンの譜面はたまたますごく薄かったから、ホルン奏者にこだわらなくて大丈夫そうだと判断した。そこで、家で芝刈りしていたスコットに電話をかけて、彼はサッとシャワーを浴びてフリューゲルホルンを片手にやってきて僕らに合流し、見事に演奏してくれた。それがきっかけで、クリスマスシーズンの演奏会やビングバンド企画のときはトランペットやフリューゲルホルンで参加してもらうことが何度もあった。それ以来彼とは12年くらいの友達付き合いになるよ。いつどんなタイミングで昇進の知らせが来るか、その後長くにわたって仕事につながる電話がくるか、予測できないね!』

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次回【差別化がトップに行く秘訣】に続く
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