アマチュア奏者のかたよりご質問頂きました。
【質問】
いつもメルマガありがとうございます。
アレキサンダーテクニーク、まずは頭の自由とお腹を使う、は分かってきました。
もう少し疑問点があるのですが教えてください。
ジェイコブスをはじめアメリカの指導者が提唱している「チェストアップ」なんですがアレキサンダーテクニークはどう関連ずけをされて
いるのでしょうか?
私の理解しているところでは肺を高い位置に置いておけば自然に息が入る、高い音が出やすい、などの認識しかありません。
また良くシラブルの重要性も言われています。この関連性も疑問なのでよろしくお願いします。
(多分どちらも肺も位置の重要性を言っていると思われますが‥)。
以上、よろしくお願いします。
【回答】
こんばんは。
チェストアップを推奨する方々や、シラブルの重要性を仰る方々からは、納得して頂けないと思いますが、より解剖学的視点、そしてアレクサンダー・テクニークの視点から私の考えをお答えします。
【チェストアップ】
チェストアップは「しよう」とするものというよりは、
「そうなってくるもの」と言えます。
昔は、「肩は動かしてはいけない」と考えられがちでしたが、まずはこれは大きな誤りであり、有害な考え方です。
「肩を動かしちゃいけないようにする努力」をやめ、肋骨や肩が動く事を快く許容すれば、管楽器演奏のための呼吸能力が育ってくるにつれて「ひとりでにチェストアップになる」と考えた方がが適切だと思います。
実際に起きているのは、吸気(息を吸う)に伴う肋骨の動きです。
これが発達してくるにつれて、胸が持ち上がってすら見えます。
肋骨(胸郭)がたくさん動くからです。これはとてもよいことです。
それを指摘しているのがジェイコブズ氏が革命的だったところです。「肩を持ち上げるな」が「常識」だったわけですから。
これはいまでも多くの金管楽器奏者を救い、才能を開花させています。
しかし、「胸を持ち上げようとする」のが、「チェストアップしようとしているひと」に時々見受けられ、
かつ本人の演奏能力の干渉になっているケースに接することがあります。
「胸を持ち上げよう」としても、呼吸の動きとは無関係に「脊椎を動かす(反る)」動きをやっているだけで、
これはむしろ呼吸を制限しがちです。
「胸が持ち上がる」のであって、
「胸を持ち上げる」のではない
ということです。
起きている事は、肋骨の発達した運動。
それがチェストアップです。
そう注意深く捉えると、とても良いアイデアだと思います。
私自身、ジェイコブス氏の著書やレクチャーをたくさん読んだり聞いたりしています。
「姿勢」についての考え方がややスタティックなのを除いて、
とにかく素晴らしい考え、かつ的確な考えだと思います。
素晴らしい教師であり、ジェイコブス氏ほど的確に金管演奏の実際を著述しているひとはいないとも思っています。
【シラブル】
シラブルにしてもアンブシュアにしても、「これが最重要」という考え方になったときに、
その考え方は問題を孕むようになるのだと思います。
シラブルもアンブシュアも、管楽器演奏において重要な役割を演じている「ピース」です。
その「ピース」への着目や意識が大きく演奏能力の向上を促すことがあるからこそ、
シラブルやアンブシュアに着目するケースが多いのだと思います。
しかし、だからといって「シラブルが全て」なのではないし、「シラブルに注目しないとうまくなれない」わけでもありません。
また、実際には息をはじめ身体の様々な機能が連動して総体として演奏をしているわけですから、「シラブルに着目してもよく分からない」と感じるひとや、「シラブルを意識していると逆にやりづらい」と感じるひとがいても自然だと思います。
自分にフィットする/役立つなら、シラブルに着目しよう。同時に、着目しなくてもよい。というスタンスがよいのではないかと思います。
自身がシラブルに着目して演奏能力を向上させた経験をもつ教師なら、当然教えるときもその角度から教えるのが上手でしょう。
しかし、かといって、その角度から教えても合わない生徒がいるのはこれもまた正常なことだと考えます。
【肺の位置】
肺の位置を直接的に操作することはできません。
肺は筋肉ではなく膜ですから、自ら動く事もできません。
ひとつは胸郭の拡張や縮小。これは胸郭に付いている様々な筋肉によってなされますが、
この胸郭の動きによって肺に息が入ったり出て行ったりします。その空気により肺は膨らませられたり、しぼんだりします。
そして横隔膜。これは膜という字がありますが、筋肉です。
横隔膜もまた肺に空気が入るように仕向けたり、また出て行かせたりします。
参考になれば幸いです。