ここではわたし個人の現時点での、アレクサンダー・テクニークについての考え方や活かし方を述べていきます。
アレクサンダー・テクニークの根幹的なアイデアとなるのが、
「不必要に刺激された恐怖反射の心身パターンをやめていく」
「正しい事は自然に起こる」
ということです。
両者をつなげて、分かりやすく言うと、
「余計なことをやめていけば、自然と正しく良くなっていく」ということでしょうか。
それを実践するためには以下のステップが常に要求されます。
1:自己観察
2:習慣の抑制
3:より良いやり方を考える
このステップ自体は、日常の全ての活動、それこそただ座っている事から家事、歩行、スポーツ、楽器演奏、瞑想まで全てにおいて共通使えるアプローチですよね。
この各ステップを、アレクサンダーテクニークでは深く根本的にやっていきます。
それを「ホルン演奏」という活動についても同じように行うと、とても意義深いわけです。
アレクサンダーテクニークを教える教師は、「ホルン演奏」を教えるのではなくて、ホルン演奏をしてるときに、
①自分自身は何をどのように考え、どのような身体の状態を創り出していて、身体全体はどのように協調しているかを観察する。
②無意識的で本能的にやってしまう、不必要・不合理な緊張過多やバランスのくずれを認識し、それをしないようにする。
③そうして、より良いやり方を発見したり体験したりして学びを積み重ねて行く
以上の事を繰り返し繰り返し一緒にやってくれたり、あるいは自分でできるようにサポートやアドバイスをくれたりします。
これはつまり、大前提として「人間はやりたいことをできる能力があり、それを阻害する要因を取り除いていけば良い」というとても信頼の深い考え方があるんですね。
「何かが足りない」と考えると、ホルンの場合「もっとアンブシュアの筋肉を鍛えろ!」とか「もっと腹筋を鍛えろ!」とか「もっと練習しろ!」という問題解決の方法しか残されません。
しかし、上に書いたステップをやっていくと、もっと別の見方や、やり方、問題解決のアプローチが浮かび上がってきます。
たとえば、「ホルン吹いていると。肩が凝る」「背中が痛くなる」こういった問題は練習量や筋力増強で良くなる類いのものではありません。
ホルンを吹いている時のその吹き方、持ち方、吹いている時に自分の筋力を使って「やっている事」に問題があるのですから、上記のステップが必要になってくるワケです。
このステップはやり出すと、そのうちもっと根本的な「吹き方」「やり方」「考え方」を意識することになります。ここからがとても面白いのです。
何も努力や緊張を付け加えなくても、先に書いたステップを繰り返し繰り返しやって行く中で、どんどん発見があり、変化が起こり、向上や成長につながっていきます。
金管楽器の専門家でアレクサンダーテクニーク教師でもある人は、まだ日本では3人だけ。しかし、この先どんどん増えてくるでしょう。
また、金管奏者でなくても木管奏者や歌手、音楽家の教師はすでに日本にも何人もいます。
そして、音楽家ですらなくても、優れたアレクサンダー教師であればとっても為になるレッスンをしてくれます。
そこがまた面白いところです。