管楽器を演奏している人の中には、顎関節症などアゴにまつわる悩みを抱えている人がたくさんいます。とても厄介で苦しい問題ですが、顎についての現実を知る事でかなり改善できる場合があります。
顎のメインの筋肉は、側頭部にあること、ご存知でしたか?
文字通り「側頭筋」と呼ばれるこの筋肉。担う仕事は「顎を閉じておくこと」です。
まず、顎を閉じる力の多くが、『こめかみより上の側頭部』で発揮されています。
これはかなり重要です。
なぜなら、多くのひとが顎を閉じるとき、ほっぺたや顎のエラのあたりを頑張らせようとするからです。これ、実は間違っています。本当は側頭部が閉じる仕事を担っていてくれているのですが、イメージの中でなんとなく「ほっぺやエラのあたりを頑張らせる必要がある」つもりになっています。それ故、あごを閉じる仕事をそれほど担っていないところが、不必要に緊張してしまうのです。
側頭筋は、これまで思っていたよりだいぶ上、側頭部に付いている大きなしっかりした筋肉です。いままでも、そしてこれからも、意識せずともしっかり顎を閉じる仕事を担ってくれています。
つまり、ほっぺやエラで頑張る事を、きょうからやめちゃって大丈夫なのです!
こめかみあたりから側頭部にかけて両手のてのひらをあてて、「ああ、ここがちゃんとやってくれているのだな」と思いながら顎を開いたり閉じたりしてみましょう。これまで顎に痛みや不快感を感じていたひとは、このとき驚く程ラクにスムーズに顎を動かせる体験をするかもしれません。
次に重要なのは、
「顎は力で引っ張って開けようとしなくていい」
ということです。
側頭筋はとても強く大きな筋肉。顎を閉じる働きをどっしりとこなしてくれています。
ということは、顎を開くには、「閉じるのをやめる」のが最も手っ取り早く、ラクなのです。
実際には、「顎を開く筋肉」も存在します。しかし、顎を閉じる側頭筋に比べればずいぶん繊細な筋肉です。開け具合の調整役、という感じです。
ですから、閉じる力が強い筋肉を「OFF」にしないと、調整役の「開ける筋」は太刀打ちできません。これが顎を開くときにバキバキ音が鳴ったり、痛くなったりする一因です。
大事なのは、
「顎を開くのは、力づくでやる必要がなく、『閉じるのをやめる』『閉じる力を抜く』と考えれば簡単にラクにできる」
というアイデアです。
もういちどこめかみから側頭部に両手のてのひらを当てながら、
「閉じるのは側頭部、開くのはこれがお休み」
と思いながら、顎を閉じたり落ちるがままにさせたりしてみましょう。
アンブシュアの形成やアンブシュアチェンジが、相当ラクになることでしょう。
ご無沙汰しております、以前tpで教えて頂いた者です(横浜でリペアやってます)。ブログ拝見しております。現在、アンブシュアが決まらず苦労しています。今回の顎の話大変参考になりました。下唇についてはどうあるべきとお考えでしょうか?上唇と同じ様に振動してしまいます、何かアドバイスがあればツィートして下さい。
浅葉さま
上下の唇の割合は、気にする必要はありません。
とくにトランペットは下唇が振動する感覚はホルンより多くて普通です。
Basil
こんにちは。10月にレッスンを受けに行く松本です。
顎の力みについて拝読していて感じたことです。
昨日チャイコフスキー5番2楽章の有名なソロに挑戦したら最後まで吹けずにバテてしまいました。
今までアパチュアを閉じるということを意識して唇は積極的に動いていましたが、顎はガチガチに固まっていたのかもしれないと思いました。低い音域はそうでもありませんが、特に5線譜真ん中のFより上の音域が長く続くフレーズで顎が固定されていたのかもしれません。
早速今日の練習で、顎も自由に積極的に動いていいんだ、そして顎の動きは側頭筋のON,OFFだと思って吹いてみようと思います。
松本さん
はい!顎も自由に積極的に動いてOKです。
すぐれた管楽器奏者は、唇と顎がとても柔軟に連動しているなあと見ていて思います。
きっと舌や首とも関係がふかいと思います。
感じたこと、気づいたことを信頼してどんどん前進してください (^^)
早速の返信ありがとうございます。しかしこの返信の早さは。。。たまにバジル先生が4人ぐらいいるのではないかと思うことがあります(笑)
早速練習時に顎についてのアイディアを実践してみると、4回ソロを吹いても大丈夫でした!顎の力恐るべしです。
私は高校2年生の時に自分のアンブッシュになんとなく疑問やこのままでいいのかという思いが芽生え、たまたまフィリップファーカスの金管楽器奏法を知り、アンブッシュアをチェンジしましました。確か偉大な先輩からその本を薦められたのだと思いますが、今思えば長くて辛い道のりの始まりでした。
高校の授業中もその本をずっと読むほど、私はその本に書かれていることが全て正しいと強烈に思い込んでいました。その為自分に対していろいろな制限(こうしなきゃダメだ、これをしてはいけない等々)をかけていました。
しかし今年の3月ぐらいにたまたまネットでホルンの奏法などで良いヒントはないか検索していたらバジル先生のブログを発見して、読み進めるうちに境遇が似てるなーと思いました。
それからアレクサンダーテクニークを知り、YouTubeで動画を見て見よう見まねで実践してみると今まで出来なかったことがどんどん出来て、本当に泣きたくなるくらい嬉しい気持ちになりました。私は一時期本当に楽器が満足に吹けないストレスで、何回かホルンを辞めようと思ったこともありました。でも今は毎日ホルンを吹くことが最高に楽しいです!辞めなくてよかったと思います。本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします(^ー^)
こんばんは。
吹奏楽部でトランペットを吹いています、高校2年男子です。
顎の悩みについて調べているところ、先生のブログを見つけました。
僕は約2年間トランペットを続けていますが、高音になるにつれ、顎が受け口気味になり、左にずれてしまいます。また、周りのトランペッターと楽器の角度を合わせようと下唇にプレスしすぎて唇の裏を怪我してしまう時があります。どうにか改善しようとしていますが、やはり癖がついてしまっているため、どうすればいいか思いつきません。アドバイスをいただけたら幸いです。よろしくお願いします。
Yupetさん
楽器の角度は個人的なもので、他人と合わせることは奏法面では百害あって一利なし、です。
参照
http://basilkritzer.jp/archives/4714.html
http://basilkritzer.jp/archives/4855.html
http://basilkritzer.jp/archives/6322.html
どうしても合わせるなら、アンブシュアにおいてではなく、首や腰で顔の向き変えることで対応しましょう。
左へのずれ、
受け口のこと、
どちらもおそらく問題ありません。
上記の三つのリンクを読んで下さい。
Basil
返信ありがとうございます!!🙇♂️
はい!いろいろ研究してみようと思います!また何かあったときはよろしくお願いします🙇♂️
ありがとうございました😊
はじめまして。中学生の娘がトロンボーンを吹いています。コンテストの朝、口が開かないと起きてきました。生活に差し障らない程度に回復しましたが、楽器は少し吹くだけで吹いた後に右顎に痛みを感じると言います。歯科で顎関節症と診断され、楽器もお休みしていますが、トロンボーンが吹けないことを悲しみ、いつまで吹けないの?もう吹けないの?とショックで不安定な日々を過ごしています。そんな中このブログに辿り着きました。本当に音楽が大好きでトロンボーンが大好きな娘です。何か手立てはないでしょうか?宜しくお願い致します。
野村様
わたしも顎関節症を発症したことがあります。
歯医者さんによると、ある程度の年数を一生懸命楽器やってきたひとは、大抵潜在的に顎関節症持ちだそうです。
その歯医者さんは、日常生活において、噛み締めているときとか、顔面や唇の力を入れっぱなしのときに気づいては緩め、気づいては緩め、
それしか解決法はないとおっしゃっていました。
以後、その通りにしています。
楽器をやっていること、少しづつで吹く時間を延ばしていきたいことを理解してくれる歯医者さんあるいはお医者さんを見つけて、
症状の緩和や原因の改善、段階的なリハビリなどを親身に考えてくれる方を見つける必要があると思います。
Basil
早速の返信ありがとうございます。
歯科に関してはドクターご自身が金管楽器奏者の方で、吹くことに対しては前向きに考えて下さっています。原因は複数が重なっていると言われています。顎の筋肉が少ない。コンテストの曲の音域が広いため顎関節が前後に移動する頻度が多く負担をかけている。歯列矯正のストレスなど…。歯の初見では噛み締めはないのではと。
ドクターは20分吹けないなら3分吹いて休むでもよいのでは?と言ってくださいますが、痛みが出る吹き方とは間違った吹き方なのか?奏法に疑問を感じたりもします。
バジル先生も顎関節症を患われたのですね。娘が一番不安なのはもうトロンボーンを諦めないとならないと思っているようです。今、学校へ行っていますが帰宅してバジル先生も顎関節症の経験がおありだよと話すと少し希望を持てるかもしれません。
先生は回復期にどのように楽器と過ごされていたのかおしえていただけないでしょうか?
度重なる質問で申し訳ありません。
しっかり診てくれて相談にも乗ってくれるドクターでよかったですね!
コンテストの負担、歯列矯正の負担が一時的に多いのは大きいかもしれませんね。
何事もそうですが、やはり痛みや不都合が出るときは「無理は禁物」ということなのではないでしょうか。
それこそその無理が、諦めるという最悪の事態の最大の誘因でしょう。
痛いなら吹かない、
よく休む、
ほんとなら身体を痛めて演奏の将来に影を落とすようなことならコンテストも抜ける(本来学校教育はそうでなければなりません)
といった「地味」なことが一番大切だと思います。
わたし自身の顎の経過のことは、2016年秋〜2018年秋くらいの期間のブログにいくつか記事がありその話がでてきます。
ぜひ検索して読んでください。
ありがとうございます🙇♀️結局、コンテストも辞退いたしました。このコンテストのために7ヶ月本当に練習に練習を重ねてまいりましまので、苦渋の決断でした。
やはり痛みがあるうちは休養が良いのですね。先生のブログをゆっくり読ませていただきます🍀
不安な時に迅速に返信下さってとても勇気が湧きました。お忙しい中、ありがとうございました🙇♀️