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【プレスを覚えて10年】
もうたぶん90歳近いのですが、スコットランド在住のアレクサンダーテクニーク教師でパブロ・カザルスに師事したチェリストのヴィヴィアン・マッキーさんという方がいらっしゃいます。
彼女に受けたレッスンで、10年前になりますがかなりブレイクスルーにつながった体験があります。
モーツァルトのホルン協奏曲第2番を彼女の前で少し演奏しました。
すると彼女はよっこらせ、とわたしの方に寄ってきて、おもむろにわたしの髪と楽器のマウスパイプを掴みました(!)。
昔気質な先生です。(?)
そして、マウスピースをグイグイとわたしの唇に押し付けて、
“Now, Play !!!”
と一喝。
戸惑いながらも吹いてみると…..さっきロクに当たらなかった高音がポンポンとはっきり発音できる。
「なるほど、プレスを避けて損していたのか」
とその瞬間悟りました。
….ですが、そこで疑問が。
「先生、低音はどうしたらいいのですか?」
ウブで気弱なわたしを見ていてイライラしたんでしょうか。先生はキレ気味に、
“Same !!”
とまたも一喝。
「….でも、でも….」
とまごついていると、
“Press and Play !!”
と雷を落とされたのですかさず今度はノイリングのバガテルを演奏。
…..またも、こんどは低音がハッキリとパキパキと吹ける。
プレスしないように、と意識的には考えていませんでしたが、
「プレスをどれぐらいするか」ということを踏み込んで考え実行する初めての体験でした。
そういえばこの日くらいから、自分の中の高音に対する莫大な苦手意識が少し変わっていったのでありました。
Basil Kritzer