唇と息のことを同時に考えられるようになった

2011夏、シアトルよりキャシー・マデン先生という方が、私がアレクサンダーテクニーク教師になるために学んでいる BodyChance に教えに来日してくださいました。

その間、6回ほどホルン演奏をみてもらいました。
ほんとにびっくりするようなレッスンばかりで、吹き方がまた変わりました。

腹筋と骨盤底の、息を吐くときの姿勢との関わり。
それが直接、舌やのど、ひいてはアンブシュアの力みの抜けの鍵になっていること。
アンブシュアの過剰なコントロールを少し手放しつつあります。

このキャシー先生、驚くべきは管楽器プレイヤーじゃないことなのです。
元々は役者さん。
いまはたぶん世界ナンバー1のアレクサンダー・テクニーク教師。

「なんで管楽器のことを、ぼくより分かるの?」

とびっくりしてしまいます。

葛飾総合高校吹奏楽部でのレッスンでの一幕。肋骨の使い方、息の吐き方を伝えています。(2013年)

葛飾総合高校吹奏楽部でのレッスンでの一幕。肋骨の使い方、息の吐き方を伝えています。(2013年)

しかしそれがBodyChanceメソッドの理論的支柱であるキャシー先生なのです。
BodyChanceメソッド教師は、人の動きを見て分析する高度な技術を持っています。

また、その分析の基準が、「活動目的」と「協調作用」なので、例えば楽器を演奏するという目的に、どんな動きが適しているのか、身体のどこがどのように働くはずなのか、そういったことを理解しています。

キャシー先生とのレッスンでひとつ印象的だったのが、

「唇の方向」と「息の方向」

の話です。

キャシー先生は毎年来日するので、2011年時点で会うのは4回目だったのですが、それまでにも「唇はマウスピース方向へ動かす」ということを教わっていました。

これは

頬骨や頭蓋骨、鼻腔の共鳴が得られるため、音を出すという作業の効率が増し音を出すこと自体がもっとラクになるし音もより響くようになるから

です。

また、

「息は上へ出す」

息をもっと出そうとすると、私たちはいつの間にか楽器へ吹き込むつもりでいきを前へ下へ押し出そうとします。

しかし、息は身体の中では気管を通って上方向へ動いています。最後に硬口蓋に当たって結果的に必ず前へ出て行くので、「前出そう」と力を使うのは実はマイナスに働きます。

上へ押しだす意識の方が効率がよいのです。

苦労していたのはこの二つの方向性を、それまでは同時に考えること。

唇は前。息は上。

なんとなく口のあたりで方向がかぶさってしまうような気持ちがしていたのです。

しかし、そのことをキャシー先生に相談したら、

キャシーは「息は骨盤底の力で上へ押し出されるのよ」と。

つまり胴体全体で上の方向をイメージできるのです。

すると、息とイメージが大きくなりました。
そしてより身体の内部でのイメージになりました。

それに対して唇は、もっと繊細で、かつ身体の表面で起きていることのようにイメージできました。
すると、息は上、唇は前と考えるのがスムーズにできるようになりました。

こういったやりとりでイメージが変化し、そのイメージの変化が実際の奏法、動き、感覚、結果の変化に結びついてくる。

スリリングで本当に興味深いレッスンになるのがBodyChanceメソッドなのですね。

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