ひとに教えるコツ

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きょうは

  • 自分の体験を吟味して伝える
  • 何がうまくいったかに着目する

  • という、「ひとを教えるコツ」について詳しくお話しします。どうぞお楽しみに!

    音楽をやっているひとは、そうでないひとに比べ、ひとに教える機会が多い傾向があります。

     

    実際あなたも、プロの奏者や専門家でない身近なひと(先輩や楽団の年長者など)に教えてもらうことがあったかもしれません。

     

    同様に、あなた自身もそうして教える側にまわるケースが自然と多くなります。出身校の後輩を教えにいくケースもよくありますね。

     

    ではいざ自分が教えるという機会が巡って来たとき、どうすれば効果的に教えてあげられるのか?そのポイントをいくつかご紹介したいと思います。

     

     

     

     

    【自分の体験を吟味して教える】

     

    教える機会が急にやってくると、

     

    「えー!どうやって教えたらいいんだろう…」

     

    と迷ってしまうことがあります。

     

     

    どう教えたらいいか分からないとき、私たちは自らの「教わった体験」を思い出そうとします。そして、自分が「教えてもらった」ときに言われたことを、自分が教えるときも言うのです。

     

     

    しかしこれがちょっと問題になることがあります。

     

     

     

     

    【無意味または有害なものまで継承してしまう】

     

    たとえば管楽器の世界の場合。

     

    中学や高校の吹奏楽部の多くにはいまだにほとんど無意味な「腹筋運動」や「スクワット」をやらせるところがあります。

     

    本格的な運動部だともはやどこもやらないような、昭和スパルタ的なメニューが吹奏楽部に残っているという不思議な光景が見受けられるのです。

     

     

    これ、実は顧問の先生が指示しているわけではなく、生徒たちが自主的にやってしまっているケースが大半です。部活の伝統ということで、単なる慣習が受け継がれています。

     

    中学生や高校生にとっては、後輩を教えるのはかなり高度な要求です。なのでどう教えたらいいのか分からず、とりあえず自分が先輩に教わったことをそのまま忠実に教えます。

     

     

    これが様々な悲喜劇を生んでいるのをご存知の方も多いと思います。

     

    ホルンだったら、管がバラバラに差されていて、その学校独自の「指使い」が受け継がれている…なんということもあります。

     

     

    これは極端な例ですが、「自分が教わったことを、そのまま教える」というモデルは必ずしもよいモデルではありません。

     

     

     

     

    【良いところだけを選別する】

     

    そこで私が提案したいのは

     

    ・自分がいまでもやっていること

    ・やっていてうまくいっていること

     

    を教えるようにする、ということです。

     

     

    よくよく考えてみると、過去に先輩に言われたことや教えられたことでも、気がつけばやらなくなっていることがたくさんあるのではないでしょうか?

     

    それはやっても意味がなかったり、やる意味が分からないからです。結果的に、自然と取捨選択しているのです。

     

     

    なので、誰かを教えるときは、

     

    ・自分が気に入っている練習方法

    ・自分にとってうまくいく考え方・やり方

     

    だけを選び出して、それを紹介してあげればよいのです。

     

     

    そういったノウハウを教えてもらう側は、たいてい「うまくなりたい」と思っているわけですから、あなたが「うまくいっている」ことを知りたがります。

     

    その後、渡されたものを自分なりに試して、取捨選択していくはずです。

     

    このようにすれば、形骸化してしまった伝統や慣習に縛られずに「うまくいく」「実効性のある」アドバイスを贈れる可能性が高まります。

     

     

    自分の体験をよく吟味して、自分がうまくいっている、あるいは気に入っている「やり方」を紹介してあげるのです。

     

     

     

     

    【「何がダメか」ではなく「何をやればうまくいくか」を考える】

     

    あなたの体験を振り返ってみて下さい。

     

    先輩や指導者から、よく意味の分からないダメだしばかりをされて、いったいどう演奏すればいいのか混乱してしまったり、演奏が逆に難しくなってしまったことはありませんか?

     

    教えるときに気を付けたいのは、「ダメだし」に陥らないことです。

     

     

    教えているとどうしても、相手の悪いところやダメなところを「直さねばならない」気になってきます。

     

    しかしそれは指導者であるあなたの責任ではありません。

     

    生徒は、自分の変えたいところを自分が変えたいように変えるだけです。あなたには相手を変える責任も権利も能力もありません。

     

     

    教えてあげている相手の音を聴き、様子を観察しながら、

     

    「何をしたら、あるいは何をやめたら、この人はもっとうまくいくかな?」

     

    と、自分自身に深くゆっくり落ち着いて問いかけ続けて下さい。

     

     

    答えはあなたの脳の無意識の部分が知っています。

     

    深く問いかけ、答えを待てば、何かふと言いたくなることが出てきます。

     

    それが本当に単純だったり、突拍子もないものだったとしても、意外なほど相手に役立つ一言となる可能性があります。

     

     

    生徒さんは、うまくなりたいのです。ですからあなたはそれを「助ける」のが仕事であって、「ダメだし」や「指摘」が求められているのではありません。

     

    なので、あなたの眼が「相手がうまくなるポイント」を見ているようにしましょう。

     

     

     

     

    【ひとは笑顔のときの方が身体がうまく動く】

     

    私が思う、「一番やってはいけないこと」。

     

    それは、教える側が相手を萎縮させることです。

     

    それは相手の能力を損ねます。それは教える人の果たすべき責任の真逆です。

     

     

    私の師匠の師匠、マージョリー・バーストウ先生はこう言っていたそうです。

     

    「ひとは笑顔のときのほうが、身体がうまく動くのよ」

     

     

    相手を和ませる雰囲気作り。

    相手と互いに学び合う信頼関係。

    相手の良いところを見出す眼。

     

     

    これらきれいごとや理想論ではなく、「うまくなること」を助けるような指導になるかならないかの鍵を握る重要な要素なのです。

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