わたしの配信しているメルマガ「バジルの管楽器&アレクサンダー・テクニーク」ではいま教則シリーズの配信を新たに始めました。好評を頂いて、質問も頂くようになりました。きょうはその質問にブログ上でお答えします。
【質問】
メルマガ読ませてもらっている I です、私はホルンの中低音を1分吹いただけで唇に型がつきます、押し付けすぎなのはわかってます、けど直りません、そのせいか柔らかい音がでません、。ガサガサした音になります、押し付けて吹くのを辞めたいです、どうしたらやめれるかコツを教えてください、
【回答】
中高生の多くが同じ悩みを持っています。私もそうでした。質問にはいくつかの異なるポイントがありますので、整理しながらお答えします。
唇にマウスピースの型が付く
これは必ずしも問題ではありません。人によっては、強く押し付けていなくても皮膚が金属に反応して赤くなることがあるからです。これは金メッキをかけたり、チタン製またはプラスチック製のリムのマウスピースを使用することで避けられる場合があります。金属アレルギーが少しあるとそれだけで唇が敏感になったり腫れたりすることもあります。その場合は、マウスピースの材質を変える事で対応できます。
マウスピースの押しつけ その1
これに関してまず理解しておきたいのは、マウスピースが唇に対して押す(プレス)こと自体は音を出すのに必要であり悪い事ではないということです。実は押し付けないようにと気にしすぎると、楽器を口から離すような動きが知らず知らずのうちに混ざってしまい、マウスピースと唇の接触が弱くなりすぎて、音が鳴らしにくくなることがあります。それを補うために、頭(唇)をマウスピースの方に向かって押すということが代わりに起きます。こうなると、首の大きな筋肉を使っていますから、押しているつもりがなくても実はかなりの力が自覚のないうちにマウスピースと唇の間でかかってしまい、すぐ唇が疲れることがあります。プレスしないようにしようという意識が、実は気付かぬうちにプレスを過剰にしてしまう、という逆転現象です。そこで、「腕で楽器を唇の方に持ってくる」と意識して構えてみましょう。これができれば、プレスは腕や手でコントロールできます。この方がよっぽど細かく必要に応じてプレスをコントロールできます。結果的には唇が楽だったりするのです。
マウスピースの押しつけ その2
もうひとつ調べてみるとよいことがあります。それは、首や頭を後ろに引っ張って「マウスピースから逃げる」ことをやっていないかどうかです。これも計算していないところでマウスピースと唇の接触を弱く不安定にさせ、逆にプレスを強くしてしまうという逆転現象を起こすことがあります。詳細はこちらをご参照下さい→ブログ記事「管楽器奏者の顎や首を引く癖」
音の質
音の印象の柔らかさはひとそれぞれで個性です。使ってる楽器によっても変わります。いま自分では「ガサガサ」と思っている音も実は意外とクッキリした音かなのかもしれません。ホルンは柔らかい音がする楽器、と思われますが、近くで聴くとかなりパキパキとした音に感じることはよくあります。音色は声の個性と同じで、変えることは基本的にはできません。重要なのは「響き」です。どんな個性の「音色」のひとでも、「響いて」いれば「良い音」に聴こえます。その良い音が「柔らかい」か「クッキリしている」かは人それぞれです。
参考になれば幸いです。
ブログ読者の質問大歓迎。質問はメールにて→ basilblog@bodychance.jp
暫くぶりに失礼します、引退間近の高校生ホルンです
私は個人的にはホルンの柔らかい音が好きなのですがどう頑張っても自分では硬くて直線的な音しか出せません;;
後輩が私好みの音で吹いています。その後輩は硬めの音が好きだと言ってくれるのですが、釈然としないものを感じます
個性ですか……。
そのうち自分の音も好きになれるといいですが(・ω・`)
dlcecor さま
おはようございます。dolcecor さまからメールで頂いていた質問は回答をきょう載せます。どうぞお楽しみに♪
さてさて、音色ですが、こればかりは本当に個性です。自分の声って録音で聴くと嫌だったりしませんか?たぶんこれと同じ心理なんですよね、自分の音色がなかなか好きになれないのって。
私もそうです。
ですが響いていればどんな音でも「良い音」です。音がうまく響いているときは、吹き方もラクに感じたり、あるいは音の存在感がすごくある感じになったり、音色以外のどこかで「これは!」とピンとくるものがあると思います。
「響き」で判断できるようになると、ずいぶん気持ちもラクになりますよ。
音が硬いということだけで悩むことはないんですね……本当に時々ですが、自分の音が音楽室いっぱいに楽に響くような感覚で吹ける日がありました。音は硬いままでしたが
そういう時に曲を練習すると周りで練習している人が合わせてメロディを吹いてくれたりしていました
少なくともあの時点での「いい音」だったかもしれません
暫く間は空きますが響きを聴いて自分の音を磨いてみます^^
dolcecor さま
まさに音楽室いっぱいに響くその音が dolcecor さまの「良い」音であり、そのときの音色が「良い」音色なのだと思います。
周りにも伝わっていたのでしょうね。
基礎練習不足?それとも吹き方の問題?
前回のQ&Aでご質問頂いていたMさんより、さらに質問を頂きました。前回の内容はこちらです→『Q&A マウスピースの押しつけ過ぎはどうやったら直せるの?』 【メルマガ読者より質問】 Mです。お返事ありがとうございます。確かに親戚は金属アレルギーで私もそうかもしれません。押し付ける事に関してもものすごい前かがみで首!?の力で押し付けていました。もう1つ質問があります。高音の吹き方がおかしいということです。まず見た目がものすごい力が入っていて見苦しいこと。高音は普通ロングトーンすればでると聞きますが私は高音のロングトーンをすればするほど唇が腫れていき高音がでなくなっていきます。そしてトランペットのような音になっていきます。音質も全ての音域で開いた軽過ぎるキンキンした音です。うわずっているというか落ち着きがない音です。変な癖があるとみんなに言われますがどうやったら直るのでしょうか。もうすぐ先輩が引退して私は1st吹かないといけません。そもそもこれは基礎練習不足なのでしょうか。それとも問題のある吹き方をしているのでしょうか? 【回答】 前回の内容(詳細はこちら)をお読みになったことで、ご自身の傾向に気付かれたのは素晴らしいことです。その調子で、観察を続けて下さい。 高音の練習方法 まず、高音の練習方法に関して考えていきましょう。「ロングトーンで高音を出せるようにする」という練習方法には無理が起きやすいかと思われます。高音を少しづつより自由に使いこなせるようになるためには、 ステップ1: 高音が出る「吹き方」を探って、高音が出せるという経験を少しづつ積み重ねて行く。 ステップ2: 高音を出せた経験が積み重なるにつれて、その高音を「使って」色々演奏してみる。 という2段階があると思います。「ロングトーン」はステップ2ですから、ステップ1に十分月日をかけてからにすた方が良いかもしれません。「高音のロングトーン」は高度な技術です。「基礎練習」とは言えないですね(金管楽器の場合)。 ステップ1の練習方法として有効なのは、リップスラーでゆっくりと高い音に移って行くような練習方法です。息をしっかり吐き(注意!吸うことはあまり意識しなくてOKです。大事なのは、しっかり吐くことです)、唇を動かしてはじめて音が高い方へと移り変わって行きます。金管楽器の場合、指またはスライドのポジションをひとつ決めて、指やポジションの移動は使…
「腕で楽器を唇の方に持ってくる」という意識,
今日の練習でやってみましたが、期待以上に微妙なプレスコントロールができてビックリしました!
以前は、一度押しつけ始めてしまうと離そうとしても体が固まってしまってどうにもならなかったのですが、腕だとプレスが欲しい高音などの時にチョッと掛けられ、必要が無くなれば離すことができました。
唇の疲れも全然違いますね♪
kogo さま
こんにちは!
このアイデアが実際にかなり役立っていることを知れて、とても嬉しく思います。
そうなんです、腕は人体でもっとも自由に動かせるパーツですから、それで楽器を操作することを意識すると、プレスもけっこうやっても大丈夫になります。バテもかわりますよね!
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