基礎練習不足?それとも吹き方の問題?

前回のQ&Aでご質問頂いていたMさんより、さらに質問を頂きました。前回の内容はこちらです→『Q&A マウスピースの押しつけ過ぎはどうやったら直せるの?』

【メルマガ読者より質問】
Mです。お返事ありがとうございます。確かに親戚は金属アレルギーで私もそうかもしれません。押し付ける事に関してもものすごい前かがみで首!?の力で押し付けていました。もう1つ質問があります。高音の吹き方がおかしいということです。まず見た目がものすごい力が入っていて見苦しいこと。高音は普通ロングトーンすればでると聞きますが私は高音のロングトーンをすればするほど唇が腫れていき高音がでなくなっていきます。そしてトランペットのような音になっていきます。音質も全ての音域で開いた軽過ぎるキンキンした音です。うわずっているというか落ち着きがない音です。変な癖があるとみんなに言われますがどうやったら直るのでしょうか。もうすぐ先輩が引退して私は1st吹かないといけません。そもそもこれは基礎練習不足なのでしょうか。それとも問題のある吹き方をしているのでしょうか?

【回答】

前回の内容(詳細はこちら)をお読みになったことで、ご自身の傾向に気付かれたのは素晴らしいことです。その調子で、観察を続けて下さい。

高音の練習方法
まず、高音の練習方法に関して考えていきましょう。「ロングトーンで高音を出せるようにする」という練習方法には無理が起きやすいかと思われます。高音を少しづつより自由に使いこなせるようになるためには、

ステップ1:
高音が出る「吹き方」を探って、高音が出せるという経験を少しづつ積み重ねて行く。

ステップ2:
高音を出せた経験が積み重なるにつれて、その高音を「使って」色々演奏してみる。

という2段階があると思います。「ロングトーン」はステップ2ですから、ステップ1に十分月日をかけてからにすた方が良いかもしれません。「高音のロングトーン」は高度な技術です。「基礎練習」とは言えないですね(金管楽器の場合)。

ステップ1の練習方法として有効なのは、リップスラーでゆっくりと高い音に移って行くような練習方法です。息をしっかり吐き(注意!吸うことはあまり意識しなくてOKです。大事なのは、しっかり吐くことです)、唇を動かしてはじめて音が高い方へと移り変わって行きます。金管楽器の場合、指またはスライドのポジションをひとつ決めて、指やポジションの移動は使わずに、息と唇で「音を変える」「色々な高さの音を出す」という練習です。

そうすると、指やスライドのテクニックとは別に、「高い音」または「低い音」を出すためのテクニックを探り、体験し、知り、身につけて行く事ができます。そのとき、息や力みを我慢して頑張ってしまわないように。息が無理なく持つ長さの間に、音を変えていきましょう。急いで上がる必要も、逆にゆっくりやりすぎて息が苦しくなってしまう必要もありません。(詳しくはこちらを参照して下さい→「自然倍音を使った練習パターン」

これをやっているうちに、段々と「高い音を出す」経験値が積み重なっていきます。

ロングトーンの練習
高音のロングトーンは、この積み重ねが十分にできたはじめて出来るようになるでしょう。なので、いきなりまだ自分にとって経験の浅い「高音」をロングトーンをしようとしても無理があります。無理に頑張ると、身体が力みます。Mさんがひとに言われたり、自分で気付いている「力み」や「変なクセ」はこれが原因かもしれません。ロングーンは、やるならまず無理のない中音域や低音域からやりましょう。そして本当に少しづつ、より上の音域をロングトーンしてみるようにしましょう。最初は自分の出せる一番高い音よりだいぶ低い音のロングトーンでも構いません。3日後くらいに、半音上のロングトーンをしてみます。さらに3日後くらいにもう半音上のロングトーン。1週間で半音か1音くらい上がれれば上出来です。ほんとうにそれぐらいの長い目で取り組んでみましょう。そうすれば、もっと素直に成果が出て来て、実感できるでしょう。これが自信につながります。

周りの指摘
周りに指摘してくれる人がいるのは悪いことではありません。ただし、あまり周りの人の指摘を気にしない方がいいでしょう。よほど自分にとってピンと来たり、ヒントになりそうなこと意外は、気にしないように。ほとんどの人のほとんどの「指摘」は、主観的だったり根拠がなかったりします。「自分の目で見て」「自分の耳で聞いて」「自分で気がつく事」の方が何倍も大事です。自分で自分の観察をやるようにすると、他のひとの指摘やアドバイスがピンときて役に立ったりします。

音質
開いたキンキンした音、とおっしゃていますが、案外キンキンしていても大丈夫かもしれませんよ。よく響いている証拠かもしれません。ホルンはどうしても「柔らかい音で吹かなければいけない」と思い込みがちですが、実際にはすごい演奏家にも良い意味で軽い音のひとや、良い意味でキーンと鋭く遠くまで音が飛ぶひとがいます。これは個性ですので、大事なのは無理矢理に吹こうとせずに吹いたときの音。そして響いている音です。響いていれば、音色が自分としては嫌でも、周りの人には良い音に聴こえます。そして、そういう音が出せているときは力んでおらず、吹きやすいものです。

基礎練習不足なのか吹き方の問題なのか
中学生や高校生は、まだ楽器をはじめて日が浅いですから、まだまだ基礎的な技術を身に付ける途中にあります。特にホルンの場合、高い音や低い音が難しくても、それはある意味「正常」です。ホルンを自由に吹きこなせるには10年くらいかかっても「正常」です。ですから大事なのは、できないことを無理矢理にやろうとしない、ということです。それをやると「吹き方」に無理が出てきます。一歩一歩、自分のペースで基礎的な練習をしてみましょう(ここで紹介したようなものも良いです)。そうすると、中学生や高校生ならばグングンうまくなります。その上達を実感することが大事です。次の一歩、次の1センチの上達を目指しましょう。その積み重ねで、どんどん成長できます。

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基礎練習不足?それとも吹き方の問題?」への2件のフィードバック

  1.  40代半ばです。音色について、私も同じ「開いてキンキンした音」と言われますが、「直したほうがいい」と言う人と同じくらい「いい音。好き」と言ってくれる人がいます。アンサンブル等等にもわりとよく誘ってもらってます(別の要素もあるでしょうけど)。オーケストラでは指摘を受けて直したいと思わなくはないですが、音色のことを言葉で言われてもわからないので直しようがないし、自分では無理なく自然に楽器が響かせられてる感じがして気持ちいいのに駄目なのかなあ。。。と思ってました。バジルさんのおっしゃることが今ピンと来ました!音色は個性、それより響いていることが大事、理由はわかりませんがそのとおりだと思います!オンリーワンでいいじゃないですか(笑)!!!
     どうも良くも悪くも音が「するどく飛んでいる」みたいで、オーケストラでは「うるさいっ!」と言われます(笑)。私はこれは「デリカシーのある吹き方」でなんとかできるのでは、と思っています。子供の話し声が大人と同じ音量でもうるさく聞こえるのは、場に合わせるデリカシーがないから、それと同じ理由です。

    • namanama さん 

      はじめまして!
      コメントありがとうございます。

      いやー、仰っていることよく分かりますよ!!

      わたしの書きたかったことが、願っていた役立ち方を早速して、とても嬉しく思います。

      名だたるホルンプレイヤーたち、みんな音デカイですよ(笑)
      pp もめちゃくちゃ上手ですけれどね。

      音色はバラバラでも、響いていれば、とくに楽器の系統が似ていれば、ハーモニーは調和します。

      ベルリンフィルのホルン奏者たちも、音色はみんなそれぞれ全然ちがいますものね。

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