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先日、周りが良いという音色を自分は好きになれず、そのまま基礎練習をやっていると不調になってしまって悩んでいた中学生トロンボーン吹きから、悩み相談が来ました。
そのやり取りです。
【質問】
バジル先生、お久しぶりです。
以前、質問をしたトロンボーンを吹いている者です。
最近、また不調な日が続いています。
また、「ドッペル」が出てしまうのです。
最近は演奏会が近いので体育館などの広い場所で練習するようになりました。
そのときに、チューニングなど一人で吹くとき、うまく吹けないのです。音が詰まって出て行かない感じで。
それで顧問の先生からは「音が小さい、響いていない」と怒られ、思い切って大きな音で吹くと、ドッペルが出て余計に怒鳴られます。それだけでなく、大きい音で吹くと、長く続きません。すぐに疲れてしまいます。
その日から吹くのが怖くなってしまいました。
どうにかしてその課題を克服したいです。
音を響かせる方法と、ドッペルなどの不調から抜け出す方法はありますか?
【バジル】
こんにちは
あなたの場合、ドッペルは気持ちのパロメーターみたいですね。
あなた自身は、どうする必要があると思いますか?
わたしにはどうしても、顧問の先生に問題があるように思えます。
顧問の先生の言うことを、自分に「感染」させてしまわないというか….。そういう自分自身を守り励まし勇気付ける作業が必要に思えます。
【質問者】
お返事ありがとうございます。
普段の練習ではバジル先生が教えてくれた、「もし、~じゃなかったら」ということを練習前に想像したり、嬉しかったことや楽しかったことを思い出して吹いたり、とにかく前向きなことを思い出して吹いています。
それでもいざ、全体で吹くと練習と全く違う音が出てしまいます。
バジル先生が言うとおり、気にしすぎないように、つらいときは自分を励ますようにしているのですが、どうも上手くいきません。
【バジル】
つまり、「合奏」という状況になると、ひとりの練習で使えていてうまくいくプランが使えないわけですね?
以前のやり取りで見つけた、
・マウスピースを口にしっかりつけ
・唇をちょっとしっかりめに閉じて
・自分は練習不足である。だから基礎練習をしなきゃいけない、という考えがもし自分の中に無かったら…と想像して
・自分はうまくなれるから基礎練習をやろうと、という考えに変えて
・演奏する
という流れを合奏でやってみるとどうなりますか?
【質問者】
前と同じアプローチでやってみました。
ドッペルは出ませんでしたが、音がうまく発音できなくて、最初に違う音が入ってしまう風になってしまいました。
吹く直前はイメージして落ち着いていられるのですが、いざ吹くとなると怖くて逃げ出したいと思ってしまうときがあります。
たしかに普段の練習から音が小さいし、音の発音が上手いわけでもありませんが、練習したことがたった一度のチャンスで消えてしまうのは、悔しいです。
三日間、バジル先生が教えてくれたことを試してみましたが、直前で気持ちがなえてしまいます……。
もう、人前で、一人で音を吹くのが本当に怖いです。
【バジル】
ふむふむ….
「合奏で失敗したら、それはどんな練習をしていても自分の努力は無意味だ」
とか
「合奏で失敗したら、それはすなわち自分は絶対的にダメだということだ」
みたいな想いがありそうですね。
いかがでしょう?
【質問者】
はい、本当にその通りです!
合奏でできなければ意味がないとか、全部無駄になるとか……。
いつもそう思います。
【バジル】
「合奏でできなければ、意味がない」
1:それは本当ですか?
2:本当と思っている時、自分はどんな気持ちや状態になったり、どんなことを考えたり、どんな人間関係になっていますか?
3:もしその思考がなかったとしたら、どんな感じがしますか?どんな自分がそこにいますか?どんな光景が見えてきますか?
4:逆を考える
・合奏でできてしまうと、意味が無い
→それが事実の可能性はありますか?
・合奏できできなくても、意味がある
→それが事実の可能性はありますか?
・合奏でできてもできなくても、自分は楽器を続けるし、関係なくうまくなっていく
→それが事実の可能性はありますか?
【質問者】
「合奏でできなければ、意味がない」
1:本当じゃないけど、そういわれてきました。
2:半泣き状態で楽器を吹いていて、音がぶるぶる震えて、むなしくなってイライラして人間関係がどんどん悪くなります。
3:楽な気がします。楽しそうに吹いている自分がそこにいる気がします。
「合奏でできてしまうと、意味が無い」
→事実ではないと思います。
「合奏でできなくても意味がある」
→そう思います。
「合奏でできなくても、自分は楽器を続けるし、関係なくうまくなっていく」
→そう思うけど、意味がないと教え込まれていたので、事実かどうか分かりません。自分の逃げ道を作っているようで、いけない気がします。
【バジル】
なるほど。
断言しましょう。あなたが「教え込まれた」ことは、間違っています。
あなたは、合奏でできてもできなくても、関係なくうまくなっていきます。
….数日後….
【質問者】
バジル先生。
きのう演奏会があって、合奏で一人で吹いたとき緊張して、唇が震えてあまり上手く吹けなくて、怒鳴られて、演奏ぎりぎりまで泣いていたんです。
でも、本番は今までで一番上手に吹けて、バジル先生が言ったこと本当だった!って、少し自信がつきました!!
【バジル】
わあ!
それはよかったですね!
やっぱり、あなたは音楽や本番にはちゃんとできるんですよ。
苦手なのは、変な雰囲気と変な威圧がある合奏だけですね。
つまり、この先、ちがう雰囲気の団体に所属するようになれば、いまの悩みは無くなるだろう、ということ。
先々、どんな団やグループに自分が関わるといいか、良い予習になっていますね。
自信もっていいからね (^^)
Basil Kritzer
本当にこんな事ってあるんですね。私がちょっとしたご縁で一緒に何度かアンサンブルをした当時中学3年の女子も最初はチューニングで音を出すにしても体中に力が入りまくっていて音がカタくて伸びないのに驚いた事があります。たかがチューニングでなんでこんなに緊張して音を出すのか不思議に思いました。
その時は「まだ腹式呼吸がよくわからない」と言われたのでまずは体中をリラックスして自然な深呼吸をしてから楽器を吹いてもらいました。口の周りの緊張も解けてスムーズに発音して良かったのですが今度はチューナーの数値を気にします。その機械の示すとおりに吹かなければいけないみたいな事をいうのにも驚きでした。自分の体の感覚を生かさなければ演奏中の微調整など出来るはずがありません。中学の部活動ではどんな事をしているのか?と不思議に思いながらもまずは音楽が楽しいモノであり、自分自身が楽しいと思えなければ楽器を吹く事は単なる苦しみとか修行でしかなくなってしまうと思い、楽しい音楽をたくさん楽に吹ける時間を作るようにしました。現在は念願の県立高校に入学し、良き先輩や友人達と楽しく音楽をしていると思いますが、思春期の多感な子供達の成長を押さえつけるような教育指導のあり方には問題があると思います。指導される側の方達の根本的な改善をしないとかわいそうな子供達が多くなるばかりです。
山下さん
コメントありがとうございます。
こういうようなことは、いまだに毎日いたるところで進行中です、残念ながら(>_<) 読譜、リズム、合奏技術といったような奏法以前または別種の「音楽に関する技術」も、 もっと楽しく幸せに教え教わる仕組みがないものか、よく思案しています。 Basil