【わたしとホルンとアレクサンダー・テクニーク】
わたしがホルンをはじめたのは、かれこれ17年前。中学1年で吹奏楽部に入ったときでした。
このやたらめったら音が外れる楽器に苦戦しながらも、その音色の深みと、作曲家たちが与えてくれた輝かしいフレーズの数々にすぐに魅了されていきました。
この楽器の魅せられるあまり、通っていた中高の附属大学に進むより、音楽の勉強を専門的にしたいという気持ちが高じていきました。
そうしてわたしは、ドイツの芸術大学でホルンを専攻することになりました。
この大学時代、わたしはアレクサンダー・テクニークの道へと踏み出していきます。ホルンの演奏をもっと向上させたいと願いながらも、その技術の習得に信じられないほど苦労し、努力と練習量に頼り過ぎたせいで身体を痛めたことがきっかけでした。
自分にはもっとできるはずだ―。
そんな想いは心の奥にいつもありましたが、自分の演奏技術の発達は遅く、障害と困難があまりに続き、夢を描くことがだんだん難しくなってきつつありました。
そこで最後の希望として、アレクサンダー・テクニークが残っていました。
すでに書籍などで興味を持っており、自分の悩みや疑問の答えとなりそうな予感はしていました。そこで、ドイツで、プロのホルン奏者でありアレクサンダー・テクニークを教えられるひとがいないか探したところ、二人の先生に出会いました。
ハンブルク交響楽団の副首席などを務めたウルフ・トゥーレ先生。そして、シュトゥットガルト歌劇場などでホルン奏者を務めたルネー・アレン先生です。
この先生たちに、ホルンと、そしてホルンのためのアレクサンダー・テクニークを師事し始めたことで、わたしはそれまで退学を考えていた大学を修了し、完全に諦めていたプロとしての演奏活動も行うことが出来ました。
今回の講座では、こうして始まり、いまも発展し続けている、わたしの「ホルンのためのアレクサンダー・テクニーク」をお届けします。
【ひとそれぞれ、千差万別のアンブシュア】
わたしにとって、そしてホルンを吹く多くのひとにとってもそうであろう悪夢は、「アンブシュア問題」でした。
しかし、わたしの場合は、アンブシュアに実際あった問題以上に、「自分のアンブシュアは間違っているのではないか」という不安に大きく足を引っ張られました。
・顎を張る
・顎を前に出す
・口を緩めない
・高音と低音で口の形を変えない
・アンブシュアを動かしてはいけない
・アンブシュアを固定する
・口をすぼめる
・アパチュアをキープする
・アパチュアを開き過ぎない
etc….
そういったことをたくさん言われたり、耳にしたりしますよね。
わたしは不器用なのか運動神経が悪いのか才能がなかったのか、実を言うとこれらの意味がほとんど理解・実感できないことが多かったですし、身に付けることに大いに苦労しました。
その過程で、自分にとって意味が通じるようにする必要がありました。
・どうして、骨格がひとそれぞれちがうのに、ひとつの見た目の型ができなきゃいけないのか?
・どうして音によって条件は変わってくるのに、口を動かさずに音を変えることができるというのか?
・どうしてやっていると余計にバテるのに、アンブシュアを固定しなきゃいけないのか?
わたしが物事を字面で真に受けすぎるのが悪いのでしょうが、その理屈は全然分からなかったし、実感も全く得られずにいました。
その疑問を抱きつつ、自分が少しでも自分の演奏を良くしていくなかで、アンブシュアというものを、本に書いてある「理論」や、先生から教わる「常識」からいったん離れて、解剖学や論理的思考を頼りに考え直し、自分自身に説明をしてあげて、理解と実感を掴む作業をずーっと続けてきました。
今回の講座では、そういった「アンブシュアのドツボ」に悩んでいる方に、アンブシュアの悩みを手放してもっと音楽の演奏にまっすぐに取り組んでいけるような観点やアドバイスを提供したいと願っています。
【腕も身体も、もっとラクになる構え方】
わたしは本当に、ホルンという楽器に才能が無かったのだなと思います。
アンブシュアだけでなく、構え方にも中学生のころから悩みばかりでした。
・楽器が下がってしまう….
・楽器が重くて重くて疲れてしまう….
・腕や肩、首がすぐにカチコチに凝ってしまう….
・構えの見た目がなんとなく悪い….
・ベルアップすると吹けない….
高校生のころには重度の背筋痛と腰痛を発症し、一時は楽器が演奏できなくなるほどでした。
ホルンをラクに構えるコツとしては
1:左を見る(顔、頭、首だけ)
2:その唇に向かってマウスピースのリムを当てるという意識で
3:手を顔に持ってくる容量で
4:肘を畳み
5:肩関節と胸鎖関節を動かす
これだけでずいぶんラクに自然に効率よく構えることができることが、段々と分かってきました。
ぜひ試してみて頂いて、出来なかったことや分からなかったことは講座でお尋ねください。
【音が外れるのではないかという不安….】
ホルンを吹くわたしたちにとって最大のストレスは何といっても、音が外れることへの不安ではないでしょうか。
ホルンで音を外さないということは、不可能です。
世界的なソリストでも、協奏曲を二回演奏したら一カ所は音が外れる、そんな楽器なのですから!
「それは分かっている、けれども….
そんな声が聞こえてきそうです。
しかし、実は悩みや不安の多くが、不可能なことを可能にしようとしている、もしくは可能でなければならないと信じ込んでいることに起因しています。
音が外れるという問題とそのストレスには、
・奏法そのもの
・不安への反応の仕方
・演奏のコンセプトそのもの
・体調や精神状態
・身体の使い方
がひとそれぞれ固有の「ブレンド」で関係しています。
講座では、それをひとつひとつひも解いて、より建設的なプランと取り組み方を提案していきます。
【その他】
講座では一日かけて参加者全員とマスタークラス形式でミニレッスンを行いながら進めていきます。
・スタミナ・耐久力の問題
・呼吸や息の問題
・お腹の使い方
・タンギングやアーティキュレーション
・音量や音域
などなど、ぜひあなたの悩み・不安・課題を「レッスンテーマ」として、楽器と一緒にご持参ください。
なおその際、例えば高音の悩みなら、その高音の悩みを象徴するフレーズや曲などを「題材」として決めて準備してお持ち頂けるとさらにレッスンが有意義になります。
みなさまにお会いできることを楽しみにしております!