現実を受け入れる

「不安」というもの、音楽にはなぜかつきまといますね。

不安であるか安心しているかということと、身体の状態、マインドの状態とは、不可分の関係がありますね。
これを読んでいるあなたもきっと実感を持っておられることと思います。

不安「感」と言いますが、この「感」はいったい、
感覚の「感」なのか、感情の「感」なのか、いったいどちらでしょうか?

私はこれはきっと両方の混ざったものなのではないかと思います。

これは正確な分け方ではないですが、理解し易いざっくりとした分類として、感覚はより神経や神経電気信号で伝わるものであり(とは言っても神経や感覚受容器からの伝達は化学物質が深く関与していますが)、感情はどちらかというとホルモンや化学物質の分泌である面が濃いと考えます。

では不安感覚と不安感情についてみてみましょう。

不安感覚は、「不安」とわたしたちが名付けている状態のカラダの緊張的な状況から受け取るものであり、
不安感情は、そういうカラダの状態において発生する感情だととりあえず考えてみれますね。

すると、ポイントは不安を起こす「カラダの緊張」になってきます。

ではこのカラダの緊張、一体何なんでしょう?

私たちの生体システムはある条件において必ず緊張状態に陥ります。
それはどんな状況か?

「不可能なことをしようとしている」ときです。

たとえば、自分の筋力では持ち上げられない重いものを持ち上げるとき。
どうなりますか?全身力んでしまいますよね。

あるいは、自分の限界を超えて速くまたは長く走ろうとするとき。
どうなりますか?やはり全身が力んでしまいます。

レッスンの場面でよくあるのは、腕の付け根が肩口にあると間違って思い込んでいる人が、そこから無理に腕を動かそうとして肩凝りや痛みを訴えているケースです。(ちなみに、首元にある鎖骨と胸骨の関節が腕の付け根で、それが分かった人は肩凝りがあっという間に消えたりします)

どれにも共通したことがあります。
何でしょう?

「不可能なことをしようとする=現実に逆らっている」

ということなのです。

実は、身体的であれ環境のことであれ人間関係においてであれ、現実に逆らうと人間は必ずカラダが緊張します。

人間関係の場合。
たとえばいつまでたっても話を聞いてくれない実の母親の例を考えてみましょう。

現実:母は話を聞かない
自分:母に話を聞かせたい

話を聞かないという現実の母に話を聞かせようとすると、どうなるでしょう?

聞かせようとする本人が緊張します。
徒労に終わる場合も多いでしょう。

むしろ、母は話を聞かないのだという現実を前提にした方が、
3不満を感じないし、さらにうまく自分のことを伝える方法が思い浮かぶ可能性が高いでしょう。

この方がストレスも緊張も少ないのです。

さあ、音楽を演奏する私たちに話を戻しましょう。

不安なあなた。
アガルあなた。
緊張しているあなた。

自分にできること以上の事をやろうとしていませんか?
いまの自分という現実に逆らっていませんか?

これは非常に重要なことです。

たとえばあるフレーズがうまく演奏できないまま演奏会を迎えたとします。
できるだけの練習を重ねてもなお、まだうまくできないところがある。

そんな自分がステージに立った時に、できていない自分を否定したり乗り越えようとしながら、
聴衆のための演奏ができると思いますか?

できていない自分。
失敗する自分。

それを受け入れずに、いったいどうやって心のこもった演奏ができるというでしょう?

しかし私たち音楽をやる人たちは、みなより良いものを目指します。

これが仇となって、「きょうの自分」という現在地を否定しようとするのです。
現在地は、まぎれもない現実です。だれしもが許す限りの努力をやっての結果が「いま」という現実です。

これに逆らっても、どこにも行けません。

結果は、生体システムが混乱に陥り(「いま」は間違っている、という意識の指令が来ているわけですから!)全身の緊張につながります。

パラドックスではありますが、最良の演奏のための一番大事なステップが、
「いまの自分という現実を受け入れ、そんな自分を愛する」ことなのです。

スポーツの世界などで、「窮地に追い込まれ、開き直ったら素晴らしいプレーができた」
という現象がありますが、これと同じことです。

自分を受け入れる。

良い演奏のために自己否定は必要はありません。

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現実を受け入れる」への2件のフィードバック

  1. 私も先輩みたいな音がだせなくて自分を否定していました。ああふけないとだめだって、そしたら緊張して全然ふけなくてふるえていました。演奏の時も自己否定しかしていませんでした。今の自分を受け入れて自分らしい音、を作っていきたいです

  2. 桜さん

    おはようございます。自分で自分を否定されていることに気づいたのですね。それは素晴らしいことです。自分という存在は、音楽を奏でてくれる大切な存在です。自分を大事に、自分のために、楽器と取り組んであげてください♪

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