このたび翻訳するのはチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団ホルン奏者、ナイジェル・ダウニング氏の著作「Singing on the Wind」です。これは邦訳すると「息にのせて歌おう」とでもなるでしょうか。
ダウニング氏はスイス・チューリッヒ芸術大学のホルン科教授です。ちなみにこの学校の教授陣、かの有名なラトヴァン・ヴラトコビッチ氏、そしてよく知られたホルン奏者であるイフォー・ガス氏の3名が教授を務めており、しかも3人で全員の生徒の教育にあたるそうです。三者三様の優れた演奏と考え方の中で学べる環境は本当に羨ましいですね。
ダウニング氏は、とにかく自らの頭を使って考えるのが得意なようで、その流れでアレクサンダー・テクニークのレッスンを定期的に受けており、奏法や学習の理解にアレクサンダーテクニークが非常に根本的なレベルで活きていると述べています。今回訳する著作にもそれはよく表現されえています。
実は私バジルがドイツ時代に習っていた4人のホルン奏者のうちの一人であるウルフリード・トゥーレ氏は元ハンブルク交響楽団副主席ホルン奏者で、このダウニング氏の教え子でもあります。トゥーレ氏は現在アレクサンダーテクニーク教師として活躍しており、私がアレクサンダーテクニーク教師になる気持ちを固めるに至った一番大きな影響を与えてくれた方です。そういうわけで、私はある意味ダウニング氏の孫弟子にあたるわけです。
ではダウニング氏の著作「Singing on the Wind」について本人のコメントです。
『この著作の目的は、ホルン演奏の精神的&身体的側面のいくつかに関して明確な説明を提供する
ことにある。
解説を通じて、書いてある事と自身の吹き方をぜひ比較してみると良いだろう。そうすることで自分
自身が実際に現実には『何をしているのか』に関しての気付きが高められる。
ここに示されるエクササイズを使って、自分が何をする必要があるのか(そして場合に依っては何を
しなくていいのか)より意識的になり、そうすることで演奏を高められる。全ては望み通りに演奏す
るために。
「Singing on the Wind」はホルン演奏の基本的な要素を提供する。2004年に出版され,
「The Horn Call」や「The Horn Player」でとても好意的な批評を頂いた。リンクから、英語版と
ドイツ語版の両方が入手可能である。』
原著はこちら→http://www.hornplaying.ch/
では次の記事から本編を順次訳して掲載していきます。
(*本人の明確な承諾を得ており、著作権はダウニング氏、そして翻訳の著作権は私バジルにあり
ます)
アレキサンダーテクニーク
以前ノイネッカーさんに習った時、アレキサンダーテクニークという言葉を耳にしました。 ホルンのアレキサンダーとは何の関係もありませんよ。 心身の不必要な緊張に気づき, これをやめていくことを学習するものだそうです。今までいろんな資料をもとに自分なりに勉強しましたが、Facebookで知り合った方がアレキサンダーテクニークの教師さんのようで、ブログもやってらっしゃいました。 まだ全部読んでませんが、とても興味を引く内容ばかりです。 一度見てみてはどうでしょうか。 http://basil-horn.blog.so-net.ne.jp/ バジル クリッツァーさんのブログです。 日本語ですから、大丈夫ですよ。 彼はホルンを演奏しますが、アレキサンダーテクニーク自体はホルン奏者のために考えられたものではないので、ステージでパフォーマンスする人は、どなたでも参考になると思います。
Singing on the Wind 目次
チュリーヒ・トーンハレ管弦楽団ホルン奏者、ナイジェル・ダウニング氏。彼のいわば「練習の秘訣決定版」とも言える著作『Singing on the Wind』の訳を半年かけて終えました。 そのダウニング氏が、いまオケのツアーで来日しています。 ツアー中、なんと東京芸大で彼のセミナーが実現しました。 事前にコンタクトを取っており著作の訳をしていて、お互い同じアレクサンダーテクニークの先生に習ったという共通点もあり、私が通訳を担当しました。 当日は芸大のホルン科をはじめ数多くの将来有望な学生さんが参加して下さいました。 その著作『 Singing on the Wind』要約版を著者の許可の元翻訳し、公開します。フルバージョンの書籍はアマゾンで購入できますが、現在英語・ドイツ語のみです。 Singing on the Wind ー目次ー はじめに 1:息にのせて歌う 2:練習の黄金則 3:姿勢 4:音を奏でる 5:プランA・B・C 6:歌う事について 7:プランA 8:プランB 9:プランCーその1 10:プランCーその2 11:健康にご注意 12:まずはスラーその1 13:まずはスラーその2 14:自然倍音を用いたエクササイズ 15:分散和音 16:結論