トランペットをされている A さんより質問を頂きました。
【Aさん】
いつもブログ拝見しております。私はトランペットの演奏家を目指している24歳男性です。問合せ先のアドレスにメールを送ったのですが、返信がないため誤って送ってしまったのだろうと思い、コメントさせて頂きました。
私は10歳でトランペットを始めてから、ずっとアンブシュアに悩まされてきました。いわゆる、粘膜奏法という形に気がついたらなっており14、5歳の頃にさらに酷い状態になってしまいました。具体的にはマウスピースがかなり左下にズレており、上唇がほとんどリムの内側に入っていない状態です。
何度も改善しようと試みたのですが、うまくいきません。マウスピースを当てた感触は、上唇をリムに収めた方がいいですし音も悪くないですが、当然ながらまともに吹けません。今は、アンブシュアを改善すべきかどうか悩んでいる状況です。どうか、ご教授お願いします。
【Basil】
マウスピースの位置、当て方というのは、もともとその当て方で音が鳴っているならば、気にする必要がないと思います。粘膜奏法といっても、アフリカ系アメリカ人のプレイヤーたちは唇の大きさと形状から、その多くが「粘膜奏法」という見た目ですが、全く問題になっていませんよね。
次の記事も参考になるかと思います。
「金管楽器のアンブシュア恐怖症その1」
「金管楽器のアンブシュア恐怖症その2」
その一方で、
>> 改善しようと試み、マウスピースを当てた感触は、上唇をリムに収めた方がいいですし音も悪くない
ということは、その新しい「当て方」はAさんにとってよい「当て方」の可能性もあります。
長い目で見ると、プラスにはたらくかもしれません。
しかし、もともとの当て方で獲得した音域や技術的なレベルに達するまで、数ヶ月〜数年かかる可能性もあります。
一方で、ひとによっては数週間で新たなアンブシュアに適応できることもあります。
【Aさん】
素早い対応、感謝します。
>>ということは、その新しい「当て方」はAさんにとってよい「当て方」の可能性も高いです。
ということは、これまでのアンブシュアは限界がきておりアンブシュアをアップデートする必要がある可能性を示唆しておられるのでしょうか。
また、その他(息や身体の使い方等)のアプローチを変えることで新しいアンブシュアが身に付くのでしょうか。それとも、思い切ってマウスピースの当てる場所を変えてみた方が良いのでしょうか。アンブシュアを変える際の方法や注意点などがあれば教えて頂けませんか?
【バジル】
>>ということは、これまでのアンブシュアは限界がきておりアンブシュアをアップデートする必要がある可能性を示唆しておられるのでしょうか。
分からないです。
これまでのアンブシュアが、見た目がどうであれ限界が来ているのかどうかの判断は、そのアンブシュアになっていった経緯で判断すべきと思います。
楽器を始めたときに、とくにプレッシャーや変な情報がなく、自然と吹き始めたそのアンブシュアであり、そこから経年で自然に変化していったアンブシュアなら、本来限界は無いと思います。
一方で、ものすごくプレッシャーをかけられたりして、初期に無理やり高音や低音を出そうとしていたり確実に音を鳴らそうとしていた中で出来上がったアンブシュアならば、これは本来もっと自然で楽なアンブシュアが別に眠っている可能性があります。
Aさんがどちらに当てはまるかは、わたしにはわかりません。
>> また、その他(息や身体の使い方等)のアプローチを変えることで新しいアンブシュアが身に付くのでしょうか。
アンブシュアが身に付くというよりは、ひとりでに変化したり改善したりします。
しかし、アンブシュアも身体の一部ですから、そこだけ切り離して、「他を変える事でアンブシュアを変える」というのは不自然なことになるかもしれません。
同様に、アンブシュアだけ変える、というのも実は有り得ないことです。
何事も、まるごとひとつ、全体として変え、変わっていくものです。
>> それとも、思い切ってマウスピースの当てる場所を変えてみた方が良いのでしょうか。
そこが、今回のやり取りではわたしには判断できないところです。
わたしの経験上、本当にアンブシュアを変える必要があったり、変えることで益するケースは、「変えなければいけない」と言われたひとや、変えようとしているひとの3〜4割程度に留まります。
一般的には、アンブシュアに原因が求められ過ぎ、と言えます。
>>アンブシュアを変える際の方法や注意点などがあれば教えて頂けませんか?
先に紹介した記事がまさに該当します。
また、わたしのブログを「アンブシュア」で検索すれば、何十個も記事がでます。
【Aさん】
たくさんの人達の質問等あるでしょうに、丁寧に回答して頂いて有り難う御座います。
悩み、吹っ切れました。私は、今まで何か上手くいかないのをアンブシュアのせいにしていたのだと思います。周りから入ってくる色々な情報や自己否定的な考えから自分は変なんだ、人とは違うんだ、と思い込んでいました。
だから、アンブシュアを変えなければいけないんだと思っていたのだと思います。
でも、そんな考えから何かをしてもきっと上手くいかないですよね。バジルさんの回答や過去のブログの記事を読んで、ハッと気付かされました。本当に感謝します。
結果、アンブシュア変えることにしました。自分の辿ってきた道を考えると、いつも目の前の課題ではなく到底届きそうもないような課題に取り組むことを余儀無くされてきたからです。
また、今までのような自己否定的な思いからの挑戦ではありません。自分の夢見るより美しい音、より美しい音楽を自分に出来る方法で到達する為です。
本当に有り難う御座いました。これからも応援させて頂きます。
【バジル】
そこまで力になれたこと、とても嬉しく思います。
自己否定が「癖」だとすれば、自己肯定は「技術」だ、と思います。
お互い頑張りましょう。