楽器を練習する際の「演奏能力の向上」という側面を考えたときの、練習の仕方について。
二つの性質があると思うのです。
①正確性
そして
②全体性
です。
これは相矛盾するものではないし、分離したものでもありません。ひとつの全体の中の同じ延長線上の異なる位置のようなものです。
わたし個人で言えば、練習の題材でそれらの性質が表現されます。
正確性
・完ぺきなアタックと音程を目指す練習
・音程と音量をなるべく完全にコントロールしながらクレッシェンド&デクレッシェンドするロングトーン
全体性
・スラーの音階
というように。
両者は分断しているわけではなく、例えばスラーの音階を吹きつつも一個々々の音の所在をかなりピンポイントで意識するときもあれば、「狙いを定める」ことをわざとあまりせずに高い音を一音だけ短く出すことをやってみる、そんなときもあります。
ポイントは、練習の題材やフォーカスの性質から得られる情報の質の多様性です。
練習の意識の仕方、設定のやり方に応じて観察のタイプが変わるからですね。
観察の対象を限定して、狭い範囲を綿密に観察すると・とても精確で詳細な差異が分かる細かいデータが得られる反面、データが細かかったり、多すぎたりして観察範囲外の全体の働きが見えづらいことがあります。
観察の対象を広げて、より全体を俯瞰すると・全体像が見えて個別のテクニックなどがつながりやすい。全体の働きが分かってくる。その反面、細かいコントロールに必要な正確な情報が不十分になったり、ぼやけたりすることがあります。
わたしは、時期によって、意識的ではないですが双方のタイプのやり方を行ったり来たりしてきました。そうするうちに、だんだんと、ひとつのことをやりながらももう一方を視界に入れておけるようになって来ました。全体と詳細が両方見ておけるようになってきたような。
ポイントは、そのときどちらが自分に必要かを、柔軟に判断して、柔軟に選択できれば、双方の統合も、どちらかの意識的選択も可能になってくると思います。