—
あるとき、音大での授業で「呼吸の深さ」についてこんなことをやってみました。
黒坂洋介さん著『呼吸を変えれば音楽が変わる』にある、
◎吐ききった状態を0、満杯に吸いきった状態を10とする
◎その間の各数字の段階で吸ったり吐いたりしてみる
を紹介しやってみたのです。
まず、各自の主観で
『6まで吸って5まで吐く』
をやりました。みな、自然な呼吸、ラクな呼吸とその場では感じていました。
つぎに、
『5まで吸って4まで吐く』
『4まで吸って3まで吐く』
『3まで吸って2まで吐く』
『2まで吸って1まで吐く』
と進めました。
出席者に尋ねると、
『3まで吸って2まで吐く』
からは全員が《呼吸が浅い》と感じました。
つまり、息の残量が少ないのを、「浅い」と感じる・言うのは共通していたということです。
しかし、これは『しっかり吐いている』とも言えますね。
次に、
『6まで吸って5まで吐く』
『7まで吸って6まで吐く』
『8まで吸って7 まで吐く』
『9まで吸って8まで吐く』
と逆方向に進めました。息の残量がどんどん増えて溜まるような状態ですね。
すると、この状態については
《呼吸が浅い》と言う・感じるひと
《呼吸が深い》と言う・感じるひと
がちょうど半々になりました!
つまり、
息の残量を《浅い・深い》でなぞらえるひとと、呼吸の状態や感覚を《浅い・深い》で喩えるひとがいるということです。
たくさん吸えていて、たくさんの息が残っていることを
《浅い》
と感じたり言ったりするひともいるのです。
おそらく、肋骨の上の方の動きが目立つ・感じやすいので、その『高さ』を《浅い》と表現するのでしょう。
しかし、量としては「多い」のです。
ということは、
量の多い少ない
=深い浅い
で把握するひとと、
肋骨の動く場所や感覚の位置
=深い浅い
で把握するひととでは、全く同じ状態を正反対の言葉で表現しているわけです。
・・・こりゃ呼吸法の伝授継承が混乱するわけだ!
わたしの考えは、《浅い・深い》で言い表さなきゃいい、というものです。
量や、動きの場所、感覚の位置で言い表せばいい!
目に見えてるもの、
肉体感覚、
どちらも主観でいいから『細かく、正確かつ一貫した単位で』言葉にしようとするのは、すごくオススメですよ!
Basil Kritzer