吹奏楽部員に指導する大人の方々へ
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練習すれば、上手になる。
練習すれば、できなかったことができるようになる。
その等式が成り立っていれば、実はそれはとても恵まれている状況です。
あとは、良いお手本を求めて、モチベーションが高まり続けるような刺激を求めていけば、練習を頑張ることができて、頑張ったぶん上手になれるわけですから。
しかし、この等式はいつも・誰にでも成立しているわけではありません。
◎すごく努力しているけれど、上手にならない。
◎たくさん練習しているけれど、できるようにならない。
◎とてもやる気があるのだけれど、成果が出せない。
そういう状況にある子どもたちが、たくさんいるとわたしは考えています。
等式が成立していない理由は、未知のものを含めて様々にあるでしょう。
☑ 使っている楽器に大きな欠陥がある
☑ 奏法に物理的な問題がある
☑ 練習のやり方に問題がある
☑ 原因は不明だが、何かがうまくいっていない
など。
もし、本当にやる気や練習量の問題であれば、指導者の仕事は
★やる気を刺激してあげる(ご褒美、お手本、遊びなど)
★確かな成果が少しだけでも感じられるよう練習に付き合ってあげる
ことにあります。
これで生徒がちょっと前進すれば、あとは基本的に生徒自身の問題になってきますので、指導者にできることはゼロではありませんが限られてはきます。
しかし、こういったサポートをせずに『できていない=やる気・努力が足りない』と断定するのは指導者の怠慢と言えますし、実は等式が成り立っていない可能性を検討するためにもサポートが必要です。
努力・練習が上達や成果につながっていないときこそ、指導者の器・腕の見せ所です。
ただ、そんなときは指導者にとっても「ラク」な状況ではないでしょう。生徒を観察し、原因の分析をし、仮説を立て検証をしていくという作業が必要になりますから。
また、様々な原因がありうるからこそ、一回でその場で答えが出るとは限りません。生徒が頑張っているのに成果が出ないという酷な現実に向き合うのは、指導者にとってこれまたやはりラクなことはないでしょう。
努力・練習が上達にそのままつながるように必要条件を見極め整えていくプロセスは、指導者の側にも落ち着きと辛抱が求められます。
生徒が悪戦苦闘しているのを見ていると、こちらも気持ちが苦しくなったり不安になったりするかもしれません。
大事なのは、その不快感に負けて、「練習すればなんとかなる」という結論に逃げないこと。生徒の努力量や態度、才能などのせいのもしないことです。
成果が出ない苦しさ・不快感をそのまま生徒と一緒に受け止め、味わいましょう。
でも、
『潜在的には必ず、この子も上達できる!』
という信念だけはしっかり持っていてください。また、その信念は言葉や態度で伝えるのが大事なときもあるでしょう。
大丈夫。
できる。
やれる。
それを『結論』とし、その結論に至るための過程として、
《努力・練習=上達・成果》
の等式が成り立つ方向へ向けて、考え・調べ・試していきましょう。
Basil Kritzer