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この記事では、アメリカのトロンボーン奏者ドナルド・ラインハルト(故人)を源流とする金管楽器奏者のアンブシュアの研究に携わっているアメリカの奏者たちが実践したり教えたりしていて、わたしも自分の練習に取り入れている『アンブシュアのセッティングの手順』を紹介します。
この記事で述べている内容は、研究者たちの述べている手順を、
体全体の動きの効率なども考えてわたしなりの言葉にしたものです。
✳︎金管楽器奏者のアンブシュアの研究に関する記事✳︎
・金管楽器の3つの基本アンブシュアタイプ
・ドナルド・S・ラインハルトの教育法〜9つのアンブシュアタイプ〜
・そのほかアンブシュアタイプに関係する記事一覧
【まずは1日5分から】
以下の手順は、合奏中や演奏の本番でやることというよりは、
ひとりで練習しているとき、特に技術的なことを意識して練習しているときに実践するのがよいでしょう。
もっともオススメなのは、
・楽器を吹き始める最初の5分〜10分
・合奏やパート練習の合間
・1日の練習や演奏が終わったあとの5分程度
といったタイミングで、集中力の続く時間内で、かなりしっかり意識してやってみることです。
わたしは、これらの手順に則って楽器を演奏する時間を作ることが、
◎アンブシュアを安定させる
◎低音域から高音域まで矛盾しないつながった吹き方を作っていく
◎調子や状況による波があっても自分の吹き方を守る
ことに非常に役立つと感じています。
ぜひ取り入れてみてください。
【アンブシュアのセッティングの手順】
✳︎マウスピースを楽器にセットして、実際に音を出す状況でやります✳︎
①これから発音する音を決めて
②上下の唇を、すこし前方向に動かしつつしっかり閉じ合わせます。
③そうやって閉じ合わせた唇とマウスピースを触れ合わせます。
④マウスピースが閉じ合わされた唇に触れたら、そのままマウスピースを顔の方向に動かして、歯や歯茎のあたりの骨でマウスピースからの圧力を感じられるくらいしっかりと、マウスピースを顔に対して安定させます。この安定をキープし続けて先に進みます。
⑤鼻か、口の横から息を吸って
⑥唇や、唇の周りの筋肉を全体的にマウスピースの方に押し返すようなつもりで前方向に動かし
⑦発音します。
↑
考えることが多いですから、演奏の真っ最中にここまで意識しましょうということではありません。
しかし、意識していてもしていなくても私たちはそれぞれ何らかの動作によってアンブシュアを作り音を生み出しています。
であれば、その過程を意識化できると、より良い方法でアンブシュアを作れるようになりますし、
何か調子が悪いときや緊張しているときなども、意識的に演奏の基本中の基本を立て直すことがしやすくなります。
最初は面倒に感じたり、窮屈に感じたりするかもしれません。
そういう場合は、手始めに1日の最初の5分間だけでもこの手順を意識して発音し、
そうやって発音しながらウォーミングアップしてみてください。
それを3日続けるだけでも、多くのひとは何か良い手応えがすこしは感じられると思います。
良い手応えがあれば、ぜひ毎日のようにやっていきましょう。
Basil Kritzer
はじめまして。
遅い時間に申し訳ございません。
僕はある音楽大学でトランペットを専攻しています。
三週間ほど前から、先生にアンブシュアを変えるしか今の問題点は解決しない。と言われました。
原因としては、「粘膜奏法」により倍音の薄さ、音量の限界、発音の不明確さが多く挙げられました。
また、吹く前に唇を閉じられないという事も原因の一つです。
今はアンブシュアを変えて今までの問題点を意識しながら吹いていましたが、音がちょっとずつ鳴るようになりました。
ただ、今までのアンブシュア時代にお引き受けさせて頂いた仕事が多数あり、そのリハーサルや本番の度に昔のアンブシュアに戻して吹いています。
そうでないと音程も安定さもかなり欠けるからです。
そのような事があるので、かなり悩み始めてしまいました。
アンブシュアを変えた経験がないため、このような状況の時はどう対処していけばいいでしょうか。
また、変えたアンブシュアでは何故か中音域が今までの倍ラクになったのですが、低音がかすりもしません。ロングトーンをやっても1秒で消えてしまいます……
質問が多くて申し訳ございません。
宜しくお願い致します。
松井さん
練習は自分にとって正しい吹き方だけを徹底的に練習し、
仕事はどんな吹き方を使ってでも乗り越える。
そういう割りきりが必要かもしれませんね。
はじめまして。
いつも拝見させて頂いております。
私はユーフォニアムを吹いている高校2年生です。
ユーフォニアム自体は小3からはじめており、その間ホルンやチューバをやりましたがどちらとも一年未満です。
最近、楽しく楽器を吹くことができません。
今までは演奏するのが楽しかったのですが
ここ最近、楽器を吹く上での悩みが
今まで以上に増えてしまったのが
原因だと思います。
じゃあそれまではなにも考えないで吹いていたのかというと、そうではなくて
深く考えすぎていなかったんだと思います。
一番の問題がアンブシュアです。
バジル先生のこのサイトも沢山参考にさせていただきました。
ですが、なかなか思うようにいかないことも多く、気にしすぎるがゆえ
音を出すのが怖くなってしまいました。
1 吹く直前に息の流れが止まる
2 唇がかたくなる
3 唇をひいてしまう
(4 高音を出すにつれて下唇を巻いてしまう)
のような問題が出てきました。
ユーフォニアムの一番の魅力である
あの柔らかい音色も台無しです…
アンコンもあるのですごく悩んでいます。
長文になってしまい申し訳ありません。
よろしくお願いします。
高倉さま
この本に書いてあることに沿って、まずは取り組んでみてください。
http://basilkritzer.jp/archives/7327.html
ちなみに4は、おそらく悪い・間違ったことではありません。
場合にもよるけれど、大抵ね。
Basil
お返事ありがとうございましたm(_ _)m
4ですが、本当に唇がかたくなってしまい振動している
感じがなく、音も前より
きつくなってしまった気がするのですが、ゆっくり練習していけば良くなるのでしょうか?
巻く感じは、正しいことである場合が多いです。
巻くのが問題になってるとしたら、その原因は巻くことでなくアンブシュアの支えの問題の可能性があり、この記事がそれに関係しています。
あとはアンブシュアモーションですね。
この本の真ん中くらいに書いてあります。
http://basilkritzer.jp/archives/6878.html
さきほどの本と合わせて、取り入れて下さい。
あと、本気でなんとかしたいなら、やっぱりレッスン来ましょう。ご両親にお願いするか、お小遣い貯めるか前借りしてでも!
Basil
お返事ありがとうございました!
レッスンも考えてみます^^
バジル先生はじめまして。突然の質問失礼いたします。
現在私は大学オケでトランペットをやっているのですが、レッスンを受けた先生には「セッティングの時に口が閉じられていなくて、そんなんじゃ綺麗な音は出ない」と言われました。
事実、私自身も口が閉じられていないのは前々から感じていて、そのせいで高音やpの音が全然出ないのかなと思っておりまして、先生にご指摘いただいてから意識的に口を閉じて演奏しようと思っているのですが、口を閉じるとまともな音が出ず、嫌になって元の広いアパチュアでセッティングしたまま吹いてしまいます。しかし、このままだと全然上達しないんだろうなという気もしています。
無理してでも唇を閉じてセッティングすることはやはり重要なのでしょうか?
お忙しいとは思いますが、回答よろしくお願いします。
さしみさん
「無理して唇を閉じる」のは建設的な選択ではありません。
◎なぜ、アパチュアが広くなってしまうのか?を観察し理解していく
◎どうすれば、その傾向を減らせるのか?を見出していく
◎どうすれば、唇を閉じても良い音が出せるか?を考えていく。あるいは、唇を閉じるとなぜ音がまともに出ないのか?を観察して理解していく
ことが必要だと思われます。
また、コメント頂いたこの記事も参考になるはずです。
あとは、この記事も。
https://basilkritzer.jp/archives/9865.html
Basil
ご返事ありがとうございます。
早速、なぜアパチュアが広くなってしまったのか考えながら吹いてみたところ、セッティングの時に開いたままマウスピースに当てているのが原因であるように思われたので、試しにくっつけて吹いてみたところ、Dより上の音になったら音がでなくなりました。
おそらく唇をしめすぎて唇が震えなくなったのではないかと思います。
とりあえず今後は唇の閉め具合と息のいれ具合のバランスを考えて練習してみようと思います。
ありがとうございました!
さしみさん
『Dより上の音は出なくなったけれど、全体的には良い感じでちょっと慣れればすぐDも出そうでそれ以上の高さにもプラスに働きそう』
ということなのか
『Dより上の音は出ないし、とくに良い手応えもない』
ということなのかで、全然結果の意味がちがうのは分かりますか?
もし後者か、それに近い感じなら、「やっぱりまだ、『閉めようとすること』は良くない方にしか作用しない」という状況であることが分かるのですよ。