アパチュアが真ん中である必要性は無い

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David Wilken氏のウェブサイトより、記事「The Non-Relationship Of Off-Center Embouchure Aperture, Free Buzzing, and Mouthpiece Placement」の翻訳を行いました。

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真ん中から外れたマウスピースの当てる位置、真ん中でない場所に開いたアパチュア、バジングの「無関係性」について
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【真ん中であるべきというのは一見もっともらしいが….】

ときおり、本やインターネットなどで真ん中でない場所に作られたアパチュアについて述べているものを見かけることがあり、それはたいてい、なぜ奏者によってはマウスピースを当てる位置やアパチュアが作られる位置が真ん中から別の方向へ外れているかを説明する文脈においてである。

それらの多くに共通した大まかな考え方は、「真ん中から外れたポイントでバジングしたりアパチュアがあったりする奏者は、これが真ん中になるようにマウスピースを当てる位置を矯正すべきである」というものだ。

表面的には一見、これは論理的に見えるのだが、金管アンブシュアに関する多くの記述がそれなりにもっともらしいのと同様、実は説明として単純化されすぎており、より詳細に観察すれば見つかる事柄から確認されることではないのである。



【アパチュアとは】

まず、読者によっては知らなかったりあるいは不正確な理解しか無いこともあるので、アパチュアとは何なのかを説明したいと思う。

金管楽器におけるアパチュアとは、唇が、吐く息によって押し開けられ、そしてまず第一に唇やその周囲の筋肉の収縮によって、第二により関与は少ないが気圧の均等化によって閉じられることの組み合わせにより現出するものである。

アパチュアを恒常的に開いた穴として、あるいは特定の形やオキサで想像しているひともいるが、実際には常に変化している。

ロイド・レノ氏が、透明マウスピースで演奏するトロンボーン奏者たちの様子をハイスピードカメラで撮影し、唇の振動を詳細に見れるようにしている。それが下に示した動画であり、アパチュアを見て取ることができる




【アパチュアは真ん中にくる必要はない】

アパチュアが真ん中からずれている場合について、という本題に戻ろう。

上の動画を注意深く観れば分かることは、ここに登場する奏者のアパチュアの多くがいくらかマウスピースの中の真ん中からは外れたところにアパチュアがあるのがわかるだろう。

これはつまり、アパチュアの中心とマウスピースの真ん中は必ずしも揃うわけではないことを意味している。

レノ氏もこの動画(英語)全体を通してこのことに複数回言及している。上の動画の46秒あたりでは、アパチュアがマウスピースの真ん中にない例としてわかりやすものが始まる。

これ以上先に進む前に、ここでいう「真ん中から外れる」言っているのは水平方向においてのことであり、マウスピースの中でアパチュアの「高さ」についてではないことを述べておく。なぜなら、奏者によってマウスピースの中の上下の唇の割合は異なっており、アパチュアの「高さ」はこれにより決まってくるし、この上下の唇の
割合は金管楽器奏者のアンブシュアの機能の仕方の分類上需要な指標でありこの記事での話とは別のことだからだ。

(アパチュアの「高さ」に関わる上下の唇の割合とアンブシュアタイプについて詳しくはこちら→『金管楽器奏者の3つの基本アンブシュアタイプ』



【わたしの場合】

ちなみに、わたし(✳︎David Wilken氏のこと)のアパチュアはマウスピースの中の水平軸において真ん中から外れている。写真をご覧いただきたい。

Off-Center-Aperture-Mouthpiece-300x201

この写真は、ローBbをトロンボーンで演奏しているときのものである。


次に、

off-center-rim-buzz-279x300-1

この上の写真はリムビジュアライザーを用いて同じ高さの音をバジングしているときの様子を撮影したものである。アパチュアがマウスピースの中の真ん中の地点からは外れたところで作られているのがさらに分かりやすい。

リムビジュアライザーでバジングするのは、実際に楽器をつけて演奏するときと同じ状態にはならないので、リムバジングやバジングは少し眉に唾をつけて考えておく必要はある。透明マウスピースで演奏したときの写真ほど正確な現れではないだろう。



【マウスピースを当てる位置】

このように、演奏中、アパチュアは必ずしもマウスピースの真ん中に位置しているわけではないことは、ほかの金管楽器奏者たちも言及してきていることだ。

ホルンについてブログを運営しているジョン・エリクソン氏は、自分自身のアパチュアが真ん中にないことを指摘している(詳しくはこちら。英語です.)

わたしの主張の根拠を確認するため、これまで撮影してきた様々なトロンボーン奏者のアンブシュアの写真や、様々な金管楽器奏者たちのビデオを見返すと、アパチュアがマウスピースの真ん中にも唇の真ん中にも位置していない奏者、逆に真ん中にある奏者、どちらも数多くいた。

つまり、演奏能力とアパチュアが真ん中にあるかどうかに関連は存在しなかったのだ。

しかしながら私自身の場合、わたしはマウスピースをアンブシュアの若干右側に置いている一方で、わたしのアパチュアは真ん中から若干左の地点にある。

同じような特徴を持つひと全てに当てはまる話として述べるのではないが、わたしの場合はこのマウスピースの当てる位置というのは幾分意識的な選択による。これがわたしのアンブシュアが最も効率的に機能する位置だったからだ。
これを、アパチュアが真ん中に来るように当てる位置を変えても、ごく単純な話、それではうまく機能しないのである。



【バジングの場合】

しかしながら、マウスピースなしでバジングをしたときにはアパチュアが現れる位置は異なっていた。

free-buzzing-300x247

アパチュアが比較的閉じている瞬間の、解像度の低い写真になってしまったので少しわかりづらいが、マウスピースなしでバジングすると、わたしの場合はさらに左より(読者からみて右)にアパチュアが生まれる。

ここにマウスピースもしくはリムを当てると、それだけでアパチュアが現れる位置は変わる。

これは、ほかの奏者にとっては奏者それぞれに異なる結果になる可能性がある。

実際の演奏時のアパチュアの位置と、マウスピースなしのバジングのときのアパチュアの位置はおおよそ同じになる奏者も多くいる。その一方で、奏者によってはその位置が著しく変わる場合もあるのだ。



【結論】

このことは、アパチュアはマウスピースの中において真ん中に存在しなければならないという考え方に再考を促すものであると思う。

もっと明白なのは、マウスピースなしでのバジングを見ればマウスピースを当てるべき位置が分かる、とする考え方は疑問視されるべきであるということだ。

わたしの考えでは、アンブシュアを観察し理解するうえでは、マウスピースのなしのバジングはそのツールとして良くない。

もし誰かに、マウスピースなしのバジングを見たことに基づいてアパチュアを真ん中にするべきだと言われたら、その提案を健全な疑問を持って取り扱う方が良いと言って差し支えないだろう。




4 thoughts on “アパチュアが真ん中である必要性は無い

  1. いつもブログを拝見させて頂いております。
    トロンボーンを吹いています。

    最近アンブシュアの記事が多いので質問させて頂きたいと思います。

    もともと、ほっぺたが右だけ膨らむアンブシュアだったのですが、最近両方膨らんで
    しまいます。

    弊害として、口の中に空気が大量にあるのでまったくタンギングができません。
    空気が多すぎて舌が動かせないのです。

    口の廻りの筋肉がまったく作用していない状態です。

    口の廻りの支えを作ろうと空気が入らない様にすると音が全くでません。
    プスプスともいいません。アンブシュアを作って息だけ出そうと思っても息が入っていかなくて息だけ出すのもできません。ほっぺたがだんだん膨らんできてしまいます。
    口の中の上の硬い所へ息を当てるやりかたも効果なしです。
    ロングトーンが続きません。チューニングのBb以上ではあまり問題おきません。
    チューニングBbより下がこの状態です。

    マウスピースの接触を強くしてもだめでした。
    そもそも当てたときの感触が気持ち悪くて・・・

    マウスピースだけならば問題なくできます。
    楽器をつけると上記の状態になります。

    いわゆる潰れた状態なのでしょうか・・・・
    なにか良いアドバイスありますでしょうか?

    • Fさん

      まずこれだけ深刻な症状であること、とてもお辛いだろうと思います。

      ただ、情報としては結果としての症状について書いて頂いているだけで、

      ・奏法や練習法についてどのような考え方ややり方に基づいてやってこられたか、
      ・今はどうやっているか、
      ・いつ何がきっかけで悪化したか、

      といったことは教えて頂いていないので、レッスンにきていただかないとなかなか的確にアドバイスできません。すみません。


      ところで、ジストニアという症状はご存知ですか?
      http://basilkritzer.jp/その他/ディストニアやその他の症状に悩むひとのための

      ジストニア以外にも甲状腺機能関係のことや筋肉そのもの病気や不調など、医学的・病理学的な原因の可能性もあります。
      そういったことに詳しいお医者さんや病院を回ってみることも強くお勧めします。そもそも吹き方の問題じゃない可能性もあるので。


      もし吹き方の問題だとすれば

      ・マウスピースの当たる位置
      ・それと関連したマウスピース+アンブシュの動きの方向
      ・口角と顎先の関係
      
      といったアンブシュアの問題がいちばん考えられます。
      過去に、口が膨らむことに悩んでいたひとが、マウスピースの位置と動きの方向を整理したことで解決したことが2例だけありました。

      関連記事を例示しておくので読んでください。
      ・http://basilkritzer.jp/archives/4855.html
      ・http://basilkritzer.jp/archives/4866.html
      ・http://basilkritzer.jp/archives/5954.html
      ・http://basilkritzer.jp/archives/1278.html

      しかしながら、プレスの不足やプレスの場所と角度、または呼吸の仕方、あるいは姿勢といったことが大きく影響しているか原因になっている可能性もあります。
      いずれにせよ、レッスンにいらしていただかないと現段階ではわたしからはこれ以上アドバイスできることがありません。すみません。

      Basil

  2. ご丁寧に、ありがとうございます。

    おそらく私はもう吹けないんだろうな、とは思いますが今後、このブログを見ている方の参考になるかもしれませんので経緯などを書かせて頂こうと思います。長文になりますので、不適切な内容でしたら削除ください。

    アンブシュアについて
    最近まで気にした事がありません。学生時代に師事していた先生からも「問題ない、頬が膨らむけどキチンと吹けている。気にする必要はない。それよりもっと音楽について考えてプレイするように」といわれておりました。

    練習について
    リラックスしてppでも反応する立ち上がりを、と考えています。アレクサンダーテクニークのレッスンも3度ほど受講しております。(バジルさんにも1度レッスンして頂いた事も
    あります)
    所属団体が無いにも関わらず非常にたくさんの演奏機会を頂いており、特に室内楽での曲の個人練習をしっかりやりだしたあたりから調子が崩れ始めた様に感じます。
    年数にしておよそ5年くらい前からでしょうか。
    (ボザ・エワイゼンなど)ゆっくりさらう、テンポでさらう、音源に合わせてさらう。

    今現在
    とにかくたくさんの演奏機会がありますので、何とかかんとか、やりくりしております。
    ほっぺたが膨らむのを無視して、とりあえず息の圧力とブレスアタックでごまかしつつこなしている状況です。意外と合奏など一人で吹くとき以外は音がちゃんと出ているのです。このあたりになにかヒントがあるかもしれません。

    アドバイス頂いた項目に関して
    あごのくしゃっとなるのを避ける、という記事に改善の兆しがありそうです。
    昨日顎をきつめにキープ(いつもはまったく気にしていない)したところ音はいつもより
    固い響きで、音に息のノイズが少し混ざりますが息の流れはスムーズです。
    特に中音域以下でもキープしようと意識するとほっぺたは膨らまず立ち上がりがスムーズっぽいです。もちろん不自由で違和感は激しいです。ですが技術的な劣化はあまり感じませんんでした。(リップトリル、オクターブのインターバルなど)
    暫くこの状態で様子を見ながら過ごしたいと思います。

    長文乱文、失礼しました。

    • Fさま

      顎先のはなしでの改善が大きい印象を文面から受けます。
      もしそうであれば、

      1:マウスピースを当てる位置
      2:アンブシュアの運動、動き、力
      3:アンブシュアの運動に対応したマウスピースの移動

      の確認と再トレーニングがかなりポイントになっているかもしれません。
      (顎がガクガク震える、とかでなければ)

      1に問題があれば、2と3に問題が発生しがちです。
      2が足りていないというケースもあります。
      3だけが行われていないということの方が、2だけが抜けているということよりは多いかもしれません。

      Basil

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