じぶんを追い込むのが練習ではない!

中学生ホルン吹きからの質問です。

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【質問者】

初めてメールさせていただきます。中2のホルン吹きです。


最近練習をしていて気になることがあります。

低音で大きな音を出すことができないのです。


私は中2なので、主に4thのパートを吹いています。

文化祭が終わり、本格的に3月のコンサートへ向けての練習が始まってからよくコーチに「低音を大きく」と言われるようになりました。

そこで自分ではたくさん息を入れて大きくしようとするのですが、音が高くなるばかりで全く音量が増えません。

E、Fあたりから上の音はそれなりに大きく出そうと思えば音量が上がっている気がするのですが、それより下の音はなんだか当たりどころがない(?)という感じがします。

底なし沼のようだ、と自分では思っています

なんとか改善できたら……と思いメールいたしました。



【バジル】

「底なし沼」とは非常にうまい表現ですね。よく分かります。


ホルンの低音の大音量に苦労しているということは、とくに中学2年生であれば、まったく異常なことではないと思います。

コーチの方には申し訳ないけれど、「低音を大きく!」と言われても、あまり真に受けすぎず頑張りすぎずに、自分のペースでホルンの演奏を続けてほしいなと思います。


今後に向けては、むしろ得意音域である中音域〜高音域をもっと伸ばしていくようなつもりで練習することをお勧めします。


たとえば1日に30分個人練習の時間があるとしたら、

中音域〜高音域の練習:20分
低音域:5分

くらいの割合にするとよいでしょう。

逆説的ではありますが、中音域から高音域をもっと伸ばしもっとしっかりさせていくことで、低音域がだんだんできるようになってくるという面が実際かなりあるのです。


・中音域から高音域に上がって、「ついで」感覚でスラーで低音域に降りてくる。
高音域から発音してスラーで低音域に降りてくる。

そうやって中音域・高音域アンブシュアを基本にして低音を鳴らすということをやっているうちに、いきなり低音から発音しても鳴らせるような状態がだんだん作られていくでしょう。


低音域を大音量で鳴らせるようになるのは、そのもっと後で構わないのです。

高校生の後半とか、大学生になってからでもまったく遅くありませんから。名だたるプロ奏者でも、低音を大音量であまり鳴らせないひとってけっこういますから。


低音が少し苦手だな、という吹き方は少なくともホルンの場合実は正しい奏法になっていることが多いのです。その奏法で徐々に低音域ができるようになっていけばよいのです。

ひとつだけ、コツというか、ポイントがあるとすれば、「顎を緩める」感じというか、スムーズにゆるゆるっと顎が落とせる/開けることができると低音域は鳴りやすくなります。

ただし、それをしようとして中音域・高音域の奏法/アンブシュアとまったく別物にしてしまうのは害になる可能性がけっこうありますから、こだわりは禁物です。



– – -1ヶ月後- – –


【質問者】

最近ホルンを吹くことが全然楽しくなくて悩んでいます。理由はなかなか上達しないからです。
中2のホルンは私しかいないのでよくわかりませんが、2年目にしては下手だなと感じます。

パート練、金管練などに出席しているとこんなこともできない自分に嫌気がさしてきます。

基礎練をしていると自分の体力のなさだったり音域の狭さが目について嫌になってきますし、曲練をしていても音が出なかったり体力が持たなかったりタンギングができなかったりと楽しさを見出すことができません。

中1のときのほうが、出演する曲目も少なくて楽しくホルンを吹けていた気がします。

中2になり出演する曲目が増え、今までは気にしていなかった周りの目や細かい演奏上の問題が気になってきました。


吹いていると楽器に八つ当たりしたいような気分になります。

….でも同時にホルンの音が大好きな自分もいます。


吹きたくないなあと思っていても先輩の音を聴くとこんな音になりたい!練習しよう!となるのですが、吹き始めると風船が割れたように気持ちがしぼんでしまいます。

先生にお聞きしたいことはどうすれば周りの目を気にしすぎてしまう自分を変えて、楽しく吹くことができるようになるのかということです。

こんな私でも上手くなれるのでしょうか?

助けてください。



【バジル】

前回のメールで提案したことはやってみましたか?


前回のメールを分析すると、

・中2にしてはかなり上手なのではないか(High D が出せるのだから!)
・でも完璧主義になって損をしている

ように思いました。今回のメールもこのことに関係していますね。


>>基礎練をしていると自分の体力のなさだったり音域の狭さが目について嫌になってきますし、曲練をしていても音が出なかったり体力が持たなかったりタンギングができなかったりと楽しさを見出すことができません。

わたしの吹奏楽部時代を振り返ると、そもそも基礎練の構成や量、時間配分などかがあまりにもキツすぎて、またその割には効果的でないやり方をみんな一生懸命やっていることが吹奏楽部ではありがちです。

もしかしたら、そうなのではないでしょうか?


>>中1のときのほうが、出演する曲目も少なくて楽しくホルンを吹けていた気がします。中2になり出演する曲目が増え、今までは気にしていなかった周りの目や細かい演奏上の問題が気になってきました。

楽器のことが分かってきて、そして実際上達してよりたくさんの曲を任されるようになったからこそ、「ホルンでやりたいこと」が増えてきてそして「ホルンという楽器の持っている可能性・できること」が分かってきたから、いま自分にできることとの差を感じているのでしょう。

それをなんとかしたい!というのは純粋な向上心です。

でも、そこから自分で自分を追い詰めてしまっていますね。ここらへんに何か、思考や心の癖があるのでしょう。


>>先生にお聞きしたいことはどうすれば周りの目を気にしすぎてしまう自分を変えて、楽しく吹くことができるようになるのかということです。

心の癖の問題です。

ぜひ心理カウンセリングを受けましょう。
心のプロに相談に乗ってもらうと、すごく助けてもらえますよ。


>>こんな私でも上手くなれるのでしょうか?

もちろんです。実際1年前よりも、3カ月前よりも上手になっているでしょう?



【質問者】

前回のメールで提案してもらった方法をやったら、低音に関する悩みが取れた気がしました。

ご報告遅れてすみません。

また、アンブシュアが壊れない程度に教えていただいたことを試してみたのですが、まだそんなに綺麗な音ではありませんがそれなりに低音が出るようになりました!


基礎練についてですが、ご指摘していただいてはっとしました。確かに私がやっている基礎練は先輩と同じ内容でした。

高音が出ないのが悩みなのでタンギングやロングトーンは常にB-durやC-durでやり自分を追い込んでました…


心理カウンセリングに行ってみたいなと思います行く勇気が出るかはわかりませんが…


【バジル】

>>ご指摘していただいてはっとしました。確かに私がやっている基礎練は先輩と同じ内容でした。高音が出ないのが悩みなのでタンギングやロングトーンは常にB-durやC-durでやり自分を追い込んでました

なるほど、追い込むことができないことができるようになる方法だ、という感覚があるわけですね。

わたしが最初に提案した、得意音域をもっと伸ばして、その勢いを使って苦手箇所を少しだけやってみる、というアイディアとは真逆ですべ。

追い込むことではなく、じょうずに楽しみながら自分にとっての最大限の力を使うことで、手応えを得ながら能力を拡げていくような設計になっているのです。

「できる・できないのギリギリのところにチャレンジする」という点では追い込み方式と同じですが、楽しくて成果がいつも得られるのが、追い込み方式とはちがいます。

追い込み方式は、できないことをやり続けて大変なわりには、成果がないし、自信を失いがちですよね。


>>心理カウンセリングに行ってみたいなと思います行く勇気が出るかはわかりませんが…

行かないほうがよっぽど危険ですよ!



【質問者】

追い込むことができないことが出来るようになる方法だと考えてしました…。

曲の出来ないところを何度も通すとそのうち出来るという経験をしたことがあるので、それを全ての練習に当てはめていたのだと思います…


先生がおっしゃる通りその結果、あまり成果は出ないで自信を失うばっかりでした。

テスト期間中で、楽器もなかなか吹けず時間が取れないのですが、テストが終わったら学校のスクールカウンセラーの部屋に行ってみます!

部室が近くてこそこそ行くことになりそうですが……ストレスが原因だと思われる体調不良も何度か経験していたので、1人で抱え込むことをこれを機にやめようと思います。



【バジル】

>>はい、高音の練習をやってみました。

やってみて、どんな変化があったりなかったり、質問や疑問がありましたか?


>>曲の出来ないところを何度も通すとそのうち出来るという経験をしたことがあるので、それを全ての練習に当てはめていたのだと思います…

何度も通すうちにできる、という体験は素晴らしいものですよ。
だって、難しく考えたり悩んだりしなくても「やっているうちにできるようになってくる」という体験なんですから。

それが「自分を追い込む」になってしまうのが変ですね。


>>テストが終わったら学校のスクールカウンセラーの部屋に行ってみます!部室が近くてこそこそ行くことになりそうですが……ストレスが原因だと思われる体調不良も何度か経験していたので、1人で抱え込むことをこれを機にやめようと思います。

ぜひそうしてください。
学校にちゃんとカウンセラーさんが配置されていてよかったですね。

それをこそこそしなきゃいけない雰囲気が、本当は完全に間違っています。

あなたが将来、学校の先生になったとしても誰かの上司になったとしても、あるいは親になっても、カウンセリングをはじめとした助けを得ることを悩んでいるひとに勧めてあげて背中を押してあげれるようにな人間になりたいですよね。

そのためにも、堂々と行ってくださいね。


– – 1週間後- – – –


【質問者】

あれから学校のスクールカウンセラーに行ってみました!

なんだか具体的なアドバイスをされたりしたわけではないのですが心が落ち着いた?ような気がします。


行くまでは自分の思考の癖は直さないといけないと思っていたのですが、カウンセリングを受けてみて良い癖ではないけれどそれも含めて自分なのだから受け止めることも大事なのかなと考えました。

試験期間中何度か家で自分が出来る範囲の自主練をして曲練をするといつも出来ないような箇所も吹けて結果的に自分の実力の範囲が(思っていたものよりも)広がったなと感じました。


また、練習するときは自分を少し声に出して励ましたりしてみました。

そして昨日試験明け最初の全体練だったのですが、楽しく吹けました!
苦手な曲だったのですが、すごく楽しかったです。

いつもばてるところでばてなかったり音程がずれるところもずれなくてなんだか少し不思議でした。



【バジル】

わあ!
よかったですね!


そうなんです、心理カウンセリングって具体的なアドバイスがないような感じがするんだけれど、ちゃんと受けてみるとこうやって気持ちが変化するし、すっきりして前に進みます。

見え方がなんだか変わるんですよねー。


試験期間中の自主練、偉いね!

じぶんとつながれて、励ましながら練習できると、そうやって実際にちょっと上手になったり手応えが得られる。これってすっごい楽しいし、気持ちいいいですよね。


今回はほんとにとても価値ある体験をされたと思います。

このことを、心のどこかに置いておいてあげてください。
そしたら、行き詰まったときにどうしたらいいか思い出せるから。

ちなみに、スクールカウンセラーさんにはこれからも、いつでも頼りましょうね。



【質問者】

本当に価値のある体験ができました!
ありがとうございました!




6 thoughts on “じぶんを追い込むのが練習ではない!

  1. はじめまして。
    私は現在高校2年生でトランペットのトップを吹いています。

    トップを吹くようになってから合奏、本番で思うように吹けなくて悩んでいます。
    特にソロや目立つところは1人で吹く時のようにのびのび吹けなくて悔しいです。

    過去にバジル先生が書かれていた緊張への対処や思考の毒抜きなどの記事を、合奏練習などの前に思い出してやってみるのですがいざ合奏が始まると緊張、身体の強ばりというか動かしづらさが襲ってきます。

    部活とは別に個人で通っているレッスンではこのような不安や緊張は無く、のびのびと吹くことができています。
    レッスンの時には、失敗や外したら…という考えがないから楽に吹けているのでは?と思います。

    合奏などの時も特に気負うことが無ければレッスンの時のように吹けているのですが、ふと何かのきっかけで苦手意識(高音やソロなどに対して)を感じるとその時から連鎖するように色んな部分で身体が固まっていきます。

    どうすれば合奏、本番でも音を外すことや失敗することではなく自分のやりたい音楽の方へ意識を集中させられるでしょうか。

    よろしくお願いします。

    • >>過去にバジル先生が書かれていた緊張への対処や思考の毒抜きなどの記事

      これを、「合奏前」ではなく、もっと時間があるときにじっくりゆっくりやってみるのはどうでしょうか?

      「合奏・本番、特にソロや目立つところは1人で吹く時」について、どんな思考があるか、まずはゆっくりじっくり感じて調べてみてください。

      また、

      ・音楽の4要素を含めた日常の練習方法
      ・アドレナリンサーフィング

      も重要です。

      それも読んだ?

      • 返信ありがとうございます!

        >>・音楽の4要素を含めた日常の練習方法
        ・アドレナリンサーフィング

        この2つはまだ読んでいませんでした!
        私は1人で吹く時、4要素の
        「聴いてくれる人とのつながり」
        が抜けて全体像をつかめていないのかも、と感じました。

        明日は1日休みなのでゆっくりと時間をかけて考え直したいと思います!

        • >>「聴いてくれる人とのつながり」が抜けて全体像をつかめていないのかも、と感じました

          よい気づきですね。

          ・どうしたらつながれるか?
          ・つながりはどうやったら生まれるものなのか?
          ・なぜつながりにくいのか?
          ・つながりを切っているものはなにか?

          といったことを考えてみるのもよいでしょう。

          • 2日続けての本番でした!

            今までは、お客さんは自分の吹く音楽を聴こうとしてくれてるのに私は自分の内側へ意識を向けていていました。

            それがつながりを切っていると感じました。
            練習ではソロを吹けていたので「自分はソロを吹ける実力をもっているのだから、思いきって奏法よりもお客さんへ聴かせるんだっていう意識をしてリラックスした方がちゃんと吹けるはず」と考えたら本番もしっかり吹くことが出来ました!

            また、2日目の本番では前日の疲れから来るミスはいくつかありましたが、「練習では出来ていたから今外れたのは何か原因がある」と考えていたおかげで今までのように1度外れたらどんどん身体を固くしていってしまうことがありませんでした!

            この2日間の本番で精神的にすごく成長というか新しい考え方が出来ました!
            ありがとうございました!

            • >>>お客さんは自分の吹く音楽を聴こうとしてくれてるのに私は自分の内側へ意識を向けていていました。

              素晴らしい気づきですね。
              わたしも、すっっごくそうなってしまいがちですが、結局これが緊張を悪化させるし物事を行き詰まらせまよね。

              本番が二日とも、学びありそして充実して晴れやかな体験になってよかったですね(^^)

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