「チェックリスト」の使い方

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この記事では、練習を計画的に行ううえで多くのひとが一度は使ってみる「練習チェックリスト」についてお話しします。

多くの場合、チェックリストがいつの間にか重荷になったり、現実から乖離してしまって使い勝手が悪くなったりしてしまいます。

そうならずにあなたの練習をしっかり助けてくれるようなチェックリストの使い方を提案します。

【ふだんから考えていること、意識していること】

楽器の練習において、意識することって、多々ありますね。

管楽器だったら

−アンブシュアの使い方
−舌の使い方
−構え方
−運指のテクニック
−息の吐き方.吸い方
−姿勢
−動作
−音程のチェックポイント
−音色・音質のチェックポイント
−音楽表現上のさまざまなチェック事項
−気持ちの持ちよう
−本番のためのメンタルな準備事項・テクニック
−身体や楽器のコンディション調整

すぐに思い浮かぶことだけでもこれだけあります。

管楽器をある程度真剣にやっている人は誰でも、上記のようなことを一度は考えています。

これらのチェックポイントは

−自分の体験
−自分の工夫
−先生や先輩から与えられた課題
−ひとからのアドバイスやコメント
−書籍などで得た情報

を通じて集積されていきます。

【チェックリストを見てどんな気分になる?】

さて、これらのチェックリストを目にして、どんな感じがしましたか?

おそらく多くの人が、「圧倒」や「不安」あるいは「プレッシャー」を感じたのではないでしょうか?

それは、チェックリストを「クリアしなければいけない Must 事項」として捉えているからなのです。

結論から言うと、チェックリストはやらなければいけないことのリストではありません

Must 事項だと思っていると、それを全部ひとつひとつチェックして、クリアしないといつまで経っても先に進めない気がしてきます。

そして、「Mustなのにあれもできてない、これもできてない」というように、できていないことに気を取られ始め、それらをひとつひとつ潰していかないと落ち着かなくなってしまいます。

こうなると、練習や演奏自体が、気の滅入る作業に感じられますし、それはもう不調の入り口に立っていますね。

【チェックリストの本来の役目】

しかし実際には、チェックリストは、各項目が自分を助け、支えてくれるものであるはずなのです。

つまり、チェックリストは、

・不調のとき
・集中できないとき
・練習がマンネリ化しそうなとき

などに、

−調子を整えてくれる
−集中しやすくしてくれる
−練習の刺激と興味、創造性を与えてくれる

ものとして機能するはずなのです。

【集中力を高めてくれる】

先日、仕事の都合で急いでいて、予定していたより練習時間が限られ、後のことが気になっている状態で練習を始めたときのことです。

良い練習がしたいのだけれど、時間や後のことが気になって気が散っている状態でスタートしました。

そのときふと、これまで自分が受けてきたレッスンで得た様々なアイデアや意識するポイント、あるいは自分自身が最近教えている中で生徒さんに提供したアドバイスが次々と頭の中に蘇ってきました。

すると、

意識するポイントがたくさんあったおかげで、時間や仕事のプレッシャーを感じていても、短時間の間に様々なことを意識し、集中して充実した練習ができた

のです。

このときに私は、これまでひとからもらったり、自分で考えたり、生徒さんに与えて来た「意識できるアイデアやポイント」の数々がまさに「チェックリスト」と同じことなのだと理解しました。

【優れたパフォーマーのチェックリスト】

音楽家でもアスリートでも、優れたパフォーマーは共通して、かなり多様かつキメ細かい「自分専用チェックリスト」を持っています。

このチェックリストを用いて常に自分の状態や現在地を測って把握し、コンディション調整と実力アップに役立てています。

私は以前、チェックリストが嫌いでした。

チェックリストの存在そのものをプレッシャーに感じていたからです。

だからチェックリストを有効活用している人たちと接したり、話を聞いたりするとちょっとした罪悪感や劣等感を感じていました。

しかし、実際には「チェックリストの使い方」の問題であり、「チェックリスト」自体の良し悪しではなかったのですね!

それを理解したとき、私はこれまで自分が受け、もらい、そして与えてもきたあらゆるレッスン、アドバイス、アイデア、が自分の中に息づいているのを感じました。

そして難しい状況でもそれらを意識化することが非常に自分を助けてくれるのを感じました。

【チェックリストの作り方・使い方】

それで見えて来た、チェックリストとの作り方と使い方のポイントをまとめます。

〜チェックリストの作り方・使い方〜

《1》役に立った/ 興味が持てる/ 信頼できるアイデアを使う

誰かに言われた、強制されたからといって意識すると、それは結局 Must 事項になって緊張やプレッシャーになります。自分が内心、役に立つな、面白いな、信頼できそうだな、と感じるアドバイスやアイデアだけをピックアップしましょう。

《2》チェックリストは Mustリストではない(全部やらなくてよい)

新しいアイデアやアドバイスを理解・吸収するためには、もちろん最初はかなりそれを意識して練習を繰り返します。しかし、それは思っているより早くに吸収されていくものです。ですから、それを意識することに疲れたり、興味を感じなくなったりしたら、そのときはその意識は不要になっています。チェックリストは「全て意識しなきゃいけない」ものでもないし「全部できてなきゃいけない」ものでも、「常に意識する」ものでもありません。全部やろうとすると身も心も疲れてしまいます。

《3》書き出しておいて、眺めながら練習してみる

いま意識していること、過去に役立ったアイデアやアドバイスなどを思いつくかぎり紙に書き出してみましょう。そして、それを眺めてみましょう。すると、その中でも興味や必要性を感じるものがあるでしょう。それが「そのとき」意識するとよいチェック項目です。書き出して眺めれば、毎日フレッシュにそのときにベストマッチのポイントを選び出しやすくなります。

《4》どんなことをきょうは考えようかな、と「問う」

逆に、あえてチェックリスト見ずに、「きょうは何が必要だろうか」という「問い」を自分自身に投げかけてみるのもよいでしょう。論理的分析的に決めるのではなく、問いを自分に投じることで、どこからともなくアイデアや記憶が浮かび上がってきます。直感的な練習法です。いかに今までのあらゆる経験が実は身になっているかがこのとき分かります。

《5》Must だと言われたことでも、Mustにしない。

先生と弟子という関係や、先輩と後輩という関係の中で、楽器演奏は伝えられて行きます。しかし、その関係性は「Must」事項で埋め尽くされがちです。先生や先輩はどうしても、課題やアドバイスを「Must」であるかのようにあなたに伝えることが多いでしょう。ですので、後輩あるいは弟子としては、どんな先生や先輩が「Must」的に伝えてくることでも、あくまで「自分が使いたかったら使える材料」として受け取るようにしてくださいし。すると、それが自分に役立つものあるいは内心興味があるものであれば、いざひとりで取り組むときにプレッシャーなくやりやすくなります。結果的には、先生や先輩からしても、教えたことをちゃんと吸収してくれているように見えるわけです。

ぜひ、お試しあれ!

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