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新訳:Singing on the Wind です。前回はこちら
【ホルン演奏における「ホーナー・シンプソン」的アプローチ】
いったい、ホーナー・シンプソンがホルンの演奏とどんな関係があるんだ??
…そう、あなたは思ったことでしょう。
ホーナーは、我々ホルン奏者の多くと同じく、いたって単純な男です。
あまりストレスがかかるのが好きではなく、でもビールを飲むのが大好きな男です。
それでも一応、大抵はできる限りのことはしています。そして大抵のことはまあ、うまくいっています。
でもたまに何かがうまくいかないと、彼の口からはこんな言葉が飛び出します。
『あちゃー!』
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まさにこの、『あちゃー!』の中にこそ、ホルン演奏の真髄があります。
考えてみましょう。
ホーナーが、自分がやらかしてしまったことに気づいたとき、彼は息を吸い込んでエネルギーを溜めて、『あちゃー!』の一声で全てを発散するのです。
これ全部が自然で、本能的な行いです。
もう少し詳しくこの一連の流れを見ていきましょう。
ホーナーは息を吸い込みます。
肺の奥深くまで息を吸い込みます。
これから思い切って息を吐き出す意志を持ちながら。
『あちゃー!』というのは、英語で『D’oh!』と言います。ですからホーナーは実際には『D’oh!』と言っています。
この最初の”D”を発音する準備をしている間、彼は舌先のところまで必要なだけの息圧を溜めています。そうすることで吐き出したい気持ちを発音の瞬間に強調するためです。
その後の”oh!”の音は、”D”に続いて流れる息の量によって決まります。
これをホルンの演奏と比べてみましょう。
ホーナーは、ちょっとした災難があったときに“D’oh!”と言って反応します。わたしたちホルン奏者もときには、同じことができるかもしれません。
ただし、わたしたちの場合は発音へのアプローチを探して、“D’oh!”を使ってみれるかもしれない、ということです。
ステップ1:
“D’oh!”で生み出したい音質をイメージします。
ステップ2:
息を吸います。
ステップ3:
その“D’oh!”を真似するつもりでホルンで音を演奏します。(ただし、声帯を振動させるのではなく)
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なかなかシンプルなことに思えますよね?
他の音でも実験してみましょう。
息を吸い込んで、もっと鼻にかかったような“D’oh!”をしてみましょう。エネルギーや感情を込めてみましょう。
比較のために、こんどは思いっきり息を吸い込んだら、「ちっとも頭を使わない」ような感じの“D’oh!”をやってみましょう。胸から響いてくるような、喉の開いた馬鹿みたいな“D’oh!”です。
この二つを比べると、鼻にかかったような“D’oh!”だと舌がけっこう高い位置にあり、喉は詰まったような感じになっているのが観察できると思います。
二つ目の“D’oh!”の方では、それより舌は低くなっていて、口の底に向かってひらべったくなっています。そして喉はよっぽど開いていますね。
このような低い舌と開いた喉は、響きを助ける空間を作り出し、これがホルンに関しても助けになります。
ホルンでも、
・キツくて鼻にこもったような音
・オープンで響いた音
を想像して、楽器を実際に使って応用してみましょう。
では、これをもっと洗練させてみましょう。
オープンな音で“D’oh!”と発声してみます。ただし、今度は“oh!”の部分を長くします。好きなだけ長く伸ばしてかまいません。
どのようにして本能的に音を保っているか、好きなだけ観察してください。
もう一度やってみましょう。今度はもっと豊かな音で。
では、次はホルンを使って同じことをやってみましょう。“D’oh!”という鳴らし方をイメージしながら。
ホルンを使ってやると、息の圧力は発声とはいくぶんちがってきますが、あなたの望む音を生み出すために、息が流れるようにしてあげてください。
また、日常的な“D’oh!”か、思いっきり力を込めた“D’oh!”かでもちがいがあります。
やってみましょう。
それほど大きい声にはせず、かといって静かすぎもせず、シンプルに“D’oh!”をします。、“oh”の部分が、“D”の後にも生命力があるように。
では、思いっきり力を込めて“D’oh!”と言ってみましょう。“D’”を強くし、“oh”は豊かな音になるように。
そしたら、ホルンでも同じようにやってみましょう。最初はシンプルに。次は思いっきり力を込めて。
いろんなバージョンの“D’oh!”にしてみることで、演奏のアーティキュレーションを変えることができます。
しかしどのような場合にも“oh”にちゃんとエネルギを与え、ホルンで生み出したい音を出すのに必要な息の流れを与えながら。
まあ、そんなこんなで、ビールでも飲みましょう。
乾杯!
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つづく!
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