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新訳:Singing on the Wind です。前回はこちら
【アンブシュア】
「アンブシュア」とは、口唇とその周囲の筋肉、および演奏中のそれらの使い方を指す用語です。
そのアンブシュアのはたらき方を決める要素の組み合わせがいくつかあります。
1:マウスピースが唇のどこに置かれるかというポジション
2:演奏中の唇の形とはたらき
3:口唇の周りの筋肉の形とはたらき
4:顎
です。
【①】マウスピースが唇のどこに置かれるかというポジション
〜マウスピースの当てる位置〜
マウスピースは口の中心、口角から均等な距離に当てるべきというある程度基本的な原則があります。
この位置は、口の左右両側に均等に労力が振り分けられることを促します。
しかし、これはあくまである程度基本的であるというだけであって、この当て方を無理強いすることは逆効果であることもあります。
唇は歯に支えられていますから、最適な当て位置を決定付けるのは歯で、なかでも上の歯が大きな要因です。
下顎は可動性がありますから、ある程度は対応可能です。
例えば、上の2本の前歯が少し中心から左寄りになっていれば、マウスピースの当てる位置も少し左になることもあり得るでしょう。
マウスピースを当てることは、見た目が良いところではなく、いちばんしっくり感じるところを見つけることで行なわれるべきでしょう。そういった直感的にしっくりくるところを探す実験をしてマイナスにはならないはずです。
〜マウスピースの置きどころ〜
そうしていったんマウスピースを当てる位置を見つけたら、垂直軸におけるマウスピースの置きどころを決定していきましょう。
垂直軸におけるマウスピースの置きどころについては、2つの考え方があります。
◎「アンゼッツェン=当て置く」
この考え方ではマウスピースの当て方が、上唇が2/3・下唇が1/3になるようにします。
下唇は少しだけ引き込まれ、そうすることで唇の赤いところと白いところの境目にちょうどかかるか、もう少し下にマウスピースのリムの端が当たるようにしています。
◎「アインゼッツェン=入れ置く」
この考え方では、上唇に関しては先ほどと同じですが、リムの下端は下唇の赤い部分に直接置かれます。
つまり、先ほどの「アンゼッツェン」のように下唇を引き込むことはしないわけです。
また、上下両唇の赤い部分にマウスピースを置いて演奏することも可能です。しかしこれが効率的な奏法であることは稀で、勧められるものではありません。
アインゼッツェンにしてもアンゼッツェンにしても、アンブシュアの基本的なはたらき方は同じで、「ベストな当て方」というのはもっぱら人それぞれです。
しかし、「アンゼッツェン=当て置く」ポジションに関しては、下唇と顎先の筋肉がアンブシュアの働きにおいて補助的な役割にもっと参加することができます。
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つづく
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