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わたしのホルンの師匠である、フランク・ロイドさんが待望のソロCDを発売しました。
ソロCDは、20年以上ぶりじゃないかしら?
わたしは2003年〜2008年にドイツのエッセンという街の大学に留学していました。
そこで師事していたのがロイド先生です。
ロイド先生のことは、留学前はいくつかのCDや録画・録音を通して知るのみでした。
その時点で、めっちゃくちゃ技巧的に優れていることは分かっていましたが、実際に師事するようになり、
初めて生で演奏を聴いたとき、驚愕とショックを覚えることになります。
それは隣町のデュイスブルクというところで、ロイド先生がモーツァルトの協奏曲を演奏したときのことです。
協奏曲はもちろん完璧。とても美しく素晴らしい演奏でした。
しかし、その後のアンコールが…..
もう別世界でした。
「ハッピー・ブルーズ」という、独奏ホルンのためのジャズ作品です。
これがもう、有り得ないスーパーテクニックの連発でした。
正直わたしはこう思いました。
「なんやこいつ、変態サイボーグやないか!」
(笑)….失礼しました。
しかしそのときに、スタイルや音色などの個性の部分での好き嫌いで聴く耳はぶっ壊されました。
こういう演奏をやってのける技巧というものは、それだけで真剣に研究と傾聴に値する貴重な価値があると気付かされたとでもいいますか….。
どれだけ感性や好みがちがっていようが、こういう演奏技術は、その機能とメカニクスに関して「理想」であり「お手本」として真剣に受け止めなきゃいけない。受け止めないのはバカな話だ、と腑に落ちたのでした。
留学中の5年間、その後何度もそんな変態サイボーグおやじテクニックに目がまわる体験をさせられたわけですが(笑)、そんなサイボーグ….おっと失礼、そんな師匠を至近距離から観察し分析し続けた時間が、いまとなってはレッスンをすることに非常に活かされている気がします。
というのも、ちょっとうまく言い表せていないかもしれませんが、演奏技術やテクニックの機能・メカニクスの「可能性」と「高み」を知ることで(わたしはそこにもちろん到達できていませんし今後一生到達できないでしょうが…..泣)、演奏技術の本当の基本・基礎や原理原則と、癖や個性・個人差・趣味の領域に属する部分とを区別できるようにしてもらえた、そんな感覚があるのです。
そんな変態….おっと失礼、そんな師匠はあるときこう言っていました。
「息の使い方を見直して、練習しなおしたおかげで、40代にできていなかったことが、いまいろいろできている」(当時、51~52歳)
….つまり、今回のCDで聴ける演奏は、若い頃からフィリップ・ジョーンズ・ブラスなどで活躍してきた誰もが天才だと思っている奏者が、そのキャリアの後半で実現した変化と上達が余すところなく記録され表現されているものなのです。
その名も「No Limits」…そうですか、未だに限界がないのですか。
まさにスーパーサイボーグにぴったりな名前ではありませんか。
決して出来の良い弟子ではありませんが、わたしも出来の悪いB級ロボットなりに頑張ってバージョンアップを続けておりますので、このCDであなたの凄まじさを確認してまたショックをぜひ受けたいなと思います。
ここから注文すると、サインして送ってもらえるようです。
→http://www.frank-lloyd-horn.com/music/no-limits/
わたしにはべつに一文も入ってはきませんが(笑)、ぜひ 手にとってサイボーグタイムをご満喫ください。
Basil Kritzer