夢が、演奏の不調を乗り越える力になる

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音大生からの悩み相談です。

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音色を気にして、どんどん吹けなくなってしまった音大生
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【質問者】

僕は今、音楽大学の1年生で、トロンボーンを吹いています。

毎日吹き方が変わってしまうようになり始めたのは、高校2年の冬の時期からです。

その時から楽器の吹き方そのものが日々練習すればする程、どんどん分からなくなっていき、音も悪くなり、高音も出なくなり、低音も出なくなり、チューニングのB♭の音さえ辛くなってしまいました。

そんな状態で音楽大学に入学して、周りには、自分の吹き方をそれぞれ持っていて安定して吹けている人達が沢山いて、今はそれがとても辛いです。

楽器を吹くこと自体が苦痛になってしまい、練習していても楽しいと感じなくなってしまい、楽器を投げつけたいとも何度も思いました。

そんな状態なので、曲の練習をしたくても曲そのものが吹けないので、基礎ばかり闇雲にやっていて、それが基礎なのかも最近は分からなくなり、自分でも何やってるんだかわからなくなってしまっています。

気分転換が必要なのかと思って、楽器を吹くのを休んだ時もありましたが、効果がありませんでした。

練習していなくても、楽器のことばかり考えてしまっていて、余計苦しいです。

今の最大の悩みは、力が入ってしまうことです。

ここまで吹けなくなってしまった原因は自分でもよく分からないのですが、楽な吹き方を研究しているうちに力が入ってしまっていたことは事実だと思います。

構え方の面でも、アンブシュアの面でも、息の面でも、大分変わってしまっています。

バジル先生にお聞きしたいのは、僕は今1番何をするべきなのか、という事です。

不安なまま練習していくのはもうウンザリでこれ以上悩んでいるとトロンボーンを大嫌いになってしまいそうです。

【バジル】

メールありがとうございます。

音大で、周りはハンデなく取り組んでいるのなかで自分は何歩も下がったところから、というのは辛いですよね。

わたしもそういう状況だったのでよく分かります。

さて、「吹き方が変わってしまう」という感覚に悩まされるようになった高校2年のころですが、それが始まったタイミングやきっかけついては何か思い当たることはないでしょうか?

「楽な吹き方」を意識するようになったタイミングと一致していますか?

【質問者】

吹けなくなったきっかけは、高校2年の冬の時期についていたレッスンの先生から、「音が暗い」と言われたのがきっかけで、アンブシュアを無理矢理いじってしまったのがきっかけです。

そこからどんどん崩れていきました。

ですので、ラクな吹き方を目指すようになった時期とはズレています。

【バジル】

なるほど。

「音が暗い」のをなんとかしなきゃと思ってアンブシュアにいろんな操作を加えたことがきっかけだったのですね。

いまでも、音が暗いのを気にしていますか?
そして、それをなんとかしようとしているのですか?

【質問者】

今でも音が暗いのを気にしていて試行錯誤してしまっています。

最初はバジル先生の「音が暗いのには良い意味もあり、暖かい音という意味がある」という記事を読んだことがあったので、気にしないようにしていたのですが、今まで多くの人に教えてもらって分かったのは、僕の音の暗さは良い意味での暗さではないということです。

どの先生にも、音の事に関して凄く言われてきました。

多分それで余計分からなくなったのもあると思います。

【バジル】

ではこれまで、具体的にどうすればよいか教えてもらえたことはありますか?
そして、それが効果的だったことはありますか?

【質問者】

具体的に教えて頂いたことは何度もあって、効果が出る場合もありますが、今度はそれを意識して吹きすぎて、またどんどん分からなくなるというのが、何回も繰り返されてしまっています。

また、効果が出てると実感があっても、レッスンの先生からすると、何も変わってないように聴こえるようです。

【バジル】

なるほど。

ここまでのやりとりで分かってきたことを整理すると、

① 教えてもらえた具体的で効果的でも、それが全部の問題を常に解決してくれるわけではない。

② 「意識しすぎでおかしくなる」のは、いつも常に全部それで解決/改善するとどこかで思っているからではないか?

③ 効果的だったかどうの判断を、自分ではなく他人にさせているから自分の感覚が信頼できず混乱している

というのが見えてきました。

これを読んで、どう思いますか?

【質問者】

バジル先生が整理してくださった通りだと思います…。

特に①と②に関してはまさにそれです。

僕の場合、多分、全てが解決しないと悩みから抜け出す事が出来ない、という思考になってしまっています。

そのような考え方のきっかけになってしまったのは、音楽大学という環境の中で、僕から見たら完璧に吹けている人達が大勢いる(トロンボーンに関わらず)ことが大きいと思います。

【バジル】

なるほど。

つまり、楽器を吹いたり練習したりすることが、「問題をゼロにする」「マイナスをゼロにする」作業にすり替わっていまっている、という言い方もできますかね?

【質問者】

そうですね….。今日の練習で上手くならなくちゃいけない、というような心構えでいつも練習してしまっています。

合奏の本番や、ソロの本番ですら、常に何かを意識しながら吹いてしまっている自分がいます。

【バジル】

ちなみに、

・音大に進学を希望したのは、なぜですか?
・いま、音大で勉強をしていてなにを学ぼうとしていますか?
・卒業後、どのようなことをする人生を作ろうと考えていますか?

【質問者】

音楽大学に進学した理由は、楽器以外にやりたい事が見つからなかったからで、将来、自衛隊音楽隊に入りたいからという理由でもあります。

ですが、音楽大学で何を学びたいかと聞かれると、今は楽器を吹くことで精一杯で、なにも思い浮かびません。

【バジル】

なるほど….

そもそもあまり積極的な理由とか、楽しい夢を描いて入ったわけではなかったんですね。
そのあたりも不調がこじれさせている要因になっていると思います。

でも、自衛隊音楽隊に入る、という目標はあるわけだ。

これは、どうしてですか?

【質問者】

自衛隊音楽隊員になりたい理由は、自衛隊音楽隊そのものに憧れているからです。
また、親が2人とも消防音楽隊だったからの影響もあると思います。

【バジル】

素敵ですね!

提案なんですが、これから自衛隊音楽隊の隊員になるために、音大での時間を過ごすようにしてみるというのはいかがですか?

① レッスンを受けるときは、隊員になることに役立つ・助けになると自分で判断してそう思えることだけを持って帰る。

② それに結びつかない気がすることには時間もエネルギーもかけなくていい。

「音が暗かろうが明るかろうがどっちでもいいから、隊員になれそうな演奏をとにかくやるようにしよう」と意識してみる

これを読んで、何度か反芻してみると、どんな気持ちになりますか?

【質問者】

バジル先生が提案してくださったものを見たら、気持ちが少し楽になった気がしました。
意欲も少し出てきました!

【バジル】

その気持ちのまま、楽器を吹いてみるとどうなるでしょう?

もし不安になったら、その時点で三つを何度か声に出して読み直して、練習を継続してみると、どうなるでしょう?

【質問者】

バジル先生に教えて頂いた気持ちの状態で吹いたら、楽器を吹く事が前ほど苦痛ではなくなり、不安も減りました。

【バジル】

そういうとき、吹き心地や奏法はどうですか?

【質問者】

吹き心地の方ですが、前より音が柔らかくなった気がしました!

前より自分の吹き方を信じていける感じがしたのもあって、吹き方を試行錯誤しすぎてしまう感じは減りました!

【バジル】

それはよかった!
もともとの悩み相談がそこでしたものね。

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夢が、演奏の不調を乗り越える力になる」への8件のフィードバック

  1. トランペットを始めて今年で七年目になるのですが、最近日に日に音の状態が悪化して、今日吹いてみたらB♭以上の音がほとんどでなくなってました。
    いろいろと原因や対処法を調べたのですが自分に合ったものが見つかりません。
    アドバイスお願いします。

  2. こんにちは。いつもブログの記事を参考に練習させていただいています。
    以前「ハイBbまで音がカッ飛んでいく!!」の記事でお世話になった、社会人でトランペットを始めて1年のものです。
    その節は大変お世話になりました。おかげさまでその後、順調に上達してきたのですが、朝と夜とで調子が違ってきてしまったので、アドバイス頂けたらと思い、書き込みました。
    いつも朝仕事に出かける前の15分と帰ってきてからの15分の練習を日課としているのですが、朝はハイBbでもハイFでも高い音はいくらでも出せるのですが、夜はせいぜいチューニングBbの上のFくらいまでしか高い音は出せないし、もっと悪ければそれこそチューニングBbどまりです。
    単純に楽器を吹く前から「バテ」ているようです。本人が疲れを感じていなくてもバテるものなんですか?他の皆さんも上達の過程でこういう事を経験するのですかね。極端なほど差が出ていて不安です。
    バジル先生の生徒でこういう人がいたという話や、バテている時でもできる練習方法等あればご教授ください。
    よろしくお願いいたします。

    • takowasaさん

      ぼく自身もかなりその傾向があります。

      奏法の理解や、能力の進展とともに、一度練習を済ましてから後にまた吹くときも
      だいぶ安定して通常の高音域を出せるようにはなりました。

      でも、体感的な「バテ」感はあるし、「自分の最高到達点」には音域においてもコントロールの質においても達している感覚はありません。

      わたしの場合は、そういう状態でリハーサルや本番をすることはもちろん必要に応じてやる分には気にならないのですが、
      自分の能力を伸ばすための練習時間としては質が低いので、日課としての練習を「1回」に変えました。20歳のころのことです。

      練習時間・量と上達度に自分の場合相関性がまったく無く、練習頻度(週に5〜6日練習する)と練習の質で上達度が決定されていることを最終的には明確に確認したので、1日1回の日課で良いと思えるようになりました。

      Basil

      • ご返信ありがとうございます。
        バジル先生にも調子の差がある事、練習時間・量と上達度に相関性がなさそうだと言うことをお聞きして、だいぶ気持ちが楽になりました。
        ここ最近2ヶ月程前から急に上達しはじめて、ようやくトランペット初めて良かった・吹く事が楽しい・もっと練習したいと思えるようになってきた所で、朝の限られた15分少々の時間しか満足に演奏できないのは、さみしいと感じていたので質問させて頂きました。
        次は調子の良いときと悪いときの差を埋めていくことを目標としてみます。
        大変参考になるアドバイスを頂き、ありがとうございました。

        • たしかに、いい感じで吹けていたり上達を実感できているとすごく充実感があるので同じ一日の中で『それをもっと』欲しくなりますよね。

          でもぼくは、『明日も、1週間後も、これから何年も、「その日の取り組み」をすることができて幸せ』といつの間にか思えるようになりました。

  3. 私は35年前に音楽大学を卒業し教員を30年間勤めております。後3年で定年退職の予定です。専攻はトランペットですが学生時代にやはり音が出なくなってしまいました。それまでは調子よくハイドン、フンメル、ジョリべ、トマジ、吹けていたのですが、大学1年の連休前に体を壊し、1ヶ月ほどまともに練習できませんでした。そんな中、大学に復帰すると、何か取り残された自分を感じ、焦りを感じながら練習に向かい合っている自分がいました。朝から夜まで練習している先輩をみてこうじゃなきゃダメなんだと、今自分が乗り越えなければならない事を見失い常に赤く腫れぼったい唇で練習していました。当然、マウスピースを当てる感触は失われ、どんどん潰れていきました。卒業試験のハイドンのコンチェルトは最悪で情けで卒業させてもらったようなものです。教員になった後も、そんな自分に納得いかずに今でも夜中に2時間ほど練習を欠かさずやっています。そんな中でこの頃思うのは練習の質の改善、効果を感じたのは10分吹いて15分休む、クリスゲッカーさんのスロープラクティスを実践したところ、アンブシュアの違和感を改善することができました。自分の経験から音大生はやはり練習の際にあまりインターバルを取らずに吹き続けて調子を崩すことが多いのではないでしょうか。今、30年の大スランプに終止符を打てそうな気がします。年も年ですので、ブレスの問題や指の運動性など乗り越えなければならない問題は、たくさんありますが、若い方々は肉体的な適応力は抜群で、ちょっとしたきっかけで元に戻るのも速いはず、とにかく練習中に休みを焦らずにたっぷりと取る事が大事だと思います。10分吹いたら10分休み、または15分吹いて15分休む等。インターバルの個々のペースは様々だとおもいますが、吹いた分だけ休むの原則は大事だと思います。

    • 青木さん

      ダメージの蓄積は、怖いですよね。
      金管の場合はとくにシリアスです。

      効果的、建設的な練習になっているかきちっと見極め、
      根性ではなく理性で落ち着いてできることをやっていくこと。

      とても大切だと思います。

      Basil

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