何が起きるか分からないのが本番。そのための準備方法とは?

– – –

数年間レッスン活動を続けてきて、音楽を演奏しているひとの多くが、練習では起きないミスが本番で起きてしまうことについて悩んでいることがわかってきました。

興味深いのは、これが本番はすごく緊張するというひとも、別にそうでもないというひとも、どちらも経験し悩んでいるというところです。

どうも、主観的な緊張やドキドキは関係がなさそうなのです。

本番の緊張がとても強かったり、緊張に呑まれてしまうひと)にとっては、その原因が「緊張してしまうこと」に感じられます。ですから、緊張する自体に悩んでいます。

でもそこまで緊張を感じていないひとにとっては、なぜ本番で起きることが練習で起きることとちがうのか、全然わからず戸惑いが大きようです。

【本番では予期せぬ成功も起きている】

わたしは、練習で起きないミスが本番で起きる理由は、緊張でも練習不足でもないと思います。少なくとも、わたしの考えが当てはまるケースはかなりある、ということは確かです。

よく観察すると、実は

『練習では成功しなかったところが本番でだけ成功する』

ということもけっこう起きています。

本番では、練習で起きないミスが起きるだけでなく、練習よりうまくいってしまっている箇所やケースもかなりあるのです。

【練習と本番では起きることが異なる】

本番でだけミスをする。
本番でだけ成功する。

これは、正反対のことにも思えますが、

「練習と本番では起きることが異なる」

のだと考えることで理解できます。

スポーツのパフォーマンスでは、試合の大事な場面で自分でもびっくりするようなスーパープレーができてしまったり、練習では一度も成功したことがないような大技が決勝で完璧に成功した、というような話をよく聞きますよね。

そしてよくよく考えてみると、音楽の演奏においてもそういうことは日常的に起きています。

【本番は練習の延長線上にはない】

したがって、「練習通りに本番でも演奏しよう」と考えて準備するのは演奏の充実度を損ねるリスクが高いのではないかとわたしは考えています。

練習と本番では起きることが異なることを準備の前提にした方がよいのではないでしょうか?

『何が起きるかわからない本番という特別な時間を前向きに力強く進んでいく』

そんな自分になるための準備が正しい備え方だと思います。

何が起きるか分からない、ということを受け入れている。
何が起きるか分からない、ということをむしろ楽しんでいる。
予想外のことが起きたときに、クリエイティブに対応する。

そんな状態に自分自身を持って行きたいのです。それが準備であり、本番に向けた練習のやり方です。

【練習のやり方を変える】

このような準備の仕方を実践するための第一歩は、「練習通りに演奏しよう」とするかわりに、

たとえば

『音楽を演奏するこの特別な瞬間を味わおう』

というような意識で臨むことだと思います。

【本番の想定外のミスの性質】

本番での「予期せぬ」ミスはある特定の傾向があるように思います。

それは、

▪音程がうわずる
▪音が上にハズれる
▪テンポが速くなる
▪指が転ぶ
▪入りを間違える
▪暗譜が飛ぶ

といったタイプのものです。

これらはいずれも、興奮状態、つまりパワーが余って暴走しているようなときに起きるもののように思えませんか?

もしそうだとすれば、これは成功一歩手前の状態だと思うのです。

『練習では出て来なかった特別なパワーが湧いてきている』

のだと理解することができます。

本番というものは、この本番ならではの特別パワーを得ずしてやりきるのは、逆にとても大変になってしまいます。

実際、普段から演奏や演劇の本番を行っているプロのパフォーマーの多くが口を揃えて

『慣れてしまって、ドキドキしない本番の方が難しい。辛い。』

と言っています。

本番だからこそ湧き上がるパワーにブレーキをかけるのは、硬さにつながります。

本番を練習と同じようにしようするのは、実は自分自身をスケールダウンさせてしまっていることになっているのではないでしょうか。

▪大きいところはもっと大きく
▪集中力を要するppはさらにギリギリのppに
▪速いところはもっと速く
▪ゆるやかなところはさらに幅をもって

演奏しようとする方が、本番はうまくいきやすいとわたしは感じています。緊張感とその方が釣り合ってバランスが取れ、むしろ落ち着いてくるのです。

え?そんなことをしてしまうとアンサンブルのバランスが崩れる?

….アンサンブルの全員が、「本番だからこそのアンサンブル」をやれればよいのではないでしょうか。

ケミストリー、化学反応というやつですね。

そこが指揮者の腕の見せ所だったり、チームの相互の信頼、そしてきらめく創造性だったりするのだと思います。

わたしたちは

本番の特別なパワーを歓迎し、
それを使いきることを学んで、
暴走するのでも窮屈にブレーキをかけるのでもなく、勢い良く颯爽と駆け抜ける

ことを練習していきたいのです。

下記の記事が参考になるかと思います。ぜひご参照ください。

・本番で力を出せるような練習のやり方
・アドレナリンサーフィング
・本番の恐怖と緊張を乗り越える8つの大切な方法

Basil Kritzer

ブログでは読めない話もたくさん!ぜひメルマガをGET♪

レッスンの申込や出張依頼などについては、こちら!

何が起きるか分からないのが本番。そのための準備方法とは?」への2件のフィードバック

  1. この分析は素晴らしい。
    その通りだと思います。
    40年アマチュアで吹いていますが、全てがそのまま当てはまります。

酒井 誠 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です