息なのか腕なのか

先日、トロンボーンを吹いているある方とのレッスンであったこと。アレクサンダー・テクニークのレッスンは2度目だった彼女は「もっと息がスムーズに流れてもいい気がする」ということでレッスンに来られました。

とりあえず演奏をしてもらって、様子を見ていたところ、あることが見えてきました。

それは

「息を止めるかわりにスライドを止めている」

ということでした。

音階やアルペジオを吹いてもらうと、スライドを動かすときに、音の移行の滑らかさが少し損なわれていたのです。

その原因は

「舌の仕事と腕の仕事を混同していた」

ことにありました。

スライドを動かして異なるポジションで次の音を鳴らす場合、スライドを動かしている間はも息を流し続けて音が鳴り続けていると、グリッサンド状になるのはトロンボーン特有の性質です。そのため、スライドを動かす間は「音を止める」ことが必要になります。

その「音が鳴らないようにする」仕事を、彼女は無意識的に腕でやろうとしていました。「音を止めよう」とする意図が、腕に向かうと、腕はスライドをギアチェンジするようにガクガクと動かします。かなりの腕力を使ってビタッとポジションに「ジャンプ」しようと色々力み始めるのです。

ですがスライドはあくまで「スライド」します。スライドの動きは必ず「スライド的」であり「段階的」ではないのです。スライドはできてもジャンプはできません。構造的にどうしても。

しかし、音の移行をグリッサンド状にせずに明確に切り替えようと意図していたとき、彼女は無意識にスライドの動きを「ジャンプ」させようとするかのように、腕をガチッガチッと音の切り替わりの度に固めていたのです。

レッスンの中で必要だったのは、

彼女の望む通りに、音を明確に切り替えてくれることを実際に果たす方法

です。

さあでは、トロンボーンがスライドする楽器である一方で音はグリッサンド状にせず明確に切り替える方法と何でしょうか?

彼女は「腕を止める」ということはやっていました。この「止める」部分は正解です。しかし、何を止めるかが間違っていて、結果的に効果はなく身体的緊張につながっています。

では何を止めるか?

正解は

「舌で息が唇の間を流れるのを止める」

です。

1:あるポジションで音が鳴っています。その間、唇の間を息が流れています。
2:次のポジションにスライドを移動させます。その間、舌で唇に息が流れないようにしておきます。
3:スライドを移動させきったら、舌を離し息が流れるようにしてあげます。すると次の音が鳴ります。

こうすると、音は明確に切り替わります。

もっと簡単に言ってしまうと、「スライド移動のタイミング」と「タンギングのタイミング」をうまく連動させればよいのです。

そこで彼女には

「腕は止めずに楽に動けるようにしてあげて、音を切り替えるのは舌とアンブシュアのほんのちょっとした作業で済む」と考えながら吹こう

と提案しました

音は唇と舌。
スライドは動いている腕。

といういうふうに繰り返し考えながら吹いてみてもらうと….

あっと言う間にスムーズに労力無くクリアに音が切り替わるようになりました。腕の無駄ながんばりも減ったので、本人は「吹くこと自体がラクになった」、と言っていました。

このように、どこで何の仕事を担うのかが、実際にマッチして明確になると、ずいぶん吹きやすくなります。

ぜひお試し有れ!

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