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ここ数日で、改めて実感したことがあります。
それは、あるクセを解消したければ、それを起こさないような別の新たな行動をする必要があるということです。
このブログでも、もう何度かこの話はしていますが、この意味と実効性をさらに強く実感しました。
私の場合、ホルンを演奏するときにあるクセの代表格は三つ。
1:骨盤を前に押し出し、上半身が後下へ落ちて、股関節がロックされる
2:より高い音に移行するとき、顔面の筋肉を、マウスピースから引くように動かす
3:息を吐き発音するそのとき、少しのどを詰め首のうしろを固くする
というものです。
3は1の結果起きている結果で、また2も1の結果と言えます。なので、1が中心的課題であると言えます。では、どうしたらこのクセを解消できるのか。
ホルンを吹くうえでは、肋骨より下から骨盤までの胴回りの筋肉(腹筋など)が必要な息の圧力のメイン供給源でありコントロールセンターです。かなり大きな仕事を、こういう胴回りは担っています。
ということは、胴体はかなり強い力によって大きく動かされているとも言えます。
しかしもちろん演奏のときには安定が必要ですから、大きく動く力に拮抗してバランスを取る作用が必要です。
実は、股関節のロックは、この「安定化」のひとつの選択なのです。
ですが、骨盤を前に押して股関節をロックする方法での安定化では、胴体が曲がっていて今度は息を吐くための胴の筋肉が働きづらくなっており、また息の通り方自体にゆがみが生まれています。
これが、クセ3を引き起こしています。圧力を作るための胴の作用が不十分なので、首や胸、のどのあたりで圧力の「代行」をしているのです。そうすると連動してクセ2が作られます。
息の圧力が不十分だから、息の出口である唇を薄く使いたくなる本能的な反応なのかもしれません。
ということはやはり、クセ1が根幹にあります。では、どうしたらいいのか。
演奏のための息の吐き方に必要な胴の作業。それを支えるための安定化がポイントです。
その安定化を担うのが、骨盤底であることを2011年の夏、キャシー・マデン先生から学びました。
(そのときのことについてはこちら→「キャシー・マデン先生との学び備忘録その1 骨盤底」 )
より最近になって、股関節に作用する深層筋も関っているようであることを学びました。
つまり、骨盤底を働かせていないから、代わりに股関節をロックする方式での「とりあえず安定=どちらかというと固定」になってしまうのです。そこからクセ2と3が派生する。
こういう全体像がつかめたということは、つまりクセの理解・認識はずいぶん進んでいることを意味します。
でもこれで「じゃあそのクセをやめよう」と思うだけでは、クセは解消できません。
クセは必要があって起きているのであり、その必要を新たな行動で満たさないとクセは解消されないからです。
私の場合、その新たな行動とは
「骨盤底や股関節に作用する深い筋肉を息を吐くことに対しての支えとして働かせる」
ということなのです。
骨盤底は感覚があるわけではありませんが、腕を動かそうと意図すれば腕を動かせるのと同じ要領で、意図すれば働かせることができます。
そして、働けばクセ1と3が抑制される(解消される)ので、意図したことができているかどうかは結果ですぐ分かるのです。骨盤底が働くという直接の感覚はなくても。
これがクセ1を解消する新しい行動でした。
クセ3は、クセ1が解消されればほぼ付随して解消されるので、クセ1を解消するための新しい行動の意図を持つことで対処されます。
クセ2は、これ用の新しい行動を選択するとよいことが分かりました。息の圧力がしっかりすると、唇を厚く使ってもしっかり息が通っていきます。そのため、息の圧力が安定するのが先に来るのは間違いありませんが、そのときに「唇は前方向に使う」と意図することで、唇を引いて薄く使いたくなるクセは抑制(解消)されます。
このとき、「唇を前に動かして厚くしよう」と直接的に『やってしまう』とうまくいかないのが興味深いところでした。
腕を動かすときに、腕の感触をわざわざ感じようとしながら動かそう動かそうとわざと動かすことはしませんよね。それをすると、腕は疲れます。
唇でも同じことでした。唇を前に動かす、という直接的にやってしまうことではなく、あくまで「唇を前方向に使う」という『意図』が肝心だったのです。その意図に応じてちゃんと唇は前方向に動かされていました。それでこそ、息とのバランスのとれた適量の動きだったのです。
きょうは息のこと、骨盤や胴体のこと、頭や首など上半身のこと、そしてアンブシュアのことを「ひとつながりで考える」ということが初めて自力でできた記念すべき日になったように思います。
これで「理解」が真の意味で得られたからです。経験上、こういう「理解」が得られると、それ以降そのことを「教える」ときの効きが格段に上がり、またもっと的確に観察できるようになるからです。
文章にするとややこしくなりましたが、参考になれば幸いです。
ぜひ、お試しあれ。
Basil Kritzer