練習の主眼〜自分の奏法を混乱させないために〜

【緊急策という技術】

管楽器は、楽器演奏に取り組みはじめて数年もすれば、基本的なフィンガリングは覚えていますし、また音域も基本的な部分は鳴らせるようになっています。と同時に、「緊急策」もたくさん覚えて身につけているようになっているでしょう。

「緊急策」というのは、音が外れたり、外れそうになったり、音程がずれたときなどに咄嗟に「直す」技術です。この技術は、基本的な演奏技術と一緒に、自然と発達し身に付いていきます。有用なものです。

しかし、普段ひとりで練習しているときから、いつの間にかこの「緊急策」ばかりに意識がフォーカスされて練習を重ねている状況になっている場合があります。

それは

練習の主眼が

・ミスをしないこと
・ミスを直すこと
・自分の足りないところ/ダメなところを直すこと

になっているときです。

「緊急策」は

・自分自身が音楽に没頭して演奏すること
・自分自身の最良の響き・音色
・無理のない自然な奏法

を犠牲にしてでも

「ミスの回避・修正」を優先するものです。

つまり、普段ひとりで練習をするときから、「よくないところを直す」というような発想・自分モードでばかりやっていると、ずっと無理や頑張り・力みを感じながら演奏することになります。

それが何週間、何ヶ月と重なると、もはや自分にとって自然で無理がないベストの吹き方がどんなもので、どんな感じがするか分からなくてなってきてしまうのです。

これを読んでいるあなたにも、心当たりがあるかもしれません。

【ダメなところを直すのではなく】

「緊急策」は、通し練習や全体合奏など、曲を演奏し通すことが最優先になる練習の中で、自然と身に付けることになります。

ですので、ひとりで練習しているときは当然のこととして、パート練習で曲をさらっているときなどは練習の主眼を

・ミスをしないこと
・ミスを直すこと
・自分の足りないところ/ダメなところを直すこと

に置くのをやめましょう。

とくに「自分の足りないところ/ダメなところを直すこと」を練習の目的や目標にすると、楽器演奏はちっとも楽しくなくなり、苦しく悲惨なものになっていきます。

そればかりか、苦しいのを我慢して一生懸命頑張っているはずなのに、演奏はなかなか上達しません。技術的には後退して不自由になっていくことも多いのです。それは先述した通り、

・自分自身が音楽に没頭して演奏すること
・自分自身の最良の響き・音色
・無理のない自然な奏法

を犠牲にしているからです。

これらを犠牲にせず、むしろ伸ばしていくためには、練習の主眼を

・自分にとってラクで、自然な奏法を大事にすること
・気持ちの面で我慢や苦しみの中で演奏せず、ハッピーな気持ちで演奏すること
・ミスの有無を気にするのではなく、演奏している音楽や音の素晴らしさを感じて吹いていること
・練習すること自体があなたにとって有意義で、爽快で、楽しくて気持ちよい経験であるようにsうること

に置く必要があります。

【問いかけ】

この4点それぞれをどう実現していくか、ということはもちろん気になるでしょうし、とてもじゃないけれどできないような気がするひともいるかもしれません。

しかし、これらが自分の現状とはほど遠く感じられるひとほど、練習の主眼がより「自己否定に基づく自己改善の努力」にあるのかもしれません。

そういうひとにとっては、「具体的にどうするか」を即座に見出そうとする前に、練習しながら(あるいは練習していないときも)

「どうすれば、自分はもっと自分らしい自然でラクな奏法を見出していけるだろう?」
「どうすれば、自分は演奏や練習をしていて、ハッピーで幸福を感じていられるのだろう?」
「どうすれば、自分はミスがあってもそれでも音楽や音に対する興味や注意が上回るようになるだろう?」
「どうすれば、練習すること自体が有意義で爽快な経験になるだろう?」

という問いかけを自分の心の中に持ち続けることが最も大切です。

英語の格言に

「問いかけを抱き続ければ、やがてその答えを生きるようになる」

というものがあります。

これは、本当です。

まずは、練習に臨む自分自身から意図的に問いかけを行うことで、変化は始まっていきます。

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練習の主眼〜自分の奏法を混乱させないために〜」への4件のフィードバック

  1. いつも興味深く記事を読ませていただいています。
    今回の記事は、本当に身に染みる気がします。

    ホルンを長年吹いていますが、合奏練習となると、常にミスを気にしてしまい、常時緊急策を使い続けているような感覚で練習に参加しているのです。(緊急策を使ったところで、結果は同じようにミスをしてしまっていますが。)
    個人練習での吹き方と、合奏での吹き方が大きく違っているため、中々演奏もうまくいかなかったのだなぁ、とこの記事を読んで改めて感じました。

    この記事の「問いかけ」を持って、もっと楽しく練習していこうと思います。
    いつも、良い記事をありがとうございます。

    • 村川様

      記事がこのようにお役に立てたことを知らせて頂けて、とても励みになります。
      ありがとうございます。

      Basil

  2. ホルンを吹いて四年目の高校生なんですが、後輩にはいつも緊急策をさせていました。
    そのせいで後輩の吹き方や音色を悪化させていたとわかった時、取り返しのつかないことをしてしまったと思いました。
    ですがこれからはもっと後輩に音楽を楽しんでもらうために、練習を変えてみようと思います(/ _ ; )

    本当に参考になりました!
    これからもいろんな記事を拝見させていただきます!

    • Tashimaさま

      はじめました。

      ぜひこれからは後輩への接し方、そして何より自分への接し方を変えていってください。

      コメントに大きな感謝を申し上げます。

      Basil

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