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アマチュアホルン吹き青年とのレッスン。
息を吸って、発音に至るその『間』で喉がウッとなったりマウスピースがガタッとズレたりなど力みを自覚されている状況。
このような現象はよく見かけるのですが、長らく拍を数えていない=発音するタイミングを自らに指定していないのが原因ではないかと考えていました。実際、拍を数えながら発音すると改善するケースも多かったので。
しかし今回、そもそも拍を数えなくなる理由があるであろうこと、そしてその理由が発音までの力みを作っているかもしれないことに考察が進みました。力みと、拍を数えないことは同根の原因の結果であるという側面が色濃いであろう、ということです。拍を数えるという行為は、その原因ボタンのスイッチを押させない効果を持つことがあり、故に発音までの力みを発生させない効果を持つこともあるけれど、拍を数えなくても問題なく発音に至ることも可能である、ということでもあります。
この方とレッスンしていて見えてきたのは、
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①出す音を決める
↓
②その音を出すための息圧を作る
↓
③”あること”をする
↓
④発音する
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という順序があって、この③のところでなさっていることが力みや不都合を生んでいたようです。
その”あること”とは、『これから出す音が出そうな感じかどうか確認し、出そうな感覚を作る』という行為でした。
この行為は、音が出ることをなるべく保証したいから行っていることでしたが、実内容としてはむしろ息圧やプレスが減っており、発音がうまくいかなくなるようなものでした。
どうして、音が出そうな感覚にわざわざしているのに逆効果なのか?これは考えてみるとなかなか不思議です。
わたしも確かなことは分かりませんが、音が出そうな感覚というのは、音が出たとき、つまり発音後の感覚を指していて、その感覚は発音後にしか得られないものであり、発音前にその感覚を作ると、実は発音後の感覚をもたらすものとは異なる動作になるから、というようなものではなかろうかと思います。
金管楽器の『うまくいったときの感覚』を再現するには、『初めてうまくいったとき、それがどんな感覚になるかは事前に予測できなかった』はずですよね。初体験なんだから。すると、うまくいく結果を再現するには、うまくいったという結果が生じたところまでの感覚を再現するのではなく、うまくいかせたその瞬間までの感覚を再現すると考えてたほうがよいのかもしれかい、と。
そして、その感覚で合っているかどうかは、厳密には常に事前予測不可能で、発音してみて初めて分かる。初めてうまくいったことを再現するということは、やってみるまで本当に合っているかはわからないということまで含めて再現するということだと考えると整合性があります。
そこでやってみたのは順番の入れ替えです。
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①出す音を決める
↓
②その音を出すための息圧を作る
↓
③発音をする
↓
④合っていたかどうかを感知することになる
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不思議と、これでパッと改善しました!
事前準備は必要だけど、事前答え合わせは実は不可能。だから発音前に答え合わせをするのはやめる。
ただこれだけのことだったのですが、本当にいっぺんに改善しました。
しかも、息圧準備と発音のあいだの『間』の時間を非常に長く取っても、逆に全く取らなくても、拍を数えても数えなくても、一様に発音がうまくいくようになりました。
『事前答え合わせ』ーこれが、いきみや力み、発音の乱れなど様々な不都合の根っこにあることが、多くの人に共通してあるかもしれない。この可能性を今後より検証していきたいと思います。