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プロのトロンボーン奏者の方から、メール相談を頂きました。
【質問者】
こんにちは。トロンボーン奏者です。
最近、「正しい奏法でなければいけない→正しい奏法を身につければ何でもできる」という観念にとりつかれ、楽器を吹く(音を出す)直前に、一瞬固まるというか、息が止まる感覚があります。
そのため、音の出だしが乱れるようになってしまいました。
ブログに書かれていた、「おなかをへこます」ことで少し解決はしているのすが、この観念をなんとかしたいと思っています。
また、基本的なことですが、息を吸って音を出す直前の口の中は、空気はためていたほうがよいのでしょうか。
いろいろ書いて申し訳ございません。お尋ねしたいのは3点です。
・完璧主義?の観念をとりはらって自由に吹きたい。
・息が止まる癖をなくしたい。
・口の中の息の「ため」について
よろしくお願いいたします。
【バジル】
まず、『お腹へこませ』で少し改善するということは、発音しようとするときに何らかの理由で息を吐けないでいるということの可能性があります。
考えられる理由は
◎望む音に必要な息の圧力を作っているが、それを必要と知らないので必要な溜めを『力み』や『止まり』と感じている。
↓
解=あらかじめその『溜め』を自分からやろうとしてみる
◎望む音に対応した息の圧力やアンブシュアの状態になっていないので、体がそれを察知して修正する時間を作ろうとしている
↓
解=溜めずにそのまま発音して音が上にハズレるか下にハズレるか調べる。上なら、思っているより下の音を吹く感じで同じ音を発音する。下にハズレならその逆。
◎息を吐く方法を知らない
↓
解=息は肺の中の空気が外にでることで吐き出される。それには、空気が入っているところを圧縮する必要がある。お腹や胸を凹ますのはそういうこと。わざと思いっきりやってみる。
これらのうち二つもしくは三つともの可能性もあります。
『正しい奏法』観念ですが、結論を言えば誰もそれを知りません。
それを知っているという思い込みの強い人のアドバイスを受けると調子を崩します(苦笑)
【質問者】
試してみました。
今日の朝一番の音は、これまでにないほど温かく&太く&自然に出せました。
このところ、いつも朝一番の音は、「良い奏法で吹けているか」ばかり気になって、とでも固く不自然だったのです。
それが今朝は、「今から音を出す方法が、今の私にとって正しい奏法」と思って、ゆったり息を吐くことだけを考えました。
そして、上述の音です。昨日までとは別人のようで、タンギングもやわらかく、音の伸びも良かったです。これはイケル!と思いました。
ただ、しばらく吹くと、疲れてきたからか、それとも思考が元に戻ってしまったせいか、前ののように、音のアタマはハッキリしないのに固い音になってしまいました。
こうなってしまっているとき、自分自身を観察してみて、わかったことは、
舌が極端に上に向いている
ということです。
英語のRの発音のときのように後ろに反り、舌の下部が軟口蓋に張り付くようなかんじです。
そのため、息の通りが悪く、タンギングも遅くなります。また、その舌がその状態のときは、首や肩に過度な力みが生じているので、吐く&吸うがじゅうぶんにできていないことがわかりました。
これは、私自身のクセのようで、楽器を吹いていないとき(PCやスマホを使っているとき、ただ立っているとき、など)も、舌がこのRの状態にいることに気づいたのです。
この状態のときは、楽器を吹いていなくても、首&肩に力みが生じています。楽器を吹いているときも、日常生活のときも、舌を軟口蓋から、意識的に放す≒ゆるめる?ことはできます。
トロンボーンを吹いているときに、この状態になってしまうと、息が上向きになってしまうようで、そのことも、音の立ち上がりに関係しているのかもしれません。
また、舌がRの状態になっているとき、鼻で吸って、音を出す直前で1回息を止めてしまうようです。
マウスピースのみで音を出すときは、不自然さは感じられないので、楽器を持つ時や構える時の姿勢に問題があるのかもしれません。
本日は、ここまでしかわかりませんでしたが、モヤモヤしていたものが少しずつ晴れてきたようで、明日の練習も楽しみです。
・舌がRになってしまう(首&肩の力みと関係?)
について、ご教示いただけますでしょうか。
「ため」をわざと作ることを試みましたが、その音を出そうとしてしまう意識が強いせいか、思った音をアテられたといいますか、上にも下にもハズれませんでした。そもそも「ため」ってなんでしょうか。
いろいろ掘り下げたら、かなりいろいろなことがわかりました。よろしくお願いいたします。
【バジル】
まず、持続時間はまだ限られているにせよ、『正しい奏法呪縛』からの即解放と、効果もすぐあって本当に良かったですね!
呪縛にかかってないモードで吹くということ自体も練習ですから、すこーしずつ当たり前になってくるでしょう。
お書き下さった舌や口の中の常態については、生まれ持った何か、理由やきっかけがあって身に付けていった何事か、その両方や相互作用、のいずれも有り得ることと思います。
口腔外科のお医者さんに診てもらうとよいと思います。それもすぐに答えを出さずによく調べてくれるような。
マウスピースの装置とか理学療法とか言語聴覚療法とか色々ありますから、そういうものの助けを十分期間受けると良い可能性がかなり高いかなと思います。
補助的に鍼などもようかもしれません。bodytuneという、品川の鍼灸がよいですよ。楠洋介さんという方です。
並行して、息の向きとか楽器を持ってるときの意識とかはぜひわたしのところにレッスンに来て下さいね👍
『溜め』は、望む音にマッチした唇の振動を起こす息の流れ方を作る準備です。
十分な速さや圧力を生むために吐いてる空気を口から流さないように舌先や声帯で止めといて溜めといてダムみたいにして溜めるのです。
で、舌をどかすと一気に流れるので速い息が出るということですね。
【質問者】
メールアドバイスと、これまでの先生のブログを再読して、
・おなか凹ませ
・アンブシュアの支え
・息の向き
を意識して、あとはくどくど考えず、「私の好きな音を出せたら、それが私の今日の正解」だと思って練習しました。
昨日は、今まで以上に自由にできた気がします!!すごく楽しく、終わったあと、心地よい疲れでした。
4月に本番予定の曲の中のHIGH Dが、目立つところでたくさんでてくる曲なので、それを完璧にやろうと過剰反応していたようです。
この曲が高音域なのは、知っていて、過去にも演奏したことがあるので、なんとかできるだろうという気持ちと、過去に出来たのに今できないはずがないという気持ち、完璧な吹き方をすれば完璧に吹けるはず、と自分自身のハードルを上げていたことに気づきました。
もちろん、高い音が成功するにこしたことはないのですが、なんのための成功か、を置き去りにしていた気がします。
舌の「R」も、息を吐くこと、息の向き、を意識したことで、気にならなくなりました。おそらくですが、「音のアタマをハッキリ、高い音はスピードのある息で」を実行しようとして口が閉まりすぎ、そのため口の中の舌の行き場がなくなって「R」になってしまうのかな、と思いました。
今回、バジル先生にアドバイスしていただいたおかげで、考えなくても良いことを「断捨離」できた気がします。
実際、よくできたことの再現性や、構え方等、いろいろ気づいて、まだまだ教えていただきたいことが見つかりましたので、直接ご指導いただければと思います。
もしそれまでに、また何かありましたら、追加でメールのご指導もお願いいたします!
取り急ぎ、ご報告と御礼まで。
【バジル】
なるほど、結果が欲しくて、完璧=ノーミスになり、その結果を保証するものを求めると調子が狂うわけですね。
金管楽器は性質的に必ず音が外れますしね、完璧やノーミスを求めることが非現実的かつ不合格なんですよなね。
この度は有難うございました☺
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