長文【吹き方の合言葉】

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リップトリルは得意というほどではないがなんとなくできていたのが、ここ2年くらいなんだかぎこちない感じだった。できないわけではないので、まああまり深刻に捉えずにやり過ごしていた。それが、この一ヶ月くらいでまた『なんとなくだがわりと気持ちよく良い具合に』できるようになった。

きっかけは、分かりやすい物理的・奏法的発見や進展ではなく、言うならば『とらえ方』の領域にあった。紆余曲折あり話が込入るしパラロジカルなところが多々あるので簡略し結論に飛ぶが、具体的には『自分らしい奏法で、音や体をジャッジせずに吹こう』という合言葉に則って吹き始めたこと。

その合言葉を心の中で唱えながら、その合言葉を方針あるいは原則と定めて吹くと、その合言葉に行き着く前の吹き方より、有り体に言えば『余計な力がぬける』のだ。リップトリル以外にもそれによりなんだか良くなる面はいくつかあるんだけど、リップトリルは特に分かりやすく差が出ることの一つだ。

この合言葉に至る紆余曲折の直接の出発点は、4月に数年ぶりに再発しした顎関節症にある。顎関節症の症状が落ち着いていきリハビリする過程で、おそらく再発に深く関わっていそうな吹き方のこと、もっと言えばその吹き方をもたらす『とらえ方』『考え方』に気付き始め、

『とらえ方』『考え方』

『体でやってること』『吹き方』

の対応・つながりを見つめる過程となった。

夏頃からは、高音へのこだわり=コンプレックスを満たすために吹こうとする心の癖をはっきり自覚し始め、普通に使う以上の音域も吹けるのにさらに超高音にこだわる自分を客観視し始められた。

超高音にこだわらない、というまずはざっくりとした方針が見えてきた。それは出せる音の美しさ豊かさをより味わう、主眼とするという方針でもある。顎関節症再発少し前からマウスピースをいろいろ試したくなっていたのでもしかしたら潜在意識で方針転換はその前からあったのかもしれない。

ハマったことのないマウスピース沼に初めてハマり(笑)、4月から数ヶ月で5本も買った(苦笑)。しかしながら、それまでは気に留めなかった吹き心地や音のちがいがよく感じられ、徐々にどんなマウスピースが良いか分かってきた。超高音にこだわらない=音の美しさ豊かさをより目的にする方針の浮上と折り重なるようにこのマウスピースの模索期があった。

方針は次に『ツボで吹く』という具体的狙いを含み始めた。ツボとはつまり結果的にラクに、よく響く音が出るバランスということだで、つまり、無理強いがあったということだ。

『超高音にこだわらない=音の美しさ豊かさをより目的にする』『ツボで吹く=無理強いしない』このような方針または合言葉をよく意識して練習するにつれて、思い至ったのは、それはつまり『あらゆる音域の音を平等に扱う。あらゆる音の結果も等しく有価値とする』という態度だと思った。

『あらゆる音域も音の結果も平等に価値がある』という方針が見えてきたのは10月。この頃にマウスピースもコレだというのがはっきり定まり、顎関節症もかなり落ち着いてきた。ここまでで奏法的にも、プレスの仕方と胸郭の能動的な圧縮に関し新たにはっきり気付きやり始めたことなどがあった。

こうして、マインド・奏法・コンディションが新たな地平で接合しまとまってきたら、今度は『唇バテないが呼吸のキャパが全然足りない』感じをすごく感じ始めた。奏法とマウスピースの変化の両方が直接関係していると思う。

こうして、一ヶ月くらい前から呼吸法訓練を始めた。良い子には真似してほしくないちょっと極端な呼吸法(しびれや目眩も伴う)なので具体的には述べない。

総合して、最新版の合言葉・方針が『自分らしい奏法で、音や体をジャッジしない』というものになっていて、これは『奏法も音も体も、何か悪い・良くない・問題あると心配していじろうとしない』ということだ。首をツッコまない境界線を引き直したという感じだ。

不安、コンプレックス、自信のなさ、みっともなさ、恥ずかしさ・・・そういう衝動から、奏法や体や音をコントロールしようとする。その度合いが強まっていたのに気付かず閾値を超えて顎関節症が再発したのかもしれない。

真相はわからないが、

音のツボを尊重し
特定の音域にこだわらず、
音の美しさ豊かさを楽しみ、
全ての音域・音の結果に価値を見出して吹く。

それが自分らしい奏法であり、その奏法のためには音や体の結果をジャッジしない・イジらない・首をツッコまない。

そうまとめられるだろうか。

こうして癒えたり変わっていったりしているうちに、リップトリルが分かりやすく改善したわけだ。

このように『とらえ方・考え方』と『体の使い方・吹き方』の対応を見出すこと。これをきょうはレッスンで今までより濃厚に用いてみた。それは非常に効果的で、有益だった。

また明日、詳しく書こうと思う。

Basil Kritzer

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