先日の記事『「顎を張りなさい」の真実』に対してさっそくご質問を頂きましたので、お答え致します。
【質問】
こんにちは。顎を張る件、目の前がぱっと開ける感じでした。
私もアンブッシュアには悩まされていました。張ろうとすると顎が胸の方に向かって下がり、下唇が上唇の下に巻き込まれ、マウスピースをあてても全く安定しませんでした。
低音の練習をしていたときに、顎は前に出す感じでと指導本に書いてあるのを思い出し、色々やっているうちに、低音に限らず、顎を前に出すと安定するような感じがするようになりました。
バジルさんのおっしゃる、唇(特に下唇)を前に出すようにして顎先は上にしてみると、顎を前に出した感じと似ているような感じがします。大げさに言えば志村ケンの『アイーン』とか、伊東四朗の『ニン』と言った時の顎の感じでしょうか。すみません。ふざけているようですがいたってまじめです。
【回答】
確かに、金管の先生方が常に仰っている「顎を前に出す」という話は、このオトガイ筋が下唇を前方向&上方向に動かすという事実と深く関連していると思います。
この動きをやっていると、実際に顎を前に出す動きに連結してくる傾向があるように思えますし、それは自然なことであり、間違ったことではないと思います。
思慮を持っておきたいと思える点は3つです。
1:唇を前方向に重ね合わせることが主目的である
顎の動きは、少なくとも部分的には、下唇を前方向に動かすことで前方向において上下の唇を重ね合わせることをやろうとすることに「伴って」二次的に起きることだと考えられます。
つまり、アンブシュアのことで意識するならば、「顎を前に出す」ことより、「唇を前方向で重ね合わせる」ことの方が、優先的に意識した方がより望ましい結果につながりやすいと思います。少なくとも、顎が前に出るのは、「唇についてくる」中でのことであり、顎を前に出す事にあまり意識を集中させるのは逆効果かもしれません。
2:顎の関節の位置
顎の関節の位置を、多くの人が誤解しています。実際の位置より下に思っていることが多いです。これが顎の痛みを生んでいるケースが多いように思えます。
顎の関節は、顎のエラのところではありません。
耳の穴のすぐ前あたりです。かなり上にありますね。
3:頭の動きと顎の動きは別
顎を張ることや顎を前に出す事を教えるとき、多くの先生方が、頭を前方向&下方向に突き出しす仕草を見せながら教えています。(まさに「アイーン」です)
しかしこの頭の動き、体全体を圧迫し硬くさせるものです。
先生方は演奏中はもちろんこんなことしていないのですが、教わる側は「やりなさい」と言葉で言われている間の、先生の見せている動きを全て模倣します。
結果的に、体全体を圧迫し硬める事を「教えて」しまっていることがあるのです。
顎の動きは、もっともっとデリケートなものです。頭を突き出す必要はいっさいありません。(ただし、顎の動きとともに、頭が少しだけ傾くことはあるかもしれません)
以上、参考になれば幸いです。
こんにちは。
顎を前に出すということとても納得致しました。
自分の歯並び上わ顎を前に出さないと上唇ばかり振動してしまい、高音が出しづらくなる傾向にありとても悩んでおりました。
顎を前に出すことで喉に少し力が入ってしまうのですが、これはそのうち慣れるでしょうか?
ぴよひこさま
この記事に書いていることと重複しますが、顎を前に出すと考えるより、下唇を前に出す、すぼめると考えるとよいかもしれません。
顎はそれについてくる、というイメージです。
私も上唇に下唇が潜り込んでしまう癖があります。
レッスンを受けてる先生からは、疲れてきたり、高音になってくると更に潜り込んでいくようで、それを防ぐように、下に張りなさいと言うような言い方をされたように思います。
アイーンとか、猪木の真似をしても吹けないので、下唇が潜り込まないことをイメージを優先して続けました。
張ると言うイメージではなかったかもしれません。
それを続けていくと、先生からはその指摘が無くなったのと同時に、個人的に出しにくかったミドルF(実音)前後で、下唇を前にだしたら出なかった音が出てるような感覚がありました。
前にだす=ちょっとすぼまった感じに自分ではイメージしてます。
吹いてる自分では、か細く感じたので、録音して聴いてみましたが、自分が思ってるようなか細さはなく、普通でした。
ただ、ちょっとでもずれると音がまったくでなかったりします。
例えば、4音スケールで上がればいけても、跳躍させると4音跳躍では吹けないと言うのが、今の悩みです。
ひろたかさん
その「下唇を前に出す」というのは、素晴らしい発見だと思います。
それにより、それまでできなかったことができるようになったというお話は、わたしとしてはとても腑に落ちます。
Basil
こんにちわ!43才からのトランペット初心者です。
練習を初めて現在1年半くらい経過しました。最初の1年は早く上手になりたいと思っていましたが、最近はゆっくり楽しむものなのだというふうに意識が変わってきました。
そういえば以前、私が所属する市民バンドにいらっしゃる賛助のプロのトランぺッターの方に、アントニオ猪木さんの真似をするのが上達するコツだよ!と言われました。元々猪木さんの真似が得意じゃないからあまり上達しないのかな?とか思ったりもしていましたが(笑)記事を拝見して、顎を前に出すと言う事と共通しているのかな〜なんて思ったりしました。
毎日1時間ほど音出しだけはしていて、色々ネットで奏法、練習法など調べていたり、こういったタメになるブログなどを拝見していると、明日はこうしてみよう、書いてある事をやってみよう、、としているうちに、なんとなく下顎犬歯の上に下唇の裏側を乗せてるような感覚が顎を張るということなのかな〜と、今のところはその考えに落ち着いていますが、楽器を持った時にはその事はほとんど忘れていて、たまに気付くとそうなっているという感覚があります。
なんともまとまりのつかない、質問とも感想とも言えないコメントで、失礼いたしました。
またブログでのタメになる記事、楽しみにしております♪
喇叭おぢさんさま
その感覚、ひとを教えるときにうまく伝わることはあまり無いでしょうが、ご自身のお持ちの感覚の表現としてはその通りだと思います!
良い気付きですね。
こんばんは。いつもバジル先生とこのブログにはお世話になっています。
今日練習していて気づいたことが、この記事に関連していると思ったのでコメントします。
私はホルン演奏上、普遍的で絶対的に正しい奏法があると長い間思い込んでいて、その奏法で演奏する事が上達するためには必要なことだと信じきっていました。
その事が結果としてアンブッシュア、喉、舌等に負担をかけており様々な演奏上の困難を抱えていました。
そんな時、幸運なことにバジル先生のブログにたどり着きいろんなアイデアを試していくうちに以前と奏法も変わり、比べ物にならないくらい演奏が上達しました。
最近では金管楽器奏者のアンブッシュアタイプ別によるアンブッシュア動作を自分なりに取り入れて練習中です。
恐らく私は超高位タイプでアンブッシュア動作は高い音ほど右上、低い音ほど左下です。また自分の骨格に沿ってアンブッシュア動作を行うことも意識していました。
しかしアンブッシュア動作を取り入れながら低い音から高い音に移行する際、本来の骨格に沿わない形でマウスピースを右上に動かし、さらに腕を動かす方向や量を間違え、上唇の右側にプレスがかかるような角度になってしまっていたため、自分の下の歯とマウスピースの間に大きな隔たりが生じていました。
この隔たりを解消すべく顎を前に出して、骨格に沿ったアンブッシュア動作を実現しようとしていました。
結果的にマウスピースを口に持っていく途中で無意識に顎が前に出るようになり、その顎の位置にマウスピースを当てて角度を作り吹き始めていました。
この記事では、下唇の動きに対して顎がついていくことはあっても、顎を前に出すことが主な目的になってしまうと、望ましい結果に結び付きにくいことが書かれています。
私は顎を前に出しながら演奏することで、舌が動かしづらくタンギングが遅い、タンギングが続く曲になると舌が緊張してきて喉や呼吸、構え方等に窮屈さを感じる、アンブッシュアのコントロールが難しくなる、スタミナに悪影響がある等を感じました。
自分なりに解決策を考えた結果、
①口を閉じた状態の顎の位置(私の場合以前より顎が引いた位置にある)が自分本来の顎の位置だと考える
②マウスピースを当てる角度は両唇全体にまんべんなくプレスがかかる位置(文章だと伝えるのが難しいですがマウスピースの角度を以前より少し下向き)にすることで自分の骨格に沿った位置、角度にマウスピースがセットできました。
①②によって以前より顎が前に出なくなった為か、タンギング時の緊張や違和感が驚くほど解消され、タンギングがスムーズになりました。
また自分の携帯で演奏している様子を動画撮影するとタンギングの動きに連動して顎が上下に少し動いていました。この動きは顎が前に出ていたときにはあまり気づかなかった動きでした。
もしかして腕は胴体よりも前で動かす方が動かしやすいことと一緒で、顎は前後に動かすより上下に動かす方が良いのではと思い、タンギングの際、少しだけ動かしてみるとほとんど違和感がなく、むしろ舌の動きを補助している感じすらしました。
別の視点から考える、タンギングや跳躍時に顎を上下に少し動かしているときは、顎を動かしている側頭筋や狡筋などをONOFFすることに繋がるので、スタミナもアップするのではと考えています。
音の響き方も変わった感じがしますが、これはマウスピースの角度が下がったことでホルンのベルの角度も変わった為、聞こえ方が違って聞こえるだけなのか現時点で判断できませんでした。
まだ今日気づいて実験開始したばかりですが、良い感触だったのでコメントしました。失礼します。
松本さん
アンブシュアの形成のためにひとによっては顎が前に出ることはあるようで、それは不自然ではなくかなり一般的なことではあるようです。
演奏するときに顎が出るか出ないかは、ラインハルトのアンブシュア9タイプ分類の識別基準のひとつです:http://basilkritzer.jp/archives/4714.html
文章を拝見していると、
・音を上行する際にマウスピースとアンブシュアを一体的に上方向に動かそうとするとき、
・マウスピースの位置または角度または両方の動を誇張したか、あるいはアンブシュアの動きが足らなかったかその両方かで
・マウスピースの下側がアンブシュアから離れた
ということが当初起きたように読めます。
そしてその後、主にマウスピースの角度の動きの誇張を抑制したことで、マウスピースとアンブシュアがより密着し吹きやすくなったように読めます。
おそらく顎の動きや、マウスピースの角度を特定のもの(松本さんの描写によると、下向き)にしたことは、一時的暫時的な状態であるかあるいは感覚的なものである可能性がありそうなので、わたしとしては、
・マウスピースとアンブシュアの一体的動作を量的にも質的にもより適切に行うことができた。
・そしてその結果のひとつとして今夏憂はマウスピースとアンブシュアがより密着し吹きやすくなった
・またもうひとつの結果として顎の動き負担が減ったりタンギングがしやすくなったりした
と理解するほうが今後につながる解釈になる気がします。
Basil
ご返信遅くなりました。
ラインハルトの記事読みました。アンブッシュアタイプには様々なタイプがあるということを再認識しました。(顎を悪者扱いしていました。。。)
さて、私の思考のなかにはついつい特定の場所や位置に楽器や構えを固定したがる癖があるのかなと思いました。
そうではなく、アンブッシュアに対してマウスピースを密着(今回ここが抜けていた)させてアンブッシュア動作を意識して音楽を奏でるようにして取り組んでみたいと思います。
Bon Voyage !